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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第216話 ダンジョン公開に向け。年末6


 グリーンリーフ3名の活躍は防衛省から要所要所でマスコミに発表され、個人情報は詳細不明のままではあるが、今では国民的スターとして扱われていた。


 その3人の移動中の素顔が雑誌にスクープされたのだが、実績はすごいがルックスは並以下だろう。と、いう幾分嫉妬も含んだこれまでの予想に反して女子2名は美少女、男子1名もイケメンだったため、チーム名のみ公表され個人の名まえは未公表のままの3人の私設ファンクラブが多数つくられた。特に人気なのはグリーンリーフの黒一点。彼の私設ファンクラブには下は3歳の幼女から上は96歳の女性までが加入していると言われていた。



 そういったなか、防衛省から正月明け防衛省の記者会見室において記者会見を開き、国民に対して正式にグリーンリーフを紹介すると発表があった。もちろんダンジョンの一般開放に向けてのパフォーマンスである。


 ダンジョン関連の法律、正式名称『ダンジョン利用法』は秋の臨時国会で成立しており、年明け1月1日から施行されることになっている。法律名にダンジョンという名がつけられたため、諸外国から地下牢獄と勘違いされるのではないかとの有識者からの懸念も表明されたが、その名称のまま法律が制定されている。


 施行される法律に則って諸規則も制定された。


 規則の内容は、


 まず、ダンジョンに入場できるのはダンジョン免許証、通称冒険者免許取得者のみとする。


 ダンジョン免許証は、満16歳以上65歳未満の者で所定の講習を受け、筆記試験に合格し、さらに実技試験を合格した者に交付される。免許は5年間有効。自動車免許と同じく5年ごとに教習を受けることで更新可能。などが大まかな内容である。


 実技試験の内容は、いわゆる体力測定とほぼ同じで、


 握力

 上体起こし(腹筋)

 立ち幅跳び

 反復横跳び

 20メートルシャトルラン

 50メートル走

 ソフトボール投げ


 それぞれで20点満点で採点され、合計点が100点以上あれば合格する。


 当初、武術などの特技がある者は実技において優遇しても良いのではないかとの意見もあったが、評価が恣意的になるし、いくら武術の心得があっても、実技試験で100点に満たないようではダンジョンでの活躍は難しいだろうということで見送られている。



 冒険者はダンジョン入場毎に入場税1000円が徴収される。徴収された入場税は、主に未帰還者の捜索費として活用される。保険の支払い実績で入場税は見直される可能性がある。ダンジョン内での死亡を含む事故の保険は民間保険会社が引き受ける予定になっている。


 ダンジョン内で使用する武器には免許証IDと同じIDが振られており、ピラミッド=ダンジョン近くに作られる予定の武器預かり所に必ず預ける。武器に関する規定は細かく作られているが、その他の規定は、冒険者の利便性を優先して今のところ作られておらず、問題が発生した時点で対応することになっている。


 いわゆる泥縄式の対応に、各方面から批判も出たが、こういった方針は国民からはおおむね好評である。


 モンスターの死骸、貴重な鉱石などのダンジョンからの産品はダンジョン近くに作られる予定の買い取り所に全て持ち込み、持ち出しは禁止されている。



 一連のダンジョン関連業務は、防衛省の外郭団体として設立された日本ダンジョン協会によって運営される予定である。


 また、ダンジョンからの産品について大手商社などから価格提示をうけ、その価格を参考に買い取り所での買い取り価格を決定することになっている。また、ダンジョン振興のための特例措置として、当初5年間ダンジョンでの収益は個人の収入に含まれないことになっている。その代り、装備品の代金などは控除できない。5年を経過した後、この制度が継続されるかは今のところ未定である。



 ダンジョン開放の予定だが、まず第1から第3ピラミッド=ダンジョンが4月より開放され、その後、都市部に現れたダンジョンから順に開放されることになっている。


 第1ピラミッド=ダンジョンの出現した代々木公園内に関連施設の建設が始まっている。代々木公園は都の所有のため、国がピラミッド周辺の土地などを都から有償で譲り受けている。第2、第3ピラミッド=ダンジョンも順調に工事が進んでおり、他のダンジョンでも周辺用地の取得が進み、関連施設の建設が始まっていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 そんなこんなで年の瀬は暮れていった。


 買ってきたミカンは台所から持ってきた大き目のカゴに山盛りにして、コタツの真ん中に置いている。これだけで、ぐっと、らしくなった。


 そして大晦日、はるかさんを迎えるため池袋駅前に跳んだ。


 俺が到着したのは約束の時間の5分前だったが、はるかさんは約束の場所で待っていた。


 今回のはるかさんは、かなりの大荷物と一緒だった。スチール製で2輪の折りたたみ式カートに大きくて重そうな箱を乗っけ、そのほかにスーツケースが一つあった。


「おはようございます」


「おはようございます。この箱運ぶの大変だったでしょう」


「ちょっとだけ」


「何が入っているんですか?」


「プリンターを用意してみました」


「なるほど。用紙なんかはありますか?」


「はい。カラートナーと用紙はスーツケースに入れています」


「領収書があったら後でください。費用を払いますから」


「ありがとうございます」


「まずは、そのプリンターから」


 カートごと収納したが、もちろん周囲の人は気付いていない。


「いつ見ても、不思議ですよね」


「なにも考えずに収納してるけど、相当不思議ですよね。

 髪の毛のためにも、深く考えないようにしましょう」


「そうですね」


 その後スーツケースを収納し、


「それじゃあ、屋敷に帰りましょう」


「はい」


 はるかさんが俺の手を取ったところで、屋敷のはるかさんの部屋の前に転移した。


「荷物はここに置いておきます。

 プリンターだけは、コピーしておきますね」


「はい。お願いします」


 実は収納したときにカートごとコピーしている。


「コピーの方は邪魔になるからわたしの方で預かっておきましょう。オリジナルが壊れたら言ってください」


「はい」


 スーツケースとオリジナルのプリンターの箱の乗ったカートを扉の横に置いて、


「あと、コピーしてほしいものがあったら言ってください。トナーと用紙は使う前の方がいいから今貰ってコピーしちゃいましょう」


「それじゃあ、スーツケースから取り出して持ってきますから、ここで少し待っていてくださいね」


「はい」


 はるかさんが荷物と一緒に部屋に入っていき、1分ほどで新品のトナーの入った箱とプリンター用紙を持って出てきた。それを受け取った俺は、おのおの3つ作って、オリジナルと合わせてはるかさんに返した。


「ほんとーに、便利ですね」


「それほどでも」


 何の意味もなく謙遜してしまった。





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