第141話 素材補充と経済的屁理屈。
運のいいことに、ガソリンスタンドで軽油をドラム缶5本分買うことができた。1キロリットルだ。軽油はプロパンガスの素材にもなる万能選手だ。
もう一軒ぐらいガソリンスタンドで軽油を買っても良かったが、いつぞやの中古車屋に廃車を頼んでいたのを思い出した。かなり迷惑をかけたハズなので、まだ廃車を置いているようなら高く買い取ろう。
「華ちゃん、ちょっとやり残していた仕事を思い出したから、これから中古車屋にいってくる」
華ちゃんが黙って俺の手を取ったところで俺は例の中古車屋の近くに転移した。
そしたら、懐かしのセダンタイプの中古車がいまだに売れ残っていた。価格は確か12万だったはずだが今は10万になっていた。
無意味に一安心していたら、事務所から例のおっさんが現れた。
「あんた、なかなか現れなかったから、ヤードが廃車で一杯になったじゃないか!」
「申し訳ない。まだ廃車あるかな?」
「移動するにも金がかかるからちゃんと10台ある」
「それじゃあ、1台10万、お詫びに10万付けるから」
「仕方ないな。いちおう、毎度アリー」
ヤードに案内され、前回同様おっさんの目の前で廃車だと言われた車をアイテムボックスに収納した。
「いやー、いつ見てもあんたの手品は凄いねー!」
「でしょう。じゃあ、約束の110万。それじゃあ」
「領収書はよかったんだよな」
「大丈夫」
「毎度アリー!」
「今度いつこられるか分からないから、廃車を取っておかなくて大丈夫だから」
「わかった。大抵、1、2台はあるから、そん時は持っていってくれ」
「了解」
「気を付けて帰れよー」
おじさんが良い笑顔で見送ってくれた。
俺と華ちゃんは転移ではなく普通に歩いて中古車屋を出ていった。
「岩永さん、さっきみたいなのを手品で済ませちゃったんですか?」
「うん、ノリのいい親父だったろ?」
「そう言われれば、そうですね」。華ちゃんが納得したようなしないような顔をしていた。
なにかやましいことをしているのなら別だが、俺の身も心も清廉潔白。手品だろうとスキルだろうと地球は回り続けているんだっちゃ。華ちゃんももっとおおらかにならないと。
ちょっと前に自衛隊の大型トラックと発電機を本能のままにコピーしたせいか、自動車の廃車はほとんど素材ボックスに残っていなかった。危ないところだった。
「これで、こっちでやり残した仕事はなくなった。華ちゃん、どこかいきたいところとか買いたいものはある?」
「部屋の中にも電気が通ったことだし、エヴァたちに勉強机を買ってやりませんか?」
「それもそうだな。この先にインテリヤ専門の店があったはずだから、きっと勉強机も売ってるだろう。勉強机じゃなくても机と椅子は売ってるはずだから、いってみよう」
華ちゃんを連れて、中古車屋の並びの歩道を歩いていったら、すぐに目当てのインテリヤ専門店のビルだった。
「この店には入ったことないんですよね」
「この階には、園芸用品なんかも売っているし、日用雑貨とかいろんなものも売ってるから一種のホームセンターなんだろうな。2階と3階がインテリヤだから上に上がろう」
話をしながらエスカレーターに乗り、俺たちは2階に上がった。
どこら辺に机を売っているのか分からなかったが、インテリヤをいろいろ売っていたのでそういったものを眺めながら歩いていたら、机を売っているコーナーに出た。立派な机から子ども用の学習机まで置いてあったので、そこで机を選ぶことにした。
「エヴァたちは4人で一部屋を使っているから、4つ机を入れたら狭くなりそうだな」
「部屋は余っているのに、どうして4人で一部屋なんですか?」
「最初一人に一部屋ずつ与えたんだが、あの4人が一部屋で十分だと言ってああなった」
「なるほど。
空いた一部屋を勉強部屋にしますか?」
「その方が良いかもな。本棚なんかも置けばそれらしくなるし。そうなると、ある程度大きな机でもよくなるな。かといって、どこかの重役机じゃおかしいから、無難に飾り気のない学習机が一番だな」
「となると、こんな感じの机かな?」
「うん、これで十分だ。
さて、これを買おうと思うが、店員さんがいない。ここで、持ち帰りと言って包んでくれるかな?」
「こういったものは配達しかないかも」
「たしかに、自家用車じゃ運べないものな。
となると配達先が俺のアパートか。面倒だなー」
「コピーしちゃいますか?」
「仕方ないだろ、誰も見ていないようだし、一瞬消えてもすぐ現れるわけだし」
「岩永さんのこの能力だけは秘密にしないといけませんね」
「まあな。
それじゃあ、心で詫びながら、椅子と一緒に収納、アンド、コピーからのオリジナル返還!」
「今のはほんとに一瞬でしたね」
「慣れって恐ろしいよな。
この前も屋敷の改修中、自衛隊の人が重い物を運んでたんで、収納して運んでやったんだが、気付けばアイテムボックスの中にコピーができてた」
「もう、岩永さんたら」
「やっちゃったものは仕方がない。経済学的にはその商品の潜在的消費者が1名減少しただけだから大したことないだろ」
「そうなんですか?」
「いや、ちょっと難しそうな言葉を口にしてみただけだ。中身は全くない。
用事は終わったけれど、これからどうする?」
「勉強机の次は、スタンドかな?」
「確かに。ここの1階でも、電気製品を売ってたと思うから下に下りてみよう」
「はい」
エスカレーターを今度は下って一階にいき、電気製品売り場に回っていって、
「どれでも良さそうだが、ちょっと明るすぎるくらいだな」
「明るさを変えられるものもあるはずですから」
「おっ、これかな? 調光機能付きって書いてある」
「それですね」
「これにするか。いちおう、値段もそこそこだし、聞いたことのあるメーカーだし」
ここでコピーすることも簡単だが、これくらいなら持って帰ることができるから、配送ではなくこの場で箱で渡してくれるだろう。
ということで店員さんを呼んで箱に入った商品を渡してもらった。俺はそれを持ってレジで精算して、人目のなさそうなところでアイテムボックスに収納しておいた。もちろん収納した瞬間コピーしている。しかも3個。自分が怖いぜ。
1つ買っただけで、3個コピーしたわけだが、これだって用途は異世界の子どものためだ。これまでマーケティングの対象になっていない異世界に対してわずかではあるが販路が開けたわけだから、お互いWIN-WINだ。と、意味など全くないが心の中で強弁してやった。




