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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第165話 実力を見た2


 座卓を囲む8人にはもはや会話は不要だ。みんな真剣な目をして料理を口に運んでいる。



 固形燃料がだいぶ小さくなった鉄板焼きからいい音がし始め、いい匂いも漂ってきた。肉が焼けたようだ。付け合わせの野菜はまだのようだが、牛肉ならちょっとくらい赤味が残ってた方が美味しいものな。


 おっと、そろそろアワビの乗った土鍋コンロに火を入れた方がいいだろう。コンロのつまみをひねったらパチンと音がして火が着いた。強火で10分それから1分待って、そこでアワビをひっくり返してアワビがじっとするのを待つ。1分だったかな? 2分だったもしれない。少し酔ってきたような気がするが、たかだか60秒の差で世の中がどうなるわけでもあるまい。


 今度はリサに注いでもらった酒を飲みながら、鉄板焼きの肉をつまんで、タレに付けて口に運んだ。トロとはもちろん違うが、こっちも全く歯ごたえがない。老人用の食事ってことはないだろうが、歯がなくても食べられそうな肉だ。俺自身はトロ同様霜降り肉はそこまで好きではなかったのだが考えを改めないといけないようだ。


 肉を食べ終えたら、固形燃料がなくなって、野菜にも火が通ったようだ。うまくできているものだ。カボチャにタレを付けて口に運んだが、甘い。ナスビもいい塩梅に焼けてこっちもタレを付けて口に。ナスビの味の表現はなかなか難しいのだが、独特の柔らかさと水気が癖になる。ひとことで言えば『ナスの味』だ。


 気付けばお酒がなくなっているし、ソフトドリンクも飲み終わっているので、再度電話して、お酒を二つに、ソフトドリンクを頼んでおいた。


 土鍋の上のアワビも先ほどから盛大にうねっている。バター醤油が土鍋に垂れていい風味の湯気が立ち上る。2分ほど放っておいて箸で裏返して火を消して出来上がりを待つ。この裏返しはアワビの大きさから言って難しそうだったが意外とつるんと簡単にひっくり返った。ここで蓋をするのかどうか迷ったのだが、誰も蓋をしていないので、そのままにしておいた。


 アワビの踊り食いは見ようによっては残酷そのものなのだが、子どもたちの目が輝いているところを見ると、心配無用だったようだ。それは食べたくない、これは食べないというのは所詮飽食のわがままだからな。


 子どもたちも大人に手伝ってもらってうまくアワビをひっくり返せたようだ。


 その間にも、3人で差しつ差されつ日本酒をカパカパ飲んでいたらアワビの動きが止まった。


 二股のフォークとよく切れそうなナイフが添えられてあったのでフォークで殻の中のアワビを押さえてナイフで切ったら簡単に切れた。業物には見えないナイフだが、こういったところにも高級旅館の本気を見た気がした。


 アワビにはバター醤油の風味がよく合うようだ。シコシコアワビをつまんで口に入れたが、これも硬いわけではなく意外と柔らかかった。噛むと甘味が広がり、それを日本酒と一緒に流し込む。




 だいぶ冷めてしまったが、茶碗蒸しを食べて座卓の上の料理があらかた片付いた。


 最後のデザートの果物。大きな緑色のブドウにスイカ、グレープフルーツにメロンを全部食べたら俺でさえ、お腹がパンパンになった。


 子どもたちはお腹をさすっているし、旅行中でもあるのでサービスで、50CCほどヒールポーションの入った小瓶を作って、


「お腹いっぱいで身動きできないようじゃ困るからな」と言って、みんなに配った。


 誰も何も言わず受け取ってすぐにポーションを飲んだところを見ると、腹が一杯で苦しかったのかもしれない。


 食事が終わったところで電話したら、旅館の人がやってきてあっという間に座卓の上のものを片づけてくれた。


「お布団の用意はいかがしますか?」


「こっちに5人、隣の部屋に3人分敷いてください」と言っておいた。


「もう、ご用意してよろしいでしょうか?」


 見回したところ華ちゃんもはるかさんもうなずいていたので、「お願いします」と言っておいた。



 すぐに座卓が片付けられて、布団が運び込まれ、5組の布団が手際よく敷かれた。


 隣の部屋も引き続き布団が運び込まれたはずだ。


「わたしたちは向こうで休みます」


 そう言って華ちゃんたちが移動したので、俺は子どもたちに、


「眠くなる前に、歯を磨いて寝る準備な。歯ブラシなんかは洗面所に備え付けられてるからそれを使えばいいから」


 そう言ったら、「はーい」と言って4人揃って洗面所にいった。


 俺は時間的にまだ寝なくてもいいので、もうひと風呂浴びることにして、「俺はまた風呂に入ってくる」と言い残して、大浴場に向かった。



 風呂から上がって、部屋に帰ると、子どもたちは布団に入って眠っていた。俺は天井の電灯を暗くして布団に入って目を閉じたら、自然と眠っていた。



 翌朝。みんな起きだして朝の支度を済ませしばらくしたら、旅館の人がやってきて布団を片付けていった。そのあと、座卓と座椅子が並べられ、朝食の準備が始まった。


 もちろん和食の朝食で、焼き魚、野菜の煮物、玉子焼き、たらこ、ノリ、味噌汁、漬物といったメニューだった。高級なノリは黒くて艶がいい。


 朝食中、


「今日の予定は、熱海の見物だな。時間もあるし、海岸にもいってみたいところだ。

 ここから歩いていくのは大変だから、いったん駅前に出て、そこから熱海の海岸を見てみるか」


 そういうことで、朝食が終わり、片付けが終わった座卓に並べられた緑茶を飲んで出発だ。


 まずは、駅前に転移。旅館の送迎バス乗り場には今の時間人はいないだろうと思い、俺はみんなを引き連れて、そこに転移した。


 案の定、周囲には誰もいなかったのでそのまま歩道をぐるりと回って、海の方に下っていく道を俺たちは歩いていった。






ナスの味:どう表現していいか見当もつかなかったので、少しネットで調べたところ、結局『ナスの味』ということになりました。

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