第174話 三千院華4
華ちゃんにせかされるまま、俺は華ちゃんを連れて楽園の真ん中に跳んだ。
すぐにピョンちゃんが俺たちに気づいて華ちゃんのところに飛んできていつものように華ちゃんの肩に止まった。
俺が華ちゃんに向かって何か言う前に華ちゃんの方から、
「岩永さん、済みません。
さっきの人はわたしの父です」
そうだろうと思ったよ。
「華ちゃん、うちに帰った方がいいんじゃないか?」
「家には帰りません!」
「もちろん、俺も華ちゃんにいてもらいたいが、俺のところにいるにしてもこのままだとマズいような気もするんだが。少なくとも親の許しとかあった方がいいんじゃないか?」
「岩永さんのおっしゃることは理解できます。
分かりました。父に話をしてきます」
「その方がいいと思うよ。その結果、華ちゃんが自分の家に戻るなら、寂しくはなるが、それはそれで結構なことだしな」
「本当に寂しく思ってくれますか?」
「当たり前だろう」
俺のその言葉を聞いてかどうかわからないが、今まで硬い表情をしていた華ちゃんの顔が緩んだ。
「今まで先延ばしにしてきましたが、ちゃんと話して父に許可をもらってきます。
岩永さん、ワーク〇ンのお店の前まで運んでくれますか?」
そうか、あの先を少し行けばお屋敷街だったものな。
「了解」
華ちゃんが、ピョンちゃんに何事か話したら、ピョンちゃんはいつもの止まり木に飛んでいった。
その後華ちゃんが俺の手を取ったので、華ちゃんを連れてワーク〇ンの店の駐車場に転移した。
「岩永さん、おそらく父はうちに戻っていると思いますから、30分、いえ40分ほどしたらここに迎えにきてください」
「わかった」
華ちゃんは駐車場から駆けていき道を曲がっていった。
40分か。待たせるわけにはいかないから、30分経ったらここにいないとな。
さっきの黒塗りの大型車。あれはおそらく、ト〇タのセンチュ〇ー。センチュ〇ーらしく運転手付きだった。普通の個人で持つような車じゃない。華ちゃんの家はお金持ちだとは思っていたがただのお金持ちではないようだ。
華ちゃんがどういった理由で自分の家に帰りたくないのか、何となく想像できるようなできないような。お金持ちの家庭にはそれ相応の何かがあるのだろう。
考えてみれば、この俺もお金を持っているという意味なら、大金を持っているのだが、お金持ちとは言えない気がしてきた。なにせ、なんの悩みもないからな。
わが身の軽さを幸せに感じてしまった。
アルバイトをしていたころは、悩む暇もなく日々の生活に追われていたが、今は悩む暇はあるが悩むことがなくなった。何だかこのままいくと脳みそがツルツルに磨かれてしまうような気もする。俺も何か頭を使うことを始めないとマズいかもしれない。
せっかくワーク〇ンの前まできたので、店の中に入ってフラフラと商品を眺めてみた。たまたま手に取ったヘルメット。付いていたタグをよく見ると俺が買った株の会社が製造したものだった。こんなところにも売っていたのか。他の商品も気になって見てみたら、意外とその会社が製造している製品が見つかった。やるじゃないか。さすがはインヴェスターZの選んだ超優良会社だ。
ワーク〇ンの中でしばらく商品を眺めていたら、30分近く経ってしまったので、華ちゃんが戻ってくるのを待とうと、店から駐車場に出ていった。
ボーっと華ちゃんの帰りを待っていたら、華ちゃんが駆けていって40分経っていた。夏の日差しの中なので、サウナで鍛えたおかげか体の方はそれほど熱く感じていないが、照りつける太陽で頭が熱くなってきた。帽子はミスリルのヘルメットしか持っていないので、アイテムボックスの中から白いタオルを出し、それでほっかむりして、冷たいコーラも作り出してがぶ飲みしてやった。
華ちゃんは、父親は自宅に帰っている。とか言っていたが、失踪中の娘を見つけたと思ったら急に目の前からいなくなったわけだから、まだあの近辺を探している可能性もあるし、思ったように父親と話ができるとは限らないだろう。
そんなことを考えながら華ちゃんを待っていたら、20分経っていた。華ちゃんが駆けていってから1時間だ。
華ちゃんの家がここから遠ければ、時間がかかるものな。コーラはもういいので、いつぞやのモモのシャーベットをアイスクリームのコーンに入れて舐めたら、思いのほかおいしかった。しかもサーティ〇ンのコーンに合っている。新たな発見だ。
すぐにバリバリとコーンごとシャーベットを食べてしまった。
『おかしいなー。華ちゃん、もう帰ってこないのかもしれないなー。
仕方ないから俺も帰るか。でも、華ちゃんが遅くなってもここに帰ってきて、俺がいなければいくところがなくなるわけだから、やっぱり待っていないとマズいよな。
少なくとも、グランドピアノがアパートに運ばれてくる2時まではここで待っていよう。幸い飲み物と食べ物はいくらでもあるからな』
変な男が一人で駐車場に長時間立っているわけにもいかないと思い、駐車場の前の歩道に移動して、そこで立っていることにした。気持ちの問題かもしれないが、大きな道路に面している分こっちの方が少し涼しい。
時刻は午後1時を回ってしまった。
おかしいなー。暑いなー。
このままここに立っていたら熱中症になってしまいそうなので、効くかどうかわからないが予防的にヒールポーションを作って飲んでみた。そうしたら、スーっと体の中の熱が逃げていったような感じがした。半分熱中症にかかっていたのかもしれない。危ないところだった。
華ちゃん遅いなー。




