第205話 魔神堕つ! 俺、ヤバいんじゃね?
キリアのアドバイスに従って魔神を収納しようと試したら収納できてしまった。
みんな喜んでくれているのだが、魔神なんぞをアイテムボックスに収納しておくことは大いに不安だ。
それでも、
「いちおう目的は果たした。
屋敷に帰るか?
その前に、念のため、みんなでポーションを飲んでおこう」
ちょっと高級なヒールポーションを4つ作り、3人に渡して俺も一本飲んでおいた。
空瓶を回収し、さらに、
「万全を期してヒールポーションで防具全体を洗っておこう。
みんな俺の近くに集まってくれ」
俺の言葉はそのままの意味だったのだが、みんな怪訝な顔をして俺を見た。それでも俺の周りに集まってくれた。
「ヒールポーションの雨を降らせまーす」
俺は、薄めではあるがヒールポーションを大量に作り出して、頭上から降らせてやった。
ヒールポーションで十分防具も濡れ、下着まで濡れたのでこれで十分だろう。
「これなら大丈夫だろう。
それじゃあ、屋敷に戻ってすぐに風呂に入ろう。
みんな俺の手を持ってくれ」
みんなの手が俺の手を持ったところで「転移」
転移した先は屋敷の玄関ホールだ。
「3人は着替えを持って先にシャワーを浴びてくれ。俺はみんながでた後、シャワーを浴びるから」
「「はい」」「お、おう」
3人が着替えを取りに2階に上がった。アキナちゃんの着替えはイオナか誰かが貸してやるだろう。
ホールでの話し声で、俺たちが屋敷に戻ったことを知ったらしく、台所の方からエヴァがやってきた。
「ご主人さま、お帰りなさい」
「エヴァ、ただいま」
「お茶を用意しますか?」と、エヴァ。
「いや、ご覧のとおり濡れて少し体が冷たくなったから、防具を脱いだら玄関先で日向ぼっこをしてるよ。
華ちゃんたちはこれからシャワーを浴びるから、シャワーを終えて風呂から出てきたら俺に知らせてくれ。
そうそう、イオナに言って、着替えの服をアキナちゃんに貸してくれるよう伝えてくれるか?」
「はい、ご主人さま」
エヴァはそう言って台所の方に駆けていった。
俺はそのままホールで防具を脱いで干しておき、ワー〇マンスーツの上着を脱いで玄関を出て、夏の日差しの中、日向ぼっこを始めた。ヒールポーションは分析ではただの水なので、ポーションをかぶったとしても雨に遭ったのと状況は全く変わらない。従って乾いた後、変な色や跡が残ることはないだろう。
日向ぼっこを始めて3分で十分体が温まった。もちろん、女子3人のシャワーがその程度で終わるはずもない。そのうち暑くなってきたので庇の陰に移動した。
太陽の位置は中天近い。そろそろ昼食の時間だ。今日はどこで食べるとも言わずに出かけてしまったが、おそらくリサのことなので俺たち4人分の昼食の用意をしてくれているだろう。
しかし、今日は特別暑いな。日陰にいるので太陽は直接見えないが、太陽の本気を感じる。
あれ? 俺の転移スキルって、確か、
『知覚範囲内の対象を知覚範囲内の別の場所に転移させることが可能』とかなんとか。
俺は現在アイテムボックスの中に魔神を知覚している。
庇の陰に俺は立っているが、空に浮かぶ真夏の太陽を知覚している。
これって、いけるんじゃね? どうせダメもと。試してもいいよな。
俺はアイテムボックスの中の魔神を意識して、それから天空に輝く太陽を意識した。
「飛んでイケー!」
転送の手応えと一緒に、アイテムボックスの中から魔神は消えてなくなった。
太陽に向けて飛ばしたはずなのだが、太陽のどのあたりに飛んでいったのかは分からない。多分太陽に吸い込まれたはずだが確証はない。
ちょっとマズいかもしれないが、今さらどうしようもないし、ま、いいか。と、考えるしかない。少なくとも魔神は太陽の近くで実体化したはずだから、そのうち太陽に落っこちてこんがり焼かれるだろう。
これで魔神のことは忘れてしまえる。
忘れる前に、台座の上に置いてきた大金貨を回収しておこう。洞窟が繋がったままだと洞窟を通って妙な病原菌がやってきては困るからな。
さっそく俺は例の石室に跳んで大金貨を回収した。回収したとたん洞窟側の壁が一瞬ででき上りその先を塞いだ。これで大丈夫。
屋外よりダンジョンの中の方が過ごしやすいのは確かなので、少し涼んでいこうと石室にしばらくいた俺は、何となくさっきの魔神の太陽送りのことを考えていた。
魔神を太陽に送りこめた俺はどんな敵でも太陽に送りこめるんじゃないか?
たしか転移術Lvマックスだと、
『知覚範囲内の対象を術者の記憶にある位置に転移可能。転移はあらゆる制限を受けない』
太陽の位置は動いているのかもしれないが少なくとも俺の意識の中では太陽は太陽だ。ダンジョンの中で太陽を見ることができなくても、敵を太陽に投げ込めるかもしれない。
試しに、今日収納した岩を1つ太陽に向けて放り出してやろう。
目の前に岩を出して、その岩に意識を集中し、同時に太陽を思い出し、転送!
目の前の岩は消えてなくなった。
「俺、ヤバいんじゃね?」
5分ほど石室の中にいてから俺は屋敷の玄関前に戻った。
玄関前に戻ったら、すぐにエヴァが現れて3人がシャワーから上がったと教えてくれた。
俺の方はもうあらかた乾いていたが、一応シャワーを浴びるため玄関ホールで干していた防具とワーク〇ンスーツの上着を回収して脱衣場に向かった。
シャワーを浴びて服を着替えて居間に入っていったら、華ちゃんとアキナちゃんがいた。
「二人とも、今日はご苦労さん。
キリアは?」
「キリアちゃんは、台所に手伝いにいきました」
よく働くなー。
「魔神、岩永さんがアイテムボックスの中に収納しちゃいましたが、大丈夫ですよね?」
「アッハッハッハ」
「どうしました? まさか!?」
「いやいや、俺の頭が菌に冒されたわけじゃないから。
華ちゃんも俺が何だろうとどこへでも転送できることを知ってるだろ?」
「はい」
「詳しく言うと、俺が認識できるものを、俺が認識できる場所に送れるんだよ」
「岩永さんが、アイテムボックスの中に入れているものを認識できるということは分かります。あれ? 認識できる場所というのは、認識できさえすればどこだってってことですか?」
「そう。それには一切の制限がないんだ。
シャワーを浴びる前に、アイテムボックスの中の魔神を意識した上で、太陽を改めて認識したんだよ。
魔神は今頃、溶けてなければ太陽の中でこんがり焼かれてるんじゃないか」
「岩永さん、それって岩永さんはどんな敵が現れても太陽に放り込めるわけだから、無敵ってことじゃないですか?」
「そうなんだろうなー」
俺と華ちゃんの話を聞いていたアキナちゃんはほとんど今の話の内容は理解できていなかったようだが、とにかく魔神は世の中からいなくなったことだけは理解したようだ。
「何であれ、でかした!
わらわの見込んだゼンちゃんじゃ」




