第192話 探索再開
翌朝。
鎧を着込だ俺は、約束の時間にアキナちゃんを迎えに神殿に跳んだ。
例の部屋の中には白く塗られた革鎧に身を固めたアキナちゃんと法衣姿の大神官だけがいた。
アキナちゃんは身に着けた鎧が白なら、ブーツも手袋も白だったがヘルメットだけは銀色だった。アキナちゃんは金髪をうまく後ろでまとめているようでヘルメットから金髪ははみ出していなかった。白い革鎧の要所には水色の模様が入っていて実にカッコいい。
俺たち一心同体の3人はヘルメット以外ほぼ黒装束だが、アキナちゃんは防具の下に着ているものまで白だった。一人だけ目立って敵に狙われ易そうだが、白が妙に似合っていた。
アキナちゃんの鎧姿はそれで良かったのだが、得物を何も持っていなかった。得物の代わりでもないだろうが、籐のようなもので編んだ大き目のバスケットが一つ足元に置いてあった。
「アキナちゃん、おはよう」
「ゼンちゃん、おはよう。どうじゃ、わらわの凛々しい姿は?」
「なかなか似合ってるよ」
「じゃろ」
「武器は持たなくてもいいのかい?」
「使えもしない重石をぶら下げて歩きとうはないゆえの」
一理あるが、そんなのでいいのか?
「足元の荷物は俺が持ってやろう。
これは何なんだ?」
「弁当箱じゃ」
「大きくないか?」
「わらわ一人分ではない。ゼンちゃんと、後二人いるというパーティーメンバーの分も入っておるのじゃ」
「それは済まないな。気が利くじゃないか」
「爺が用意してくれたものじゃがの」
正直は美徳だな。
俺はアキナちゃんのバスケットを目の前でアイテムボックスに収納してやったが、アキナちゃんは全く驚かなかった。自称神さまなんだから驚くはずなかった。
「御子をよろしくお願いします」と、大神官が頭を下げた。
「任せてくれて大丈夫だ。
それじゃあ、アキナちゃん、俺の手を取ってくれ。いったん俺の屋敷に跳んで、そこからみんな揃ってダンジョンに跳んでいく」
「便利なもんじゃな」
アキナちゃんが俺の手を握ったところで、俺は屋敷の居間に転移した。
屋敷の居間では、鎧を着込んだ華ちゃんとキリアのほか、全員が揃っていた。エヴァだけがアキナちゃんを一目見ているだけだから、他の連中も神殿の御子の顔が見たかったのだろう。
「神殿の御子を連れてきた。
名まえはアキナだ。みんなよろしくな」
「わらわが神の生まれ変わり、アキナじゃ。よろしゅうの。
みんな、わらわのことはアキナちゃんと呼んでも良いからな」
「で、こっちが、一心同体のメンバーの華ちゃん」
「ハナ・サンゼンインです。よろしく、アキナちゃん」
「もう一人のメンバー、キリア」
「キリアです。よろしくおねがいします」
「ほかの連中はそのうち一緒に食事するだろうからそのときでいいだろう。
それじゃあ、一度楽園に跳んでから、未探索部分の探索だ。
3人とも俺の手を取ってくれ。転移」
アキナちゃんは初めて楽園を見て、驚いた顔をして周囲を見回していた。
「なんじゃ、なんじゃ、ここは?」
楽園の真ん中に4人で現れた。いつものようにピョンちゃんが華ちゃんに気づいて羽ばたきながら近づいてきた。
「うわー、鳥じゃー、鳥が襲ってくる!」
「華ちゃんの友達なんだ」
ピョンちゃんはアキナちゃんの頭の上をかすめて、華ちゃんの右肩に止まった。
「ともだち? モンスターではないのか?」
「華ちゃんに懐いてるんだよ。楽園オウムのピョンちゃんだ」
「オウムにしては大きくないか?」
「俺も普通のオウムがどれくらいの大きさなのか知らないから、ピョンちゃんが普通より大きいのかは知らんがな。
そういうことだから、アキナちゃんもピョンちゃんと仲良くしてくれ」
「そうじゃな。
わらわはアキナじゃ、ピョンちゃん、よろしくな」
アキナちゃんがピョンちゃんにあいさつしたら、ピョンちゃんはアキナちゃんに顔を向けて、ピヨン、ピヨンと二回鳴いた。きっと『よろしく』と答えたに違いない。
「アキナちゃん、今ピョンちゃんが、こちらこそ。って言ってましたよ」と、華ちゃんが代弁してくれた。ほぼ正解だったようだ。
「それじゃあ、探索の続きにいくぞ」
アキナちゃんも何も言わずに俺の手を取った。俺はピョンちゃんに軽く触れて、前回最後に探索した第1階層の通路の上に出た。
そこで、いつも通り華ちゃんがライトを唱え、続いてデテクトアノマリーとデテクトライフを唱えたところ、アキナちゃんだけ緑に点滅しなかった。なぜか今日のライトはいつもより眩しく感じたが、華ちゃん自身も自分の作ったライトを見上げていた。そういうこともあるだろう。
「なんじゃ? みんなそろって緑に光って?」
「アキナちゃん、これは周囲に生き物がいないか探る華ちゃんの魔法なんだ。俺たちを含めて周りの生き物は緑に光って隠れていてもすぐわかるんだが、なんでアキナちゃんは緑に光っていないんだ?」
「もしや、わらわはまた石になってしもうたのか?」
「いやいや、それはないから」
「そうじゃ。
わらわにはふつうの魔法は効かんかったのじゃった。すっかり忘れておった。みんなと一緒に点滅しても良かったが、わらわ自身こればかりはどうにもできんからの」
確かにこの緑の点滅は仲間意識を醸成するかもしれないな。ここは俺がフォローしておかなくては。
「デテクトライフはかなり目立ってしまうから俺たちには効かない方がありがたいんだが、背に腹は代えられず俺たちは光ってるだけだ。光らなくてよかったじゃないか」
アキナちゃんは俺の言葉で納得したかどうかは分からないが、一応頷いてくれた。
しかし、自称神さまのアキナちゃんだが、魔法が効かないとは、本当にただ者ではなかったようだ。自称神さま改め半神さま程度にレベルアップさせた方がいいな。おそらく、その辺の魔法使いの唱える攻撃魔法なんて効かないのだろう。何の役にも立たないかもしれないと思っていたアキナちゃんだが、実はとんでもない技、いや奇跡を起こしそうだな。
その後はいつも通りデテクトアノマリーで現れた赤い点滅を華ちゃんが手順通りアイデンティファイトラップ、デスアームトラップで解除していく。俺はいちいちアキナちゃんに説明してやったが、一度聞いただけで華ちゃんが何をしているのか理解したようだ。




