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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第219話 イオナ1


 その日の午後には、図面と測量器械を持った作業員と杭やハンマーを持った作業員たちが学校予定地の隣りの敷地に現れ、杭が打ちこまれ、糸が張られていった。


 杭打ちと糸張りは2時間ほどで終了して、作業員たちは資材を片付けて帰っていった。マーロンさんと同じようにてきぱきとした仕事は小気味よい。


 図面だけでは実感がわかなかったが、張り終わった糸を見ると、ずいぶん大きな建物になるものだと実感した。位置的には全体的に北寄りになっており、南側が広々と空いた形になっている。サッカーグラウンドという訳にはいかないがバスケットボールなら簡単にできそうだ。



 翌日には資材が大量に運び込まれ、土台が組まれていった。これからは建築作業の方は、はるかさんが様子を見てくれるそうなので、その日の午後から俺は華ちゃん、キリア、アキナちゃんのフルメンバーで俺たちのダンジョンの探索を再開することにした。アキナちゃんは昨日の年明けには神殿から迎えがあり、いったん神殿に戻ったのだが、夕方にはうちに帰ってきていた。


「ダンジョンは久しぶりじゃのう」と、白ずくめのアキナちゃんが嬉しそうにしていた。


 みんな揃ったところで、楽園の中央に跳んで、ピョンちゃんを拾ってから、前回の続きの第1階層の探索を再開した。



 その日の探索では、モンスターに何回か遭遇しただけで宝箱は見つからず、4時前には探索を終えて、ピョンちゃんを楽園に戻してから屋敷に帰った。


 いつものように居間に戻ったのだが、居間ではオリヴィアがピアノを弾いて、エヴァとイオナはコタツに向かい合って座っていた。


「「ご主人さまおかえりなさい」」「「華おねえさんおかえりなさい」」「「アキナちゃん、キリアおかえり」」


「「ただいまー」」


 エヴァとイオナがコタツで何をしているのかと見てみると、エヴァはミカンを食べていたようだ。イオナの前のコタツの上にはスケッチブックが置かれ、そのスケッチブックの画用紙にエヴァの顔が描かれていた。まだ完成していないようなのだが、色がしっかり塗られている部分はまるで写真だった。イオナが手に持っているのは色鉛筆なので色鉛筆画ということになるのだろう。


 スケッチブックも色鉛筆も自由に使わせておけば誰か絵画に目覚めるかも知れないと、ただの思い付きで揃えたものだが、イオナが絵画に目覚めてしまったようだ。何なんだ、うちの子どもたちは!?


「イオナ、そのスケッチブックを見せてくれるか?」


「はい」


 イオナに渡されたスケッチブックの前のページにはオリヴィアの顔が描かれていた。こっちは鉛筆画のようだったが、見た目は背景のない白黒写真だった。


 俺が手にしたイオナのスケッチブックを覗き込んだ華ちゃんもビックリしている。


「これは、あれだな。ちゃんとした先生を付けたいところだな。

 ちなみに、華ちゃんは絵の方はどう?」


「さすがに絵までは」


 華ちゃんでも絵画はレパートリーに入れてなかったようだ。少し安心した。


 しかし、絵というのは、ただ写実が上手いだけでは一流ではないはずなので、一流になるための修行は絶対に必要だ。珠は磨かなければただの硬い石で終わってしまう。


 さーて、どうしたものか。


「ゼンちゃん。

 絵の先生ならわらわが知っておるぞ」と、まさかのアキナちゃん。


「神殿で壁画や天井画、肖像画を描かせておる画家が何人もおる。わらわも何度か肖像を描いてもらったことがあるのじゃ。わらわそっくりとじいが言うとったが、絵なんかより実物のわらわの方が何倍も美しいじゃろうと言って爺をしかりつけてやった。おっと、これは関係なかったな。

 そういうことじゃから、そういった画家の中で、よさげな画家を見繕みつくろってイオナの絵の先生にすればよいのじゃ」


「アキナちゃん、そんなに簡単にちゃんとした画家が絵の先生になってくれるかな?」


じいがそこらは何とかするじゃろ。

 なーに、わらわに任せておけ。悪いようにはせぬゆえ」


 座敷童兼神さまが請け負ってくれたので、お任せするか。


「じゃあ、アキナちゃん、頼むよ」


「任されたのじゃ」


 今の俺とアキナちゃんの会話をぽかん聞いていたイオナはスケッチブックに向き直り、黙って色鉛筆画の制作を再開した。


「おっと、もういい時間だから俺は着替えて風呂に入ってくる」


 華ちゃんもキリアもアキナちゃんもそれを聞いて着替えのため2階に上がっていった。



 脱衣場で防具その他を脱いで風呂に入った俺は、湯舟に浸かって、


 イオナも才能があった。あと残るはエヴァだけか。エヴァがそういったところを負担に感じたり焦ったりしなければいいのだが。それはそうなのだが、アキナちゃんの笑い顔と見て、自信満々の言葉を聞くと、心配事はみんな溶けて流れていってしまうような気がしてくることに気づいた。


 そういえば、俺はアキナちゃんの要望を一度も断ったことはないはずだ。考えてみたら、うちにいる連中の要望も断ったことがなかった。ただ、アキナちゃん以外俺に要望することはほとんどないから、比較にはならないかもしれないのだが。


 頭と体を簡単に洗った俺は、もう一度湯舟に肩まで浸かってから湯舟から上がった。


 湯舟のお湯を桶で掬って洗い場を軽く流してから、湯舟のお湯を取り換えた俺は、着替えを済ませて、子どもたちに風呂に入るように脱衣場から声をかけた。


『『はーい』』


 4人の声の他に、アキナちゃんの声も聞こえた。アキナちゃんはもう完全にうちの子だな。


 居間に戻ると、華ちゃんがピアノを弾いて、はるかさんが小さくなってコタツに入っていた。はるかさんはずっと外にいたようなので、少し寒くなったのだろう。はるかさんによると、工事の作業員たちは先ほど作業を終えて帰っていったそうだ。


 20分ほどで子どもたちは風呂から上がり、居間にやってきて華ちゃんに頭を乾かしてもらって、それから台所に駆けていった。夕食の手伝いだ。現代化が進んだ結果、リサの家事の負担はかなり減ってきているようで、その分、子どもたちの手伝いの時間も減り、自由時間が増えたようだ。


 子どもたちが駆けていってから5分ほどで夕食が始まったのだが、今日は待望のきりたんぽ鍋だった。華ちゃんもはるかさんも手伝っていないのでリサ一人できりたんぽ鍋を作ったことになる。


 今回俺は、でき上ったきりたんぽ鍋を鍋ごとコピーしてやった。明日にでも神殿に届けてやれる。面倒な説明をしなくても、具だくさんのスープとでも思って適当に食べるだろう。


 渡した料理本をリサは空いた時間よく見ているのだが、和食もかなりレパートリーに加えているようだ。年季が明けて、うちから出ていくときには、食材の手当ては俺がすることになるかもしれないが、日本料理屋でも始めたらいけるかもしれない。




 翌日。


 朝早くから学校の建設工事は始まったようだ。アキナちゃんは神殿に帰ってイオナの絵の先生のことを大神官に話してくれるというので、俺が送り届けてやった。そのとき、昨日コピーしたきりたんぽ鍋を鍋ごと20個ほど置いてきてやった。一鍋で5人として100人分。


「アキナちゃん、これで足りるかな」


「これだけあれば十分なのじゃ。ゼンちゃん、ありがとうなのじゃ」


「それじゃあな」


 帰り(・・)は神殿の馬車で送ってもらうので迎えにこなくてもいい。と、アキナちゃんに言われたのだが、アキナちゃんのその言いようが、完全に俺の屋敷が中心になっていたので笑ってしまった。


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