第195話 正解2
巨人を斃し、巨人が潜んでいた壁を抜けて俺たちは新たな通路に進んだ。
今度の通路はさっきまで俺たちのいた通路より高さも幅も2倍はある。いつもの通路から比べれば3倍から4倍だ。4車線道路のような幅で、高さも20メートル近い。通路の先はまだ見えない。
「さっきのより、もっとすごいのが出そうだよな」という俺の感想に対して、
「これだけ広い空洞が地下にあれば駐車場にすればいいですよね」
華ちゃんは余裕の感想のあと、
「とりあえず、ディテクトアノマリー、ディテクトライフ」
余裕があろうが手抜きをしないところが華ちゃんのすごいところだ。
この先も異常はなかったが、逆に先ほど同様、何か出てくる感じが強まった。そして、正解に近づいている感じも強まっていった。
俺が先頭で、すぐ後ろの左右を華ちゃんとキリア、一番後ろをアキナちゃんと続くフォーメーションで移動再開だ。
100メートルおきくらいで華ちゃんがこまめにデテクトアノマリーとデテクトライフを前方に向かってかけていく。そう言えば先ほどの巨人を斃したせいか、キリアの鎧は少し黒ずんだようだ。残念ながら俺の鎧も華ちゃんの鎧も変化したかどうかはわからなかった。アキナちゃんの白い鎧は真っ白のままだ。アキナちゃんの鎧も魔法の鎧の可能性は当然高いよな。
4車線道路に入って500メートルほど進んだら、また前方200メートルくらい先に壁が見えてきた。
「また壁だ。どうせ巨人が潜んでるんだろうから、華ちゃん適当に壊しちゃっていいよ」
「はい。もう少し進んだら、壊しちゃいますね」
50メートルほど進んだところで華ちゃんが右手を上げた。
今度もさっきのアレかと思ったら、
「グラヴィティーノヴァ!」
右手から何も飛び出さなかったのだが、150メートル先の壁が音もたてずに消えてなくなっていた。相手が生ものだとできないが、俺もアイテムボックスで似たようなことができたのを今思い出した。
「で、華ちゃん、今のは?」
「グラヴィティーが目標で発動するなら、ファイヤーボールも手元からじゃなくてもいいかなって。
それで、さっきのファイヤーボールより10倍くらい強いファイヤーボールを壁の中で爆発させて、同時にさっきの10倍強いグラヴィティーで包んじゃいました」
「包んじゃったのか」
「はい」
これって、どんどんやっていくとそのうち核融合が起こるんじゃないか? なんだか怖くなってきたぞ。
「だけど、さっきのグラヴィティーファイヤーボールの時もそうだったんですが、いつもより威力が5割増し?そんな感じがするんですよね」
「危機に際して実力が出た。ってところじゃないか?」
「ほんとうに、そうなのかなー」
「フッフッフッフ」。そこで、アキナちゃんがなぜかニマニマ笑いを始めた。
「アキナちゃん、どうかしたか?」
「フフフ。華ちゃん、やっと気付いたようじゃな。華ちゃんの魔法の威力が増したのは神の化身たるわらわのおかげなのじゃ」と、ドヤ顔のアキナちゃん。
連れ歩いて邪魔にもならないが何の役にも立たないと思っていた神さまだが、連れ歩いていればそういったことが起こっても不思議じゃないような気がしてきた。
「おそらく、ゼンちゃんの錬金術の威力も5割増しじゃ。錬金術の威力が5割増しになって何がどう変わるのかはわらわには想像もできんがの」
なるほど。俺の錬金術もなにがしかのご利益をアキナちゃんからもらっている可能性は高いな。ちょっと試してやろう。
そこで俺は、睡眠導入剤のつもりで作っている金のサイコロを一度に2つ作ってみることにした。
『いくぞ! ゴールド。カモン!』
さすがに口には出さず、錬金を試みた結果、錬金工房の中で2センチ角の純金のサイコロが2つでき上った。たしかに疲れはしたが、それほどでもなかった。しかもここで、久しぶりにピロロンが鳴った。
『錬金術スキルの熟練度が一定値に達しました。スキルポイントが1付与されました。残スキルポイントは26です』
大魔法使いまでの道のりは遠いがありがたい。
現状俺は、これから寝ようとベッドの上で横になっているわけではなく、ダンジョン探索中なので、スタミナポーションをすぐに飲んで万全の体調に戻しておいた。
「アキナちゃんの言った通りだった。いままで大変だった金の錬成が簡単にできた」
「そうであろう。そうであろう」
アキナちゃんは目を細めてニンマリしている。俺のラノベとゲーム知識からだと神さまは信者が増えれば増えるほど元気が湧いて、その権能も強化されるというものな。俺もアキナちゃんの信者になったほうがいいな。
華ちゃんもキリアも驚いていたが、この二人もアキナちゃんの信者になりそうだな。
「まだ先がありそうだから、近寄ってみよう」
俺たちは華ちゃんが吹き飛ばした壁に向かって進んでいった。壁あったところには瓦礫が山になっていたが、やはりその先には通路があるようだ。
瓦礫を片付けた先の通路は、さらに広く大きくなって、幅は6車線道路、高さは30メートルはある。もちろん通路の先は遠くて見えない。
「ディテクトアノマリー、ディテクトライフ」
この通路にも異常はなかった。
「ここで少し休憩するか」
昼食時と同じように、石でできた通路の上にブルーシートを敷いて一休みだ。
「よっこらしょ」「よっこらしょ」
俺とアキナちゃんが同時に『よっこらしょ』と言ってブルーシートに腰を下ろした。
華ちゃんとキリアはよっこらしょではなかったが、アキナちゃんは『よっこらしょ』派だったようだ。『よっこらしょ』はやはり二つの世界を繋ぐ共通語だったようだ。
車座になった俺たちは、手袋とヘルメットを取ってくつろいだ。
「アキナちゃん、何か飲む?」
「アイスでもよいが、水があるなら水を貰おうかの」
冷たい水を入れた500CC入りのコーラのボトルをアキナちゃんに渡した。蓋は最初から付けていない。
「華ちゃんは?」
「わたしはコーラで」
華ちゃんに500CC入りのコーラのボトルを渡し、
「キリアは?」
「わたしもコーラで」
キリアにコーラを渡し、俺もコーラを手に持った。
水を飲んでいたアキナちゃんが、いったん飲むのを止めて、
「うん? その黒い飲み物がコーラという飲み物か。いったい何なのじゃ?」
「コーラは中で泡が湧いてシュワシュワの飲み物だ」
そう言って500CC入りのコーラのボトルをアキナちゃんに手渡した。こっちは蓋が付いている。
スクリューキャップの開け方をアキナちゃんに教えたら、さっそくアキナちゃんがボトルの蓋を開けた。
プシュー。炭酸が抜ける音がして蓋が開いた。
すぐにコーラをグビグビ飲んだアキナちゃんだが、咽始めてしまった。
「ケホケホ、ケホケホ。ゲプッ。なかなか刺激の強い飲み物じゃが、気に入った!」
お気に召したようだ。
その後アキナちゃんは残ったコーラを一気飲みしてしまった。最後にゲプッはお約束である。
何か食べるかとみんなに聞いたが、アキナちゃんのお弁当が少し重たかったみたいで、みんな何も食べなかった。




