第209話 年末、最後の授業
週明けの会議で、田原一葉と俺が勇者と一緒に連れ戻した男女2名がチームを作って、一般人としてダンジョン探索のテストを行なう話を聞いた。自衛隊員から見れば、3人は確かに一般人ではある。6万人の中から選ばれた逸材であるという触れ込みだそうだが、スキルを持った3人にかなう本当の一般人はまずいないので嘘ではない。ダンジョンを一般開放し、資源として活用していこうと考えているD関連局からすれば妥当な作戦だ。
その後の会議で第1回のダンジョン探索も大成功だったそうで、この調子なら、本当の意味でダンジョンの一般開放も夢ではなくなりそうだ。
一般開放前に、冒険者の教習所、武器の預かり所などを整備する必要もあるので、年明けには施設の関係もあって無理かもしれないが、年度明けには一般開放されるのだろう。
俺とすれば、自分たちのダンジョンの捜索の方が大切なので、そっちは正直なところどうでもいい。
そうこうしているうちに、年末が迫ってきた。これまでの俺たちのダンジョン探索での成果。
スキルブックは、これまでに手に入れていたスキルブックを加え
体術×1
弓術×1
剣術×1→キリアが使用し0
魔術×1→華ちゃんが使用し0
片手武器×1→キリアが使用し0
キリアの剣の切れがある日格段に鋭くなった。俺が人物鑑定したところ、スキルレベルが上がったわけではなかった。もしやと思い神殿の水晶玉で鑑定してもらったところ、キリアは職業:剣士になっていた。大神官の話では、キリアの歳でなんらかの職業が現れたということは記憶にも記録にもないということだった。やはり、キリアは才能の塊だったようだ。
アイテムは、各自が使用しているものを除き、
ダガーナイフ×1
長剣×1
メイス×1
ハンマー×1
杖×1
籠手×1
弓用籠手×1
短弓×1
長弓×1
タワーシールド×1
蜘蛛の毒糸×6
ミミックの死骸×8
バジリスク×2
その他多数
華ちゃん
職業:賢者
魔術Lv6、錬金術Lv1、鑑定Lv1、片手武器Lv1、打撃武器Lv2
キリア
職業:剣士
剣術Lv1、斬撃武器Lv3、片手武器Lv1、盾術Lv1
俺は職業スキルとも変化なく
職業:錬金術師、転移術師
錬金術LvMax、アイテムボックスLvMax、転移術LvMax、杖術Lv3、人物鑑定、第2職業選択、オートマッピング、両手武器Lv4
ダンジョン探索と直接は関係ないが、この間スキルポイントは2つ増えて30となっている。
日本というか、地球では、もうすぐクリスマスだ。クリスマスを祝う習慣などこっちにはないが、何もしないわけにもいかないだろう。それと、はるかさんの半年の任期は明後日終了する。明日は送別会だ。
夕食が終わり、華ちゃん以上の3人が風呂から上がって居間に入ってきた。
子どもたちは先に勉強部屋に上がって先生を待っている。と、華ちゃんとリサに告げたら、二人は直ぐに勉強部屋に上がっていった。はるかさんは自分の部屋に戻っていった。
当たり前のように子どもたちの中にアキナちゃんが混ざっている。ちょっと前までアキナちゃんはうちに入り浸っていたのだが、今では泊まり込んでいるし、勉強部屋には俺が用意してやったアキナちゃんの机も並んでいる。
アキナちゃんはアキナ神殿のご神体さまではなかったのか? ご神体さまがフラフラと出歩いたまま帰らなくてもいいのか? アキナ神殿。
居間に残ったのは俺一人だったので、俺も勉強しようと自室に戻った。
人生100年、知への探求心を失ってはならない。
ということで部屋に戻った俺は、ベッドに寝っ転がってコミックを再読し、知識の固定化を図り始めた。そろそろ、新しいコミックを仕入れないとな。
華ちゃんによる国語の授業の後は、はるかさんによる算数の授業だ。今日ではるかさんによる授業は最終回となる。明日の夕方送別会をして、明後日の朝、日本に連れ帰ることになっている。
寝っ転がってコミック読んでいたら、勉強部屋から子どもたちの声が聞こえてきた。
『『はるか先生、ありがとうございました!』』
知らぬ間に華ちゃんの国語の授業が終わり、はるかさんの算数の授業も終わったようだ。今日ははるかさんの最後の授業だけにちゃんとお礼をこっちの言葉ではなく日本語ではるかさんに伝えたようだ。想像だが最後の授業はみんな真剣に聞いたことだろう。
みんな授業が終わったので、居間に集まってくるから俺も居間に下りていかなくちゃいけない。
今日の勉強後のデザートは好評の、イチゴの代わりに楽園イチゴのスライスを上に乗っけたショートケーキだ。
リサがワゴンで運んできたお茶がみんなに回され、ショートケーキを乗せた小皿もみんなに行き渡った。
いただきますというほどではないが、それでも様式美として、「いただきます」
「「いただきます」」
みんな寛いでケーキを食べていたら、はるかさんが、
「これで、このケーキも食べ納めなんですね」と、しみじみと口にした。
俺はそれに答えようがないので、何も言わないでいた。
その時はそれでその話は終わり、子どもたちとリサは後片付けのため、食器類を片付けて台所に移動した。その後は、明日に備えて歯を磨いて寝るのだろう。
華ちゃんも、2階に上がっていったので、居間にははるかさんと俺だけが残った形だ。
そろそろ俺も2階へ上がろうかと思ったところで、はるかさんが、
「実は、わたし、帰って防衛省にレポートを提出したら、理研を退職しようと思っているんです」
さっきの話の続きだった。さっきは居間の中に全員いたから言いにくかったようだ。
勤め先を辞めるにはそれ相応の理由があるのだろうからここでなぜと聞くのがいいのか、聞かない方がいいのか迷うな。ここ半年はるかさんはこの世界にいて、理研には顔を出していない以上、こっちの世界に原因がある可能性が高いが。
それよりも、俺にわざわざ話をしているということは何か意味がある可能性が高い。とはいえ、俺は無難かつあいまいに、
「それはまた」
「偶然とはいえ、せっかくこの世界の言葉を読み書き話せるようになったわけですから、何かこの世界のためになることができるんじゃないかって。それをここのところ考えていたんですが、さっきの最後の授業で子どもたちに『はるか先生、ありがとうございました!』って言われた時、思ったんです」
「……」
「この世界に、学校を作れないかなって。
今はできないけど、将来日本とこの世界で行き来ができるようになった時、この世界でも日本でも、必ず役に立つと思うんです」
そういう話だったのか。いいじゃないか。
「はるかさん。わかりました。学校作ろうじゃありませんか」
「善次郎さん、ほんとうですか!?」
「もちろんです。
俺が協力できるのは資金面と、教材を揃えることくらいだけど」
「ありがとうございます」
「明日は、はるかさんの送別会の予定だったけど取りやめて、忘年会兼クリスマス会としましょう」
「はい!」




