第151話 週明けの定例会議
はるかさんのダンジョンデビューも無事終わり、屋敷に帰って、はるかさんから充電済みのバッテリーを受け取った俺は、それをコピーしておいた。これで、いつでも需要にこたえることができる。リチウムなど素材ボックスに入っていたとは思えないが、コピーは簡単にできたので、廃車の中にでも入っていたのだろう。
それから、俺たち一心同体の3人は一度ギルド支部に顔を出し、晴れて3人ともAAランクの冒険者になっている。AAランクの冒険者カードはプラチナ製だった。一見銀に見えるが、少しだけ高級感がある。銀ではないので、黒く錆びることなくいつまでもピカピカだ!
そして、俺たち一心同体は純正のAAランクパーティーになった。
バジリスクについては依然買い取り可能か調査中とのことだったが、どうも無理そうだ。
そんなこんなでその週を終えて、翌週に入り、ヒールポーションとスタミナポーション各2000本を100本ずつ40個の段ボール箱に入れて準備し、防衛省の例の会議室に華ちゃんと一緒に転移した。
まずは、屋敷の現代化改装についてお礼を言っておいた。
「屋敷が生まれ変わりました。本当にありがとうございます」
「それは良かった」と、川村室長。
「実費につきましては、次回振り込まれる金額から差し引いてください」
「了解しました」
「お礼として、これを」
そう言って、お礼用に作った、かなりいいヒールポーション10本入りの箱入りセットをテーブルの上に取り出して、川村室長の前にズズズーと押し出した。
「これは?」
「ヒールポーション10本セットです。
こちらに卸しているヒールポーションと比べ効能がだいぶ高くなっています。飲んでみればわかりますが、色はほとんど透明です。その代りやや粘り気があります。効くー! って感じがしますよ。
頭以外の欠損ならおそらく治ります。それと元気も出ますから、回復後のリハビリも不要じゃないかな」
『頭以外の欠損』は冗談だったが誰も笑ってくれなかった。残念だ。
「いただきますが、これはまた扱いに困りそうな。
きっと分析しても水なんですよね」
「わたしでは分かりませんが、おそらくそうなんでしょう」
これでいちおう、借りは返せたろう。
その日のD関連室からの話題は、まず、前回俺が感じていた、ダンジョンに侵入する人が多くなればそれに比例してモンスターの出現頻度が上がるという件で、自衛隊の持つデータで検証した結果、やはりそういった傾向はあるそうだ。しかし、傾向は確かにあると分かったものの、どの程度の人間の数に対してモンスターがどの程度現れるのかという定量的なところまでは不明だったそうだ。
次に、俺の卸したポーションはいずれも飲料として扱うのだそうだ。
医薬品としてしまうと厚労省、製薬会社などの絡みで相当に面倒になるらしい。現状ポーションを分析すれば水なので、奇跡のような効用があろうとも今の法律下では医薬品として認可されるはずもない。そのための方便ということだろう。
飲料になれば健康保険は適用されなくなるが、現役自衛隊員のケガや病気についてはもちろん「支給」されるし、今後、引退した自衛官でも職務による障害が引退後も残っている者に対しては「支給」されるとのことだった。
こういった魔法薬が将来的に「保険薬」として認可されるよう働きかけるのもD関連室の仕事の一つとして取り組んでいくそうだ。もちろん、法律などの大幅改正が必要になるため、簡単ではないことも確かだ。
もう一つの話題は、ダンジョンの民間への開放が可能かを検証するため、刀剣、槍、弓矢などの心得のある自衛官を集め、ダンジョン内に進入し、モンスターを退治できるかの検証を行うそうだ。
「わたしの方は、先週ニューワールドのとあるダンジョンに三千院さんと潜って、珍しいモンスターを退治しました」
ここで、奴隷のキリアの話をすると面倒なので、キリアの話はしないことにした。
「どういった、モンスターですか?」
「モンスターの名まえを三千院さんが鑑定したところ、バジリスクという名まえでした。見た目は大きなトカゲなんですがね。
それを冒険者ギルドに持っていって売ろうとしたら、冒険者ギルドじゃ解体できないから引き取れないって断られてしまいまして」
「そ、そうなんですか」
「そうなんです」
「今も、そのアイテムボックスの中に?」
「はい。2匹入っています」
「拝見してもよろしいですか?」
「いいですけど、この部屋に入り切るかな? 頭を壁にくっ付けて、少し斜めにして反対側の壁でしっぽを曲げればなんとかなるか」
「それほど大きいんですか?」
「10メートルちょっとありましたが、この部屋でもなんとかなりそうです。
それじゃあ、1匹だけ」
会議テーブルの後ろ側、長四角の会議室の長い方に合わせてバジリスクを1匹出してやった。しっぽはカベのところでこっち側に向かって曲がってユラユラ揺れている。
「こ、こんなモンスターをお二人で?」
「いつものことなんですが、これも華ちゃんが一人で仕留めました。わたしはアイテムボックスに収納しただけです。あははは」
「ちなみにどのような方法で?」
今度は華ちゃんが俺に代わって、
「先日お話ししたグラヴィティの魔術で動きを止めて、それからファイヤーアローでこめかみを撃ち抜きました」
「このようなモンスターが現れたら、重火器でもないと斃せそうにありません。自衛隊による火器を使わないモンスター討伐実証は時期尚早かもしれません」
「深い階層になら、こういった大型なモンスターや強力なモンスターが出現するのでしょうが、1階層や、2階層じゃまず出ないんじゃないですか?」
「ちなみに、このバジリスクはかなり深いところで?」
「これはたまたまですが、第3階層でした。めったにないことのようで、冒険者ギルドじゃ大騒ぎしてました」
「だ、第3階層」
意外と浅かった。
バジリスクの死骸を会議室の中に出しっぱなしにしても仕方がないので、アイテムボックスに仕舞っておいた。
確かに、剣や槍でこいつを倒すのは厳しいかもしれない。こいつは俺たちに気づかぬままあの世に旅立ったが、気付いていればなにがしかの特殊攻撃があったかもしれない。逆に俺たちが不意を突かれて即死級の攻撃を受けていたら俺たちでさえ躱せないはずだから、運が良かったということだろう。結果は俺たちが勝って見事AAランクに昇格したがな。
「強力なモンスターが現れた場合、どうすれば?」
「地道な訓練? というか、とにかくモンスターを斃すことでしょう」
ここで俺は、アイテムボックスから如意棒を取り出した。
かなり黒ずんでいるので相当な迫力がある。持たないと分からないがずっしりと重い。
「この棒はわたしが武器として使っているものです」
ちょっと恥ずかしかったので『如意棒』とは口にしなかった。
「この棒なんですが、見ての通りかなり迫力があります。実はこの棒は元をただせばタダの木の棒で、強いて言えばモップの柄のような棒でした。
どうです?」
近くにいた山本一尉に手渡してみた。
「重い。しかも堅そうですね」
山本一尉が如意棒を軽く振ってから俺に返した。
「ただの棒だったものが、モンスターを斃しているうちに黒く、そして力強くなったものです。あと、防具の方も黒ずんできています」
「なんと。
これほどのものなら、モンスターに対して有効そうです」
「防具についても何か強くなってきているんでしょうが今まで危ない目に遭ったことはないのでそこはよく分かりません。これは確かめたわけではないんですが、おそらく人間自身も強くなってるんじゃないかなと思うんですよ。この棒ですが確かに重いと自分でも感じるんですが、不思議と振ったり突いたりしたときなにも違和感がないんですよね」
そう言って本気を出して一振りしてみせた。
シッ! という音がわずかに聞こえたが、俺以外では華ちゃんも含めて如意棒の先の動きを目で追えなかったろう。
「岩永さん、もしよろしければ、自衛隊の火器によらないモンスター退治の検証にオブザーバーとして参加していただけませんでしょうか?」
「面白そうですね。どこのダンジョンで行われるんですか?」
「まだ決まっていませんが、東京周辺のダンジョンを考えています。
そうですね、岩永さんのいらっしゃった第2ピラミッド=ダンジョンで行いましょう」
「あそこなら、直接跳んでいけますから大丈夫です。
華ちゃんも行くよな」
「はい。大丈夫です。いちおうパーティーメンバーですから」
そうか、そうなるとキリアも連れて行ってやるか。自衛隊員たちの雄姿を間近に見れば情操教育上好ましい効果があるに違いない。
「三千院さんのほかにもう一人わたしの仲間がいるので、連れていってもいいですか?」
「もちろんです」
「いつでもいいので、日時を決めていただければその時間に、ダンジョンの出入り口の空洞に跳んでいきます」
「それでしたら、明後日、午前9時ということでどうでしょう?」
「構いません。ちなみに、何時間ぐらいダンジョンに潜る予定ですか?」
「9時過ぎに出発して、夕方5時までに出口に戻ってくることを考えています。すでに見つかっています第2層へも下りてみる予定です」
「了解です」
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