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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第188話 バーベキュー


 俺が火をおこそうと、ダイヤモンドを使っていたら、はるかさんが大騒ぎを始めた。


 今度はリサが何事かとやって来たので、


「火打石で火を熾そうと思ってるんだけど、なかなかうまく火が熾きなくてね。

 はるかさんは、放ってていいよ」


「ご主人さま、わたしが代わって火を熾しましょうか?」


「リサはプロだものな。

 じゃあこれで」


 そう言って、俺は持っていた鋼の板と、ダイヤモンド(ひうちいし)をリサに渡した。


「ご主人さま、この火打石は透明で変わった火打石ですね」


「硬い方がいいだろうと思ってね」


「そうですね。街で売っている火打石も硬くて割れにくいものほど高級ですから。

 火口ほくちは?」


「そこの、炭の下に突っ込んだティッシュペーパー」


「ティッシュペーパーですか。もう少し繊維がほぐれたもの方が火がつき易いのですが」


「となると、綿みたいなのがいいな」


 俺が綿を作り出してみた。最初は細い糸の塊のような代物だったが何度か作り直していたら、綿らしい綿ができ上った。


 俺の作った綿を受け取ったリサが、


「これで火は熾ると思いますが、火口ほくちにくべる小枝か何かありませんでしょうか?」


「それならいいものがある」


 俺は割りばしを何膳か作ってリサに渡した。リサは一度木炭を移動させ、綿を下にして割りばしをその上に器用に組み、その組まれた割りばしの上に小さめの木炭を何個かおいていった。


 カチッ! カチッ!


「ご主人さま、硬そうな火打石だったので力を込めて打ち金を叩いたら、2つに割れてしまいました」


 リサの手の中で人造ダイヤの小石が確かに2つになっていた。


「あれ? 意外と脆い?」


 リサから割れたダイヤを受け取って、素材ボックスに戻して、再度人造ダイヤを作ってみた。割れる可能性は十分あるが、他に硬そうな石はアイテムボックスの中に見当たらないので、火がつくまでこれで押し通すしかない。


「新しく作ったから」と、言ってリサに火打石を渡した。


 カチッ! カチッ!


 今度はすぐに綿に着火したようで、煙が薄く上がった。その煙に向かってリサが、フー、フーと息を吹きかけた。


 煙が消えて、本格的に火がついたようだ。その火にさっきのティッシュも突っ込まれ、火はだんだんと大きくなって、割りばしに燃え移った。


「これで、炭に火がつけば」


 再度、リサが火に向かってフー、フーと息を吹きかけたところで、


「炭に火がつきました」


「さすがだね」


 俺は火がつかなかったらニトログリセリンを1、2滴垂らそうかと思っていたのだが、冒険をせずに済んでよかった。もしやっていたら、ボーボー山のボーボー鳥が鳴いたかもな。


 煙も収まって、しっかり周りの炭にも火がついたようだ。リサから火つけ道具一式を受け取って収納しておいた。きっと忘れると思うが、今度はちゃんとチャッ〇マンと着火剤を用意しておこう。


 なんであれ、とにかく火はついた。


 まずは、火の通りにくそうな大き目の野菜と、貝類だな。貝類の基本は醤油とバターだが、俺が味付けをしていいものやら? とりあえず網に乗っけてから考えよう。


 トングで適当に野菜を金網の上に並べていき、その隣に貝類としては一番大きなサザエを並べていった。


 先日のアワビの踊り食いではうまくナイフで身が切れたのだが、今日のアワビは特に大きいので、焼けたらまな板に移してちゃんとした包丁でスライスした方がいいだろう。


 ということで、食材を置いている鉄板の横の辺りに木?でできたようなまな板を一つ作り出しておいた。


「ご主人さま、わたしが代わりましょうか?」


 リサがバーベキュー係を代わってくれるというのだが、せっかく台所仕事から解放されたリサを働かせる必要はないので、


「リサは気にせず、遊んでいればいいから」と、言っておいたのだが、どうも俺のことだから食材が心配なのか俺のそばに立っている。


 そろそろ、時刻は11時半だ。リサが見守る中、俺はどんどん食材を網の上に乗せていった。


 炭の火も段々と広がっており、最初に火のついた辺りはかなり熱そうになっている。


 プールを見ると子どもたちが前に伸ばした両手でビーチボールを持って頭を水の中に浸けてバタ足をして、ときおり頭を上げて息継ぎをしている。イオナは体が小さい割には推進力があるようでどんどん先に進んでいた。


 食べるスピードを考えて、これくらいかな。と、いうほどの食材を並べたところで、俺は、トングで野菜をひっくり返していった。


 サザエの方も蓋が開き、ぐつぐつ煮立ってきた。醤油さしを取り出した俺はサザエの口に少量垂らしていった。ここでドバドバっと入れてしまうと大惨事必至なのでかなり慎重に醤油を入れている。


 しばらくしたら、醤油を含んだサザエの煮汁が炭の上にこぼれてジュッと音をたて、醤油を含んだサザエの煮汁が焦げる匂いが広がっていった。これは食欲をそそる。



 みんな最初は食欲があるだろうから、少し多めに並べていても大丈夫だろう。手前の野菜を火の弱い場所に移動させ、その跡地にホタテを並べてやった。そのあたりは火の勢いがあるのですぐに蓋が開きそうだ。


 俺は忘れぬうちに、バターを包装から取り出して皿の上に置き、その皿を食材置き場にしている鉄板の上に置いて待機させておいた。肉はすぐ焼けそうなので、焼くのは後からでもいいか。タレの入った瓶は出しておいた方がいいな。取り皿も出しておかないと。とかなんとか忙しくしていたら、目が回ってきた。


「ご主人さま、そろそろ代わりましょうか?」と、再度リサが言ってくれたので俺は素直にリサと交代し、アイテムボックスに入っている使い捨ての紙の食器やプラスチックのナイフやフォークを簡易テーブルの上に並べる係になった。


「おーい。そろそろ昼にしようー」



 直ぐにみんな集まってきた。やはり漂ってくるいい匂いが気になっていたのだろう。


「焼けたのから、リサにもらって食べてくれ。

 いただきますは、各自食べる時でいいからな。

 リサ、みんなに順番に配ってやってくれ。そろそろ、アワビを乗っけてもいいぞ」


 サザエのつぼ焼きはそろそろ食べられそうだったが誰も手を出してくれなかった。見た目に食べにくそうだからな。


 ということで、俺はリサに言ってサザエのつぼ焼きを皿の上に乗っけてもらった。皿はペラペラの紙の皿だったが何とか重さに耐えてくれた。


 それをテーブルの上に置き、殻から身を抜き出そうとしたのだが、先の尖っていない割り箸では殻から身を引っ張り出せそうにない。


 俺は、膠着した局面を打開するため新兵器を投入することにした。


 鋼鉄製サザエのつぼ焼き用二股フォークだ! 持ち手は丸くして持ち易くしたつもりだ。


 サザエの殻はまだ熱いので、布巾で持って、蓋のすぐ下あたりに二股を突っ込んでしゃくって少しずつ回しながら引っこ抜いたら、中の青黒い内臓部分まできれいに抜き取れた。


 これなら、大丈夫。ということで、特製サザエのつぼ焼き用二股フォークをもう7本作って、


「この二股フォークを使ってクルクルさせながら引っ張るとサザエの中の身がきれいに出てくるぞー」と、宣伝してやったのだが、だれもサザエのつぼ焼きには手を出さず、野菜と蓋がパカリと開いて醤油とバターで味付けされたホタテが人気だった。


 俺の皿の上に乗ったビロロンととぐろを巻いたようなサザエは確かにグロテスクではあるが、食とはグロテスクなものほどおいしいという通説があるのだ。あれは、グロじゃなく臭いものだったかもしれないが、何でもいいから食べて旨ければそれが正義だ。


 それでは、実食。『いただきます』






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