第153話 火器によらないモンスター退治の検証1
スキルブックでスキルを少しばかりレベルアップした俺たち3人は屋敷に戻り、明日に備えて英気を養った。
翌朝。
朝食を終えて、俺たち一心同体の3人はしばらく休憩し戦闘服に着替え始めた。キリアはポーション運びの時間がなかったので、朝食の後片付けをリサと子どもたち全員で済ませ、キリアの代わりにリサがポーション運びを手伝っている。
着替え終わった俺たちは、居間で時間調整をし、それから自衛隊の待つダンジョンの空洞に転移した。もちろん時刻は8時55分。約束の時刻の5分前である。
刀1名、槍2名、盾とメイス2名の自衛隊員5名と、小銃を下げた自衛隊員が7、8名ほど空洞の中にいた。出口の黒い板の脇には以前のようにテーブルが置かれその上にノートパソコンなどが置かれていた。そこが今回の作戦の本部になるのだろう。
俺たちが現れたところで、小銃を下げた自衛隊員の中から、隊長らしい人が気付いてこっちにやってきた。
「岩永さんと、三千院さん、それに、お仲間の方ですね?」
「はい。わたしが岩永、左隣が三千院、そして、右隣がキリアです」
キリアの手を華ちゃんが握ってやっているようだ。キリアは緊張していたが、この程度なら大丈夫だろう。
「わたしは、今回の作戦の隊長を務めます第一空挺団第1普通科大隊大隊長の山根です」
山根大隊長が敬礼したので、俺たちも軽く頭を下げておいた。
すでに、刀などを装備した自衛隊員5名は、山根大隊長の後ろに整列している。
「まずは今回の任務につく5名を紹介します。いずれも空挺団の誇る猛者です。
佐高1尉、今回の隊長を務めます」
「佐高です、よろしくお願いします!」
刀を下げていた自衛隊員が一歩前に出て敬礼した。
その後順に、中原曹長(盾とメイス)、藤田一曹(槍)、田中一曹(槍)、藤井一曹(盾とメイス)の順に紹介された。
5人とも顔つきは一般人だが、首の太さが尋常じゃない。プロって感じがスゴイ。
「この5人がモンスターと戦っていくわけですが、万が一に備え、その後方を6名の自衛隊員がバックアップします。
岩永さんたち3人はその後から追従お願いします」
「了解しました」
「それと、みなさんのために用意したミリ飯です。通常は食べる前に温める必要がありますが、先ほど温め終わっていますので昼食時にはそのまま食べることができます」
そう言って膨らんだショルダーバッグを一つ渡された。開けてみると中にはビニール袋が3つ入っていた。これがあの有名なミリ飯なのかと妙に感動した。肩に掛けていればいいのだろうが、どうせ俺のことは知っていると思ってそのままアイテムボックスに収納してしまった。もちろん本能の命ずるままショルダーバッグごとコピーしている。
そのあと、俺たちはオブザーバーなのであまりでしゃばるわけにはいかないが、今回の隊長の佐高隊長に、華ちゃんの魔法の使用について確認することにした。
「われわれがダンジョンで探索する時は用心のため、前方に異常がないか確認してるんですが、ここでもそうした方がいいですよね?」
「確認とは?」
「どこかに異常があればその場所が赤く点滅するので簡単に異常を発見できる魔法を三千院さんは唱えることができるんです。
こういった洞窟型のダンジョンではまだ見たことはないんですが、罠などが仕掛けられていることもありますし、壁の中に隠されたアイテムなんかが見つかることもあります」
「なるほど。それでしたら、ぜひその魔法をかけてください」
「了解しました」と華ちゃん。
華ちゃんはすぐにデテクトなんちゃらをかけたが、もちろんどこにも赤い点滅は現れなかった。
「あと、スライムみたいなモンスターは見つけにくいので、そういったモンスターを見つけやすくする魔法もあるんですが、どうします?」
「もちろんお願いします」
「ちょっと見た目が派手なので、探索を始めてからにします」と、華ちゃん。いい判断だと思うよ。この人数が一斉に緑に点滅したら騒ぎになるかもしれないからな。
おそらく佐高隊長は今の華ちゃんの説明を理解できなかったろうがそれでも、
「分かりました」と答えてくれ、その後すぐに、
「そろそろ出発しましょう。
分隊、周囲を警戒しつつ前進」
大隊長さんたちが見送る中、11名の自衛隊員たちが前進していき、その後を俺たち3人はついていった。自衛隊員たちの進んでいったのは、空洞のちょうど真ん中の洞窟だった。この洞窟もバレン北ダンジョンと同じような構造だとすると、その先1キロ進むと第2階層に下りていく階段があるのだが、どうだろう?
自衛隊員は、両肩に着けたライトで洞窟内を照らしているためかなり明るい。華ちゃんのライトはダンジョン探索には必須といっていいが敢えてライトは唱えていない。
洞窟に入ってすぐに華ちゃんはデテクトなんちゃらを唱えているが目に着く範囲では異常はない。
「そろそろディテクトライフを唱えますけど、自衛隊の人たちに知らせた方がいいですよね?」と、華ちゃん。
「そうだな。
これから、生き物を見つける魔法を三千院さんが唱えますから。
それで生き物は緑に点滅します。人間も例外じゃないので、みなさんも点滅するので気を付けてくださーい」
俺自身どう気を付けていいか分からないが、一応の注意はした。
「ディテクトライフ」
俺の前を歩く華ちゃんの声と同時に前をいく11名の自衛隊員たちと俺たち3人が同時に点滅を始めた。その瞬間、隊列がわずかに停止したが、さすがは訓練された空挺隊員たち。すぐに移動速度は元に戻った。そのかわり、人の点滅に合わせて、40メートルほど先に緑の点滅が現れ、さらにその先にも緑の点滅が現れた。
「向こうに見える緑の点滅はモンスターです。おそらくスライム」
後ろから俺が注意喚起の一声をかけてやった。
「了解。
武器を構えて分隊前進!」
隊長の指示で隊長を含めた最前列の5人の侍たちはいっせいに武器を構え緑の点滅に接近していった。侍たちの後に小銃を構えたバックアップの6人が続き、その後を俺たち3人が続いた。
「華ちゃん。まだ枝道がないからいいけど、俺たちは後方を注意しておこう」
「そうですね。
キリアちゃんも注意してね」
「はい!」
キリアの肩の力も抜けたようで、顔つきから余分な緊張感は読み取れなかった。
前進する俺たちに向かって緑の点滅も近づいてきているが移動速度はかなり低いのでスライムに間違いない。
すぐにスライムと5人の侍たちの交戦が始まったのだが、危なげないかわりに、なかなかスライムを斃せない。スライム相手に切ったり突いたりでは分が悪いようだった。それでもめった切りだかめった刺しだかめった打ちされたスライムは死んだようで、緑の点滅は消えてなくなった。
そのころには次の緑の点滅が近づいていたため、すぐに侍たちは移動してその緑の点滅を囲んで、時間はかかったが斃してしまった。最初のスライムは溶けてしまっていたが2匹目のスライムはまだ溶けていなかったので、
「このスライムの死骸を取っておきましょうか?」と、刀を手にした隊長に声をかけたら、
「できるようならお願いします」と返事があったので、アイテムボックスに収納しておいた。
自衛隊員たちの顔は肩のライトの関係で逆光になるのでよく分からないため、いきなりスライムの死骸が目の前から消えたことに驚いたのかどうかはわからなかった。




