第190話 週明けの定例会議3。御子
ここより、神殿編後半。よろしくお願いします。
週が明け、俺は華ちゃんを連れて防衛省に跳んだ。
いつものように迎えられ、席に着いたところで、最初に勇者以下3人の拉致被害者について話をした。呪いによる石化とかエリクシールについては、話がややこしくなりそうなので飛ばしている。
「……。そういった感じで、拉致先とは折り合いをつけてきました。
いつでも3人を連れてくることができますから、その後のことをお願いしたいんですが」
「了解しました。
ただの誘拐なら警察マターでしょうが、それなりに能力のある人物が3人となると、われわれがしっかり面倒を見た方がよろしいでしょう。もちろんお引き受けします。
お二人ともご苦労さまでした」
「よろしくお願いします。こちらにも準備があるでしょうから、いつごろ連れ帰ればいいですか?」
「明日? いや、明後日のこの時間ではどうでしょう?」
「かまいません。場所はどこに?」
「この会議室にお願いします」
「3人の扱いはどんな感じになりますか?」
「もちろん保護者のもとにお返ししますが、マスコミなどに妙な形で話が漏れないよう、警察とも連携して警護することになります」
「そういえば、田原一葉さんはどうなっています?」
「こちらで警護しています。
高校に復学していますが、特殊な経験をしたうえ、特殊な能力を持っているせいか、今の学校になじめないようです」
「なるほど」
確かに普通の生活に戻るのは厳しいかもしれない。隣りに座る華ちゃんを横目で見たが、表情は全く変わっていなかった。
「一般冒険者によるダンジョン探索第一陣の人選をどうしようかと考えていたのですが、3名の特殊能力者が戻ってくるなら、田原さんも含めて4人でチームを作ってもいいかもしれません。もちろん本人たちの意思しだいですが」
なるほど、一般とは言い難いパーティーだが、実現すればおそらく向こうで言うところのAランクパーティーだ。万が一にも最初の一般パーティーでの失敗が許されない状況なら妥当な選択だ。ただ田原一葉は、勇者とそりが合わず俺のところに逃げてきた経緯がある。日本に帰ってきてまた一緒のパーティーを組むとは思えないが、そこは本人たちの問題だ。
とにかく俺は明後日ここに3人を連れてくれば、この件に関してはお終いにしていいだろう。
「それでは、下の駐車場にいって、ポーションを卸してきます」
返事を待たずに俺は下の駐車場に跳び、設えてあったテントの中をのぞいて、中にいた自衛官にポーションを届けにきたことを告げた。
ちょうど、上からも連絡がきていたようで、板を敷いた上にポーションを卸すようにその自衛官に言われたので、
「ヒールポーション20箱で2千本、スタミナポーション20箱で2千本、合計40箱で4千本置いていきます」
計40箱を一度に板の上に置いて「それじゃあ」と、言って俺は会議室に戻った。
「ヒールポーション2千本、スタミナポーション2千本置いてきました」
俺が10秒もかからず戻ってきたからか、みんな驚いているようだ。
「今日はこんなところですかね?」
「そうですね。
本日もありがとうございました」
「こちらこそ。
それでは失礼します」
その日は日本での用事は特になかったので、俺と華ちゃんはそのまま屋敷に帰っていった。
かなり早く屋敷に帰ったので、昼までにまだだいぶ時間がある。
俺は、明後日の朝8時に勇者たち3人を迎えにいくことを神殿に伝える必要があるので、
「華ちゃん、俺はこれから神殿に跳んで、明後日3人を連れ帰ると伝えてくる」
「分かりました。
あれ? 誰か門の外にいるようです」
確かに屋敷の外から声が聞こえる。
「ちょっと見てくる」
俺は玄関から外に出て門の方に歩いていくと、門の向うから、
『門を開けてー』と、女の子の声がした。その後、
『アキナさま、わたしが取次ぎを乞いますから』。こっちはどうも大神官の声のような気がする。
何だか、ただならぬ気配を感じた俺は急いで通用口を開けて道に出たら、箱馬車の前に小娘と大神官がいた。
「あっ! ゼンちゃんだ!」と、俺に向かって金髪の小娘が大声を上げた。
ゼンちゃんって俺のこと? どこかで見た金髪の小娘だと思ったらアノ全裸の石像だった娘だ! あまりの軽いノリにすぐにはピンとこなかった。
「ゼンジロウ殿、申し訳ありません。
御子がどうしてもゼンジロウ殿に礼が言いたいと申しまして」
「外に立たせておくわけにもいかないから入ってください。
馬車も道の真ん中だと邪魔だろうから、今門を開けるから開いたら馬車も門の中に入れてください」
俺はいったん屋敷の中に入って、門を開けてやった。
馬車の前に立って二人がやって来たので、そのまま二人を玄関まで案内した。
途中、御子が鼻をクンクンさせて、
「変わった臭いじゃ」と、ジーゼルの臭いに気づいたようだ。普通よそさまの家にきて、何か臭っても口にしないよな。御子の後ろに立つ大神官は布で汗を拭いていた。
何年も眠っていたのだから仕方ないな。これから大人になっていくうえでそういった世間さまの常識を身に着けていけばいいだろう。
俺はそんなことを考えながら二人を玄関から応接室に案内した。
「ここで少し待っててください」
二人を椅子に座らせ、俺はいったん応接室から出て、台所の方に向かって、
「お客さま2名を応接室に通したから、お茶を頼むー」と、大きな声を出したら、エヴァが台所の方から駆け足でやってきて、
「はい。ご主人さま」それだけ言って駆け足で戻っていった。
小回りが利くことはいいことだ。
俺は応接室に戻って二人の向かいに座ったら、大神官にせかされて御子が椅子から立ち上がった。
「ゼンジロウ殿。この度、わたしに掛けられた呪いを解いてくれてほんとにありがとう」
そう言って御子は頭を下げた。ちゃんとあいさつもできるようだ。
「ふー、爺が教えてくれた通りちゃんと言えたのじゃ」
「御子さま!」
大神官に言わされた言葉だったのかもしれないが、気持ちはこもっていた。この御子はのじゃロリだったのか。これはこれでアリだな。悪くないキャラ設定だと思うぞ。
「これで、いちおう用事の半分は終わった。
それで、もうひとつの用事は、わらわに呪いをかけた大元、魔神の眷属の討滅をゼンちゃんに頼みたいのじゃ」




