第132話 屋敷の現代化改修1
はるかさんの歓迎会の翌日。
俺も含めて大人組3人は相当ワインを飲んだが3人とも二日酔いにはならなかったようだ。よほど良い酒だったのか、俺たち3人が3人とも酒に強かったのかはわからない。少なくとも俺は、日本にいたころ、宅飲みでは350CCの缶ビール2つが精いっぱいだったから、知らぬ間に相当アルコールに強くなった気がする。
俺は約束通り市ヶ谷の防衛省の駐車場に午前8時55分に転移した。
防衛省の駐車場には幌のかかったトラックが1台と、その隣りにD関連室の川村室長以下4名が立っていた。就業時間中のためか、広場に他の人はいなかった。
トラックの運転席には迷彩服を着た自衛隊員が座り、助手席にも迷彩服を着た自衛隊員が乗っていた。トラックの荷台には測量員と測量器材が入っているのだろう。
「おはようございます」
「「おはようございます」」
俺たちがあいさつしてすぐにトラックの助手席側のドアが開いて、中から自衛隊員が俺の方に駆けてきた。
「第1師団第1施設大隊第1施設中隊の有田です」と自己紹介されて、同時に敬礼されたので、
「よろしくお願いします」と、俺。
「はっ!」
「有田一尉、よろしく頼みます」と、川村室長。
「はっ!」
再度敬礼して有田一尉は駆足でトラックに戻り助手席に入った。
「それでは、トラックごと転移します」
川村室長たちが見守る中、俺はトラックと一緒に屋敷の裏庭に転移した。
トラックのキャビンの二人は周りを見回していたが、すぐに有田一尉がトラックから下りて、
「今のがテレポーテーション。ここが異世界、ニューワールドなんですね」
「そういうことになります」
「だいたいの様子は木内さんのレポートにありましたので、さっそく作業を始めます。
屋敷の中も作業しますが、中は土足で大丈夫ですか? レポートでは大丈夫とありましたが」
「もちろん大丈夫です、よろしくお願いします」
「了解しました。
各員、作業開始!」
ばらばらとトラックから自衛隊員が運転手も含め7名ほど、測量器材と一緒に降りてきた。赤白の棒や杭などもそれなりの数トラックから降ろされ、自衛隊員たちがてきぱきと作業を始めた。
俺は邪魔にならないように少し離れて作業を眺めていたら屋敷の中からはるかさんが現れ、有田一尉にあいさつしたあと、いろいろ話をしていた。この敷地と屋敷の改造についてすり合わせているのだろう。
結局屋敷の外回りの測量は30分ほどで終わってしまった。広いと言っても個人の敷地だ。そんなものだろう。
「それでは、屋敷の中を測っていきます」
自衛隊たちはきびきびと屋敷の中に入っていった。はるかさんも自衛隊員たちと一緒に屋敷の中に入っていった。
うちの連中には作業の邪魔にならないよう、居間にまとまっているように言っているので大丈夫だろう。
自衛隊員たちはみんな屋敷に入ったし、確かにトラックの中に人の気配はしない。これ幸いと俺は自衛隊のトラックを収納してコピーしてやった。すぐにオリジナルは元の位置に置いているのでセーフだ。トラックを使って何がしたいわけでもなかったのだが、改造すれば楽しそうだと単純に思ったまでだ。
屋敷の中の測量?も30分ほどで終わり、自衛隊員たち全員が戻ってきて、はるかさんも外に出てきた。はるかさんが自衛隊員たちを見送る中、有田一尉以外の自衛隊員たちはトラックに乗り込んでしまった。
休憩時間には冷たいお茶でも出そうと思っていたのだが、思った以上に手際よく作業が終わってしまった。まさにプロの仕事だった。
有田一尉が俺のところにきて、
「本日の作業は完了しました」
「ご苦労さまです」
「明日、明後日、2日間で作業は確実に完了しますのでご安心ください」
「了解しました」
「それでは、送還お願いします」
そう言って有田一尉は、トラックに駆けていき、はるかさんに敬礼して、助手席に乗り込んだ。
「これから、転移します!」
俺はひとこと断って、きた時同様、トラックと一緒に防衛省の駐車場に転移した。
トラックが発車し、有田一尉がトラックの中から俺に敬礼して、大回りに坂を下って正門から出ていった。施設隊の駐屯地はどこだか聞いていなかったが、駐屯地に帰っていったのだろう。
俺は防衛省専用スマホで、今日の作業が終わったことを、野辺副室長にメールして、屋敷に戻った。時刻はまだ11時前だった。
手持無沙汰だ。居間には誰もいなかった。はるかさんは自室にでも戻ったのだろう。
俺は昼食までCDでも聴いておこうと適当にプレイヤーにCDを突っ込んで、ソファーで休んでいたら、イオナがやってきて、
「ご主人さま、おかえりなさい」
「ただいま」
「お茶をお持ちします」
「いま、食事の手伝いしてたんだろ?」
「はい。手伝いは4人も要らないので」
「そう言えばそうかもな」
「肩でもおもみしましょうか?」
「それはありがたいが、肩は全然凝ってないから大丈夫だ。
イオナ、何か俺に話したいことがあるのか?」
「……。いえ、ありません」
イオナはそう言って居間から駆けて出ていった。
イオナが出ていって、しばらくして華ちゃんが居間にやってきた。
「自衛隊のみなさんの仕事、速かったですね」
「まさにプロだったな。半日も経たず作業が終わるとは思っていなかった。
明日、明後日で確実に作業を終わらせるって話だったよ」
「楽しみですね」
「ネットが使えれば最高なんだがそこまではな」
「本当の第2層が向こうのダンジョンにつながっていたじゃありませんか」
「うん」
「あそこまで電線を伸ばせば、少なくともこっちからは電話をかけたりいろいろなことができるんじゃありませんか?」
「確かに。ただ、黒い板がなかっただろ?」
「そうですね」
「こっちから向こうに電線を出したとして、向こうから見ると、何もないところからいきなり電線が現れることになるだろ?」
「確かにそれはおかしいですものね」
「うん。もし、電線が向こうと繋がるなら、向こうからも信号なり電気が届くわけだから、かなりありがたいよな」
「そうですね」
「明日、明後日と俺は作業を見なくちゃいけないから、明明後日、電線を通せるかどうかだけ確認しにいってみよう」
「今日の午後からでもよくないですか?」
「それもそうか。俺も暇してたところだものな。
昼食が終わったら、着替えていってみよう。あの場所は覚えているからすぐだ」
「はい」




