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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第221話 イオナ3、ポートレート


 俺は、ちょっと出かけてくる。と、子どもたちに告げ、日本用の服に着替えていつもの大型スーパーに跳んだのだが、どこにポスター用の額縁を売っているのか分からなかった。


 店の人に聞いたら、おそらく3階に入っている100均の店にあるのではないかと教えられた。


 俺の大事なポートレートが100均の額縁では非常にさみしいので、100均の店にはいかず、コタツをコピーした家具類を主に扱っているホームセンターにいってみることにした。


 ホームセンターの入り口からわずかにズレたところに転移で現れたのだが、入り口の脇にキッチンカーとか言う自動車が屋台になったような車が止まって、鯛焼きを売っていた。


 温かいデザートのレパートリーがなかったので丁度いいと思い、焼き上がっていた鯛焼きを全部買ってやった。大人買いとまでは言えないが、20匹ほど買って紙袋に入れてもらった。ホームセンターの中に入った時にはアイテムボックスに収納してついでにコピーもしているのでアイテムボックスの中に鯛が40匹いることになる。


 ここでも、どこで額縁を売っているのか分からなかったので店の人に聞いたら、ポスター用の額縁はポスターフレームというそうだが、1階の文具売り場、ちゃんとした額縁は2階の奥の方に置いてあるそうだった。


 まずは、ポスターフレームだ。ポスターフレームはすぐに見つかったので1つ手にしてすぐに精算した。2階にエスカレーターで上がっていく間に収納して、ついでにコピーもしてやった。これで大きさも自由自在のポスターフレームが作れる。


 2階に上がって、そこに置いてあったカートを押して、奥の方に歩いていったら、突き当りに額が飾ってあった。表はガラスなので本格的だ。金具を置いていたので何かなと思ったら、額縁掛けというものだった。確かに額縁自体が相当重たそうに見えるので、ちゃんと壁にかけておかないと何かのはずみで落っこちてきたら、少なくともガラスが割れて危険だ。


 俺は枠の柄の違う何種類かの額縁と額縁かけをカートに入れたのだが、実際額縁は1つ持っただけでも相当重たかった。


 2階のレジで精算して、目的の買い物は終了した。


 その後は、いつものように階段の踊り場に出て、そこから屋敷の居間に転移した。


 俺が帰った時には俺の肖像画はもう完成していたようで、イオナはスケッチブックを閉じてみかんを食べていた。キリアも素振りを終えたようでコタツに入っていて、結局子どもたち全員がコタツに座ってミカンを食べていた。


「イオナ、でき上った絵は、この中に入れておけばいい」


 そう言って、スケッチブックの大きさに合うようなポスターフレームを10枚ほどと額縁かけの金具を適当に渡しておいた。


「ご主人さまありがとうございます!」


「「わーい!」」「部屋の中に飾りにいこうよ」


 イオナがスケッチブックを持ち、残りの子どもたちがポスターフレームを手分けして持って、居間を出ていき階段を駆け上がっていった。先頭を駆けていったのはもちろんアキナちゃんだった。


 正面から描いた肖像画ならモデルがどうであれ、それなりに見栄えするのだろう。しかし、俺の絵は肖像といえば肖像かもしれないが『着衣のゼンちゃん』だ。ちょっとマズかったかもしれない。それでも子どもたちの部屋に飾る分には、華ちゃんやはるかさんが目に触れることはないだろう。



 しばらくして、子どもたちが2階から下りてきたようだが、居間に現れなかったので、昼食の準備に台所にそのままいったのだろう。


 それから、5分もしないうちにイオナが俺のところにやってきて昼食の準備ができたと教えてくれた。現場監督中のはるかさんのところにはエヴァが、華ちゃんのところにはキリアが食事を知らせにいったそうだ。



 食堂の席に着いて、しばらくして華ちゃん、そしてはるかさんが席に着いたところで、


「いただきます」「「いただきます」」



 昼食を取りながら、華ちゃんが俺に向かって


「子どもたちが勉強部屋に入っていったような音が聞こえたので、どうしたのかと見にいったら、みんなでイオナちゃんの描いた絵をポスターフレームに入れて飾ってました。

 ほんとに、イオナちゃんは絵が上手ですね。

 そうなんですけど、岩永さんのあの絵だけにはビックリしました」


 華ちゃんの口元が笑っているように見える。目の錯覚ではなさそうだ。


 何が言いたいのかは正確には分からないが、何となくだけど、言いたいことが分かるような分からないような。『着衣のゼンちゃん』は調子に乗りすぎたようだ。最悪を想定すれば『裸のゼンちゃん』だったわけだから、それに比べればなんてことはない。ハズ。ただ、勉強部屋のどこら辺に俺のポートレートが飾られているのか分からないが、毎日30分の授業中華ちゃんがアレを見るのかと思うと、何かくるものがある。華ちゃんだけでなく、はるかさんの算数の授業もある。


「善次郎さんの絵が勉強部屋に飾ってあるんですか?」


 はるかさんまで興味を示してしまった。


「そうなのじゃ。若かりし頃のゼンちゃんの姿を描いたイオナの力作なのじゃ」と、アキナちゃんがいらんことを口にしてくれた。


「食事が終わったらさっそく見にいかなくっちゃ」と、はるかさん。


 どうせはるかさんにバレるわけだが、アキナちゃん、ひとこと多いんだよな。


 俺はこの話題にはついていけなかったので下を向いて食事を続けた。



 今日の昼食の後のデザートは、当然鯛焼きだ。手で持って食べるにはまだ熱いのだが、手で持って食べられないほど熱いわけではない。それでも、台所から運んでこさせた小皿の上に1匹ずつ置いてやった。


「なんだか魚の形してるー」「おもしろーい」「これを食べるの?」「な、何じゃこれは?」


 ……。


「「あったかくておいしー」」


「おいしいではないか」


 黙ってアキナちゃんの前の小皿にもう一匹置いてやった。


「鯛焼き、久しぶりでおいしかったー」と、華ちゃん。


「もう何年振りかしら」と、はるかさん。


 などと、華ちゃんやはるかさんにも鯛焼きは大いに受けた。願わくは、俺のポートレートのことを忘れてくれればいいと思ったが、


「おいしかった。

 それじゃあ勉強部屋にいって善次郎さんの絵を見させてもらいますね!」


 そう言ってはるかさんは一番に食堂を出ていってしまった。



 はるかさんは、勉強部屋に飾ってあった俺のポートレートを見たのだろうが、その後夕食まで顔を合わさなかった。俺は怖かったので、勉強部屋に飾ってあるというポスターフレームに入った自分のポートレートを見ていない。


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