第143話 キリア、冒険者デビュー2。
華ちゃんによる洗濯機の講習会は意外と長くて、俺が居間に下りてから30分ほどしてみんな居間にやってきた。
「華ちゃん、ご苦労さま」
「どういたしまして」
「みんな一人で洗濯機は使えるようになったかな?」
「普通の洗濯なら大丈夫ですが、いろいろあって、少しずつ覚えていきます」と、リサ。そんなものだろうな。
子どもたちも下を向いている。
「慣れればいいだけだからどんどん使って慣れていってくれ」
「はい」
「話は変わるが、
キリア、おまえ冒険者に成りたいって言ってたろ?」
「はい!」
「明日、ダンジョンに連れていくからそのつもりでいてくれ。華ちゃん、言ってなかったが明日は大丈夫だろ?」
「もちろん大丈夫です」
「それで、キリア。明日はダンジョンにいく前に冒険者ギルドに寄って冒険者登録もするからな」
「ご主人さま、ありがとうございます」
「それでだ。まずは防具を揃えるからな」
「はい」
俺は目分量で華ちゃん仕様のワー〇マンスーツを二回り小さくしたものを錬金工房で作り出して、キリアの前に出してやった。華ちゃんも、俺が何でもコピーしたものを出すので、コピー元が必要なのかとか意識はしていないだろう。
「キリア、まずは靴を履き替えて大きさを見てくれ」
キリアが裸足だったら靴下を履かせないといけないが、ちゃんと靴下を履いていたので、今まで履いていた靴を脱いでワ〇クマンシューズに足を入れた。
「紐を結べばちょうどです」
「そいつは良かった。ただ、足が合っていないと辛いからちょっとでもおかしかったら遠慮せずに言うんだぞ」
「大丈夫です」
「それじゃあ、次は手袋だ」
……。
「これもいいみたいです」
「よし。それなら2階の部屋に戻って、その黒い上下に着替えてこい」
「はい」
キリアがワークマ〇スーツの上下を抱いて居間を出ていった。
俺はその間に、ミスリルのヘルメット作りだ。スタミナポーションをあらかじめ右手に用意して、
コピー!
どっと疲れが出たところで、すかさずスタミナポーションを飲んで回復した。
ちゃんとミスリルのヘルメットが錬金工房の中にできていたのでそれをキリアのプロテクターの脇に置いておいた。
3分ほどでキリアが戻ってきたので、
「見た感じはおかしくないが、どうだ?」
「ちょうどいいみたいです」
「じゃあ、そこの銀色のヘルメットをかぶってみろ、今は緩いと思うがそのまま被っていたら頭になじむから」
『被っていれば頭になじむ』と聞いても未経験者では理解できないだろう。それでもキリアは何も言わずヘルメットを手に取って自分の頭に被せた。
「あっ! ヘルメットが縮んだ? 頭にピッタリです」
「そのヘルメットはそういうヘルメットだからな」
「ま、魔法のヘルメット!!」
「そうみたいだな。
次は肘と膝のプロテクターだ」
キリアは手際よく膝と肘のプロテクターを着けた。
「手を動かしたり、脚を動かして、肘とか膝がこすれたり当たったりしないか?」
「大丈夫みたいです」
「次は革鎧だ」
俺は、先ほど同様、華ちゃん仕様の革鎧一式を全体的に二回り小さくして、キリアの前に出してやった。今の華ちゃんの革鎧はかなり黒ずんでいるが、今作ったものは買った時にコピーしたレシピが元なので、赤茶けているだけで黒味はない。
「わたしが鎧を着けるのを手伝いますね」と、華ちゃん。確かに初めての鎧は一人じゃ大変だものな。しかし、お嬢さんのハズの華ちゃんだが何気によく気が回るよな。
華ちゃんの助けを借りてキリアが革鎧を一式身に着けた。
「無理はなさそうだが、キリア、どうだ?」
「大丈夫です」
体が細いせいか全く迫力はないのだが、とりあえず冒険者デビューはこれでいいだろう。
「そしたら最後に武器だな。
いちおうキリアの希望は何かあるか?」
俺自身はスキルブックの関係で剣と盾がお勧めだと思っているが、本人の希望を無視してまで勧める気はない。
「亡くなった父さんは剣と盾を使ってたので、できれば剣と盾を使う冒険者になりたいと思っています」
まさに、ピンポイントだった。
「それならちょうどいい」
そう言って、俺はダンジョンで見つけた結構立派な剣と丸盾をキリアの前に出してやった。
丸盾はまだよかったが、剣はキリアにはかなり大きく扱いづらそうだった。もう一本ダンジョンで見つけた剣はあるが、大きさ的にはそっちの方が若干大きい。
「キリア、手袋をして、その剣を抜いて片手で持ってみろ。持てないようなら別の剣を用意するから」
キリアが脱いでいた手袋をはめ、鞘から剣を抜いて右手で何とか構えることはできたのだが、手がプルプル震えている。
ちょっとキリアではきついか。
待てよ、
「キリア、いったん剣を置いて、この黒い板を両手を使って折ってみろ」
そう言って、キリアに斬撃武器のスキルブック2つと盾術のスキルブックを渡した。
「これは?」
「おまじないのようなものだ。そいつを壊せば、おまじないが効き始める」
分かったような分からないような顔をしながらも、キリアはスキルブックを1つずつ両手で折っていった。スキルブックは折られるたびに砂のように崩れそのまま消えていった。
キリアは最後まで不思議そうな顔をしていたし、華ちゃん以外みんな不思議そうな顔をしていた。
俺は確認のためキリアを人物鑑定したところ、
『スキル:斬撃武器Lv2、盾術Lv1』となっていた。うまくいったようだ。
「キリア、もう一度その剣を片手で持ってみろ」
さっきうまくいかなかったので、恐る恐るといった感じでキリアが右手で剣を握り、そのまま持ち上げたら、すんなり持ちあがった。片手で構えた剣先はピクリとも動いていない。
「どうだ、良い感じになったろう?」
「は、はい。簡単に剣が持てました。それに凄く軽い。さすがはご主人さま」
「それならいいな。そしたら左手でその丸い盾を持ってみろ」
「はい」
キリアが丸盾の裏側の持ち手に手をかけて盾を構えた。思った通りさまになっている。
「キリア、その盾も重くはないだろ?」
「全然重くないです」
「良し。これなら大丈夫だ。それじゃあ鎧を脱いで、下の上下も着替えてこい」
「はい」
華ちゃん以外相変わらずあっけにとられていた。
盾を置いて剣を鞘に戻し、華ちゃんに革鎧を外すのを手伝ってもらったキリアは脱いだ鎧一式を抱いて2階に上がっていった。剣と盾は居間の隅の壁に立てかけておいた。
5分ほどで、キリアが着替えを済ませて居間に戻ってきて剣と盾を2階に運んだところで、ちょうど、はるかさんが街歩きから帰ってきた。




