第199話 反撃2、決戦準備
魔神の眷属、ネフィアと名乗るリッチの石化の呪いらしき攻撃を受けた俺は、ふくらはぎから下が石になってしまったのだが、キリアに石化していない部分で両足を切り飛ばしてもらって、その後ヒールポーションで切り飛ばした足を再生させることができた。
回復した俺は、嫌がらせのつもりで、ネフィアがいた石室に王水を錬金工房で大量に作って転送してやったが効果があったかどうかは今のところ分からない。
風呂から上がった俺は、髪の毛を洗ったわけではないが頭にタオルを乗っけて居間に戻ったら、アキナちゃんが俺に、
「ここの天井は明かりも明るいし、この屋敷は一体どうなっておるのじゃ?」と、聞いてきた。
明かりもそうだが、風呂の方はもっと驚くだろう。
「魔法ではないが、魔法のようなもんだ。そのうち慣れるだろ。
それよりアキナちゃん。キリアたちと一緒だが風呂に入ってきたらどうだ?」
「なに、風呂があるのか。
もちろん入らせてもらうのじゃ」
「みんな、アキナちゃんをよろしくな。それと、トイレの使い方も教えてやってくれ」
「「はい」」
「トイレの使い方は風呂より難しいかもしれないが、子どもたちによく聞いてくれ」
「トイレと風呂に使い方などあるのか? はて?」
首をかしげながらも、アキナちゃんはキリアたちに案内されて居間から出ていった。
最初はトイレ、次は風呂場の方から、案の定アキナちゃんの驚きの声が聞こえてきた。子どもたちから色々説明を受けてくれ。
少し静かになった居間には華ちゃんとはるかさんがいた。はるかさんは俺が風呂に入っているあいだに華ちゃんから今日のダンジョンでのことを聞いたようだ。
「善次郎さん、そのバケモノのような敵を斃すまで挑むんですか?」と、はるかさんが心配そうに俺に聞いてきた。
「おっかないけど、アイツを放っておくと神殿を襲う可能性があるし、アキナちゃんに限らず誰かがまた石にされる可能性があるから、できるなら斃してしまいたいんですよ。
アイツが鳳凰の羽根を欲しがるのは相応の理由があるんだろうから。
そういった謎は別にしても、神殿に鳳凰の羽根がないことを知ったら、ヤツがこの屋敷に現れないとも限らない以上、やるしかないでしょう」
「こ、この屋敷にそんな怪物が?」
「可能性はあると思います。
ということなので、ヤツを斃すいい方策は何かないかと、さっきも風呂の中で考えてたんですが、いい考えは浮かびませんでした。
華ちゃん、何かあるかな?」
「岩永さんの如意棒も、わたしの魔術も効かなかったけどキリアちゃんのフレイムタンだけはあの男に効いたわけですから、その辺りに何かヒントがあるような」
「俺もそこまでは考えたんだが、その先が思いつけなかった」
「フレイムタンは魔法の力か何かわかりませんが、剣で切り裂いたものを焼いていくわけですよね」
「そうだな」
「フレイムタンの力を魔法の力と仮定して、魔法の力と剣の力が同時に働くとあの男の防御が破れるんじゃないでしょうか?」
「ほう。可能性はあるな。
絶対物理バリアと絶対魔法バリアがあって、物理バリアは魔法攻撃を受けると壊れ、魔法バリアは物理攻撃を受けると壊れる。同時に攻撃されればどちらのバリアも壊れる。
この仮説が正しければ、華ちゃんが連続でファイアーアローをヤツに叩きこんでいるとき俺が如意棒でヤツを叩き潰せば勝てるってことだな」
「あくまで仮説が正しければですが」
「俺のラノベとゲームの知識から言って、ボス級の敵には弱点がなければならないから、今回の俺たちの推理は間違っていない。ハズだ。
よーし、明日は雪辱だ!」
「岩永さん、明日は神殿に拉致召喚された3人を防衛省に届ける日じゃなかったですか?」
「忘れてた。
そしたら、3人を届けてからだな」
「はい」
「明日はキリアちゃんを連れていきますか?」
「そうだなー、危険ではあるが、連れていこう」
「アキナちゃんは?」
「やはり連れていこう。5割増しは魅力だ。こっちの全力で当たろう」
「わかりました。明日は頑張りましょう」
その後、子どもたちとアキナちゃんが風呂から上がってきたところで、華ちゃんが5人の髪の毛をドライヤー魔法で乾かしてやった。アキナちゃんは頭の上でまとめていた三つ編みを解いていたが、つやつやの見事な金髪だった。
子どもたちは、髪の毛が乾いたところで夕食の手伝いをすると言って台所に駆けていったのだが、アキナちゃんも一緒になって駆けていってしまった。
おそらく神殿の中では同い年くらいの友達はいなかったのだろうから、うちの子どもたちと一緒にいることが楽しいのだろう。いいことだ。神殿ではちやほやされて育ったのだろうがそういったところを鼻に懸けるようなところが全くない。神さまに失礼だが、アキナちゃんは根が優しいいい子なのだろう。
ピョンちゃんを華ちゃんと一緒に楽園に連れ帰って、その後アキナちゃん用に空き部屋に寝具を置いてやった。
最後に食堂のテーブルにアキナちゃん用に椅子を一つ追加しておいた。場所は、俺の右前、テーブルの短い方の辺でお誕生日席になる。
そんなことをしていたら、食堂のテーブルの上に料理が並べられていき、夕食となった。
「アキナちゃんはこの席だ」
アキナちゃんを誕生日席に座らせた。
でき上った席順。
リサ エヴァ はるかさん 華ちゃん
アキナちゃん
オリヴィア キリア イオナ 俺
「それじゃあ、いただきます」「「いただきます」」
アキナちゃんもみんなと揃って『いただきます』が言えた。
「みんなで食べると、おいしいものじゃのう」
たしかにその通りだと俺もしみじみ思う。
食事が終わってデザートをみんなに出した。今回はモモのシャーベットにした。
「ジュースを凍らせたのか? アイスもおいしかったが、これはもう至高のお菓子じゃな」
目を細めたアキナちゃんがスプーンを動かす。当然、あっという間になくなってしまった。
一人だけ先に食べ終わったアキナちゃんが周りをキョロキョロ見回すので、
「アキナちゃん、その器にシャーベットを入れてやるから。もうこれだけだぞ」
そういってシャーベットをアキナちゃんの器に出してやった。
「ゼンちゃんは優しいのー。明日はきっと何か良いことがあると思うぞ」
デザートを食べ、後片付けも終わったところで、俺はアキナちゃんを用意した部屋に案内した。
「アキナちゃん、この部屋を使ってくれ。
ここのポッチを押すと部屋の明かりがついて、もう一回押すと明かりが消えるからな」
そう言って、試しに部屋の明かりのスイッチを点けて消して点けてやった。
「分かった。
しっかし、この屋敷は魔法の屋敷じゃの。
わらわもこの屋敷に住みたいぞ」
その日の夜。俺は明日の決戦に備えてエリクシールを作ることにした。エリクシールの錬成前は、石化した時の足の痛みを考えたらエリクシールを錬成した時の脱力感など大したことはないと思っていたのだが、のど元過ぎてただけで、やっぱり大変だった。それでも俺は、アキナちゃんの5割増しの効果か、エリクシールの一歩手前のヒールポーションをその前のブースターヒールポーションなしで錬成することができた。でき上ったヒールポーションでブーストしてからエリクシールを錬成した。
その方法でなんとかエリクシールを人数分、4本作り上げることができた。苦労したかいあって、スキルポイントが2つもらえ、これでスキルポイントは合計で28になった。




