第140話 軽油買い出し紀行。
久しぶりのソーメンだったが、これまで食べたソーメンの中で一番おいしかった。確かに値段相応の麺だった。子どもたちも含めみんなソーメンを3束分。俺は4束も食べてしまい腹がパンパンになってしまった。しかし、ここでヒールポーションを使ってしまうと、食事を続けるためにクジャクの羽を喉に入れて吐き出していたというローマの貴族みたいになるので、今回は控えておいた。
デザートは何にしようかと思ったが、さっぱり、涼しい系の食事だったので、アイスクリームではないものにしたい。
みんな楽園で二日間過ごしているのでそれなりに楽園で食べていると思うが、俺にとっては久しぶりということで楽園イチゴを出すことにした。前回は一人2粒だったと思うが、今回は一人1粒にした。
小皿の上に乗せた真っ赤な楽園イチゴにフォークを突き刺してかぶりつくと、甘味とわずかな酸味、それにいい香りが口の中いっぱいに広がり、飲み込んだら、すぐにもうひとかじりして、気付けばこぶし大の楽園イチゴを丸ごと食べていた。それにもかかわらず、パンパンだったはずのお腹もちょうどいい具合に落ち着いている。
楽園イチゴを食べると元気が出ると思っていたが、こういった効用もあったようだ。ヒールポーションの効用そっくりだ。楽園イチゴをコピーできるか一度試したことがあるのだが、楽園リンゴ同様コピーできたもののかなり疲れたし、魔力らしきものも吸いだされたので、他にも効用があるのかもしれない。こんど楽園にいったら忘れず補充しておこう。
今日は屋敷も一新されていい一日だった。この日も安眠のため金の錬成はしたが、金のサイコロをちょこまか売る必要ももはやなくなったので、完全に睡眠剤の役割だけになってしまった。お金の事を考えるんだったら、ヒールポーション(極)はさすがに寝る前に簡単に作れるような代物ではないが、アレの2歩くらい手前のヒールポーションを作った方が良いかもしれない。
後日知ったのだが、2階にある俺の部屋には最初からエアコンを付けていたが、他の7部屋にも、壁にエアコン取付用の補強版と室外機パイプ用の孔が空き、部屋の外側には室外機取付用の金具が取り付けられていた。夜、寝苦しいほど暑くなるようなら、エアコンを寝室に付けなくちゃならないな。
翌日。
朝のお務めを果たした俺は、華ちゃんを連れて日本に飛んだ。今日も昨日同様俺のアパートの近くの大型スーパーだ。今日買うのは、まずは洗濯用の液体洗剤と漂白剤。洗濯機用の洗浄剤。そのあとは、台所用具だ。3階に上がれば、それなりに立派な鍋釜フライパンを売っていたはず。
軽油はスーパーでは売っていないので、ガソリンスタンドにいって買えるだけ買ってやろう。同じガソリンスタンドだと大量に売ってくれないかもしれないが、スタンドを梯子すればそれなりの量を手に入れることができるだろう。プロパンガスも欲しいところだが、アレは業者が各家庭に配達するもののようだから諦め、屋敷のプロパンガスをコピーしてやろうと思う。木炭と水もあるからそれでプロパンは負荷なくコピーできるだろう。
華ちゃんとスーパーの中を買い物カートを押して洗剤売り場に回っていき、適当な液体洗剤と漂白剤。洗濯機用の洗浄剤を忘れずカートに中に入れた。
「後なにか買うものがあったっけ?」
「柔軟剤はいいですか?」
「俺は使ったことがないから買わなかったけど、アレってどう?」
「タオルなんかに使えば、フワフワになって気持ちいいんじゃないかな。
わたしも自分で使ったことないので良くは分かりません」
「一応買っておくか」
ということで、お試しでカートに入れてみた。
「こんなところかな」
「そうですね。こんどの洗濯機には乾燥機も付いていますから、洗濯関係はこんなところではないですか」
「じゃあ、ここで買うものは他に?」
「うーん。何もないかも?」
「おっと、忘れるところだった。せっかくの台所だから、ちょっと立派な鍋釜フライパンを買おうと思ってたんだ」
「新しい台所用品て楽しいですよね。ですが釜も買うんですか?」
「釜は言葉のアヤだ。炊飯器は買っておいてもいいかもしれないが、俺が炊く方が早いからいつでもいいや。
鍋とかはここの3階で売ってたから、そっちに回ってみよう」
「はい」
華ちゃんを連れてエスカレーターで3階まで上って、台所用品売り場に回ったら、外国製の結構お高い鍋セットとか、フライパンセットを売っていた。ついでに、キッチンタイマーも売っていたので1つ買っておいた。セミプロのリサには今のところ必要ないかもしれないが、あって悪い物じゃないからな。
そいつらを一揃いずつカートに入れレジで精算して、二人そろってちょっと人目の付かないトイレ近くに移動した。そこで、アイテムボックスに収納し、
「あとは軽油だな。ドラム缶で買いたいところだけど売ってはいないよな。
空のドラム缶をガソリンスタンドに持っていけば売ってくれるだろうから、まずはドラム缶だ。
ホームセンターに売ってればいいが、どうかな。どうせひとっ跳びだからセンターにいってみよう」
「そうですね」
俺たちはスーパーからホームセンターに跳んだ。
ホームセンターの中に入っていき、入り口近くにいた店の人に聞いたところ、ドラム缶は扱っていないと言われてしまった。確かにドラム缶は場所を取る上に、ほとんど需要はないとは思う。そのかわり、ネット通販で購入できると教えてもらった。アパート前に運んでもらうのは、待ち受ける必要があるので面倒だ。
仕方ない。実物があれば簡単にコピーできるが、ドラム缶くらいそんなに複雑ではないので俺が直々作ってやることにした。だいたいの形は想像できるのだが、キャップの形状が想像できない。やはりどこかに実物が欲しい。
ホームセンターの中を華ちゃんを連れて歩きながら『ドラム缶寸法』『ドラム缶口金』などでスマホを使って検索したら、だいたいのことが分かった。世の中便利になったものだ。
いちおうそれらしきものができ上った。こいつをガソリンスタンドに持っていけば一軒当たりドラム缶1本分、200リットルは売ってくれるだろう。
気付けば時計なんかを売ってる一角にいた。ちょうどいい。そこで針の回る壁掛けを1つと、数字だけのデジタル時計を1つ買っておいた。壁掛けは居間や食堂、デジタルは各人の部屋に置いておけばいいと思う。
精算を済ませてホームセンターを後にした俺たちは、ガソリンスタンドを近くで探したのだが、ハンバーガー屋の隣りにガソリンスタンドがあった。
俺たちはガソリンスタンドの表側に回り込んで、その手前でドラム缶をアイテムボックスから取り出し、ガラゴロ言わせながら道の上を転がしてガソリンスタンドに入っていった。
お客さんがきたのだから事務所のような建屋の中からスタンドの人が出てくるかと思ったら、誰も出てこない。
勝手にドラム缶に給油してもいいようだ。これは便利だ。さっそく空いた給油口のある場所までドラム缶を転がしていき、縦にして蓋を取って給油することにした。もちろん給油量は200リットルだ。
給油ノズルをドラム缶に突っ込んでレバーを引きそのままにしていたら、給油が止まった。200リットルドラム缶に入ったらしい。
精算機に万札を3枚ほど入れたら百円玉が2枚返ってきた。
これは便利だ。ちょうど給油中の車もいなくなったので、満杯になったドラム缶の蓋を閉めてカラのドラム缶を同じ場所に置き、再度給油を始めた。
そんなこんなで、5回ほど軽油をドラム缶に詰めて、お金を精算したら、店の中から店員が出てきた。かなり派手なことをしている自覚はあるので、そろそろ引き上げることにした。軽油が一杯のドラム缶は重いので、アイテムボックスに仕舞い、一瞬で空のドラム缶をその場に出して、そいつをガラガラ音を響かせて転がしながらスタンドから歩道に出てやった。店員が見えなくなったところで空ドラム缶を仕舞って、
「一軒で5缶も買えてラッキーだった。これで当分大丈夫だ」
「岩永さん、タンクローリーか何かで軽油が買えたらいいですね」
「建前上、資格がないとあまり多くの軽油は貯蔵できないことになってるから、20キロリットルとか売ってくれないんじゃないか?」
「いっそのこと、防衛省に頼んで、防衛省から売ってもらえばどうでしょう?」
「それはいいな。だけど、さすがに軽油の横流しになるから売ってくれないんじゃないか?」
「それもそうですね」
「今回のことで防衛省へのお礼は、菓子折りだけでは安すぎるから、今度顔を出したら、かなり高級なヒールポーションを持っていってやろう。おそらく手足も生えてくるはずだ」
「岩永さん、そこまでやって大丈夫でしょうか?」
「何かマズいかな?」
「いままで卸していたポーションくらいだと岩永さんにとって負担はないんでしょう?」
「全くないな」
「でも、こんどのポーションはそれなりに大変なんでしょう?」
「といってもちょっとだけな。確かに1000本も作るとなるとかなり疲れるだろうな。
1000本も作れと言われたら断るが、その前に、これはたまたまでき上った最上級のポーションだと言って渡せば、向こうもありがたがるだろうし、同じものを作れとは言わないだろう」
「確かに、それなら大丈夫そうですね」




