第131話 歓迎会
華ちゃんたちも風呂から上がり、着替え終わって居間に集合した。
俺たちもこっち用の余所行きに着替えていたのでいつでも歓迎会に出発できるのだが、時刻はまだ4時半辺りだったので、少し時間を潰すことにした。
その間、子どもたちはピアノを弾き始めた。4人が順番だと待ち時間が長くなるので、もう1台ピアノを置いてもいいかもしれない。オリヴィアは別格なので一緒の練習は厳しいかもしれないが、後の3人は似たようなものなので一緒に練習しても問題ないだろう。
この屋敷の居間は相当広いので、グランドピアノを置いても問題ないし、アップライトピアノなら置き放題だ。置き放題はないにしても、あと2、3台は余裕でおける。ということは、もう1台とかケチなことは言わず、もう3台アップライトピアノを置いてしまえばそれで待ち時間解消だ。
オリヴィアがエヴァたちと一緒に練習することになるがそこは我慢させればいいものな。
「華ちゃん、子どもたちがピアノの順番待ちで時間がもったいないから、もう3台ピアノを増やしてしまうか?」
「3台もですか?」
「4台で一緒に練習すれば捗るだろ? オリヴィアには少しレベルの下がる練習になるかもしれないが」
「連弾もできますし、もう1台くらいで十分だと思いますが」
「連弾って?」
「大抵は1台のピアノを2人で弾くことです」
「そうなんだ。それならまず1台増やして様子を見るか。
いくらでもピアノはコピーで増やせるから何台でもいいんだがな。
じゃあ、ピアノを設置! 椅子はあと3個だな。はい、できあがり」
俺と華ちゃんの会話を聞いていたはるかさんが目をむいて、新しいピアノを見ていた。
「善次郎さん、いまピアノをコピーするとか?
その新しいピアノは、コピーしたものなのですか?」
「このことについては報告書に書いてほしくないんですが、たいていのものはコピーできるんですよ。食べ物からこういったピアノも。材料はそれなりにあった方が良いんですけどね」
「すごい。それは錬金術の能力なのですか」
「本当は錬金術だけじゃないんですけどね」
「分かりました。あまり聞かない方が良さそうなので」
「このニューワールドで生活するには便利な能力ですから、本当に助かっています。はっはっは」と、はるかさんに答えて、最後に朗らかに笑ったら、今度は上目遣いで見られてしまった。
「そういうことなので。
2台目のピアノも使っていいぞ。そいつは1台目のピアノと全く同じだから」
「「はい!」」
順番待ちしていた3人のうちのエヴァとキリアが新しいピアノの前に座って一緒に弾き始めた。時々音が外れるようだが、まだ初心者だ。オリヴィアとイオナが今までのピアノで一緒に弾き始めた。オリヴィアがイオナに合わせてちゃんと弾いているので、これでよかったようだ。
時間調整で30分ほどそうしていたが、だいぶ陽も傾いてきたところで、
「戸締りして、出発するぞ!」
「「はーい」」
子どもたちはすぐにピアノから離れて、居間の窓を閉めていった。他の部屋の戸締りは終わっているのでこれで戸締りは完了だ。
「よーし、それじゃあいくぞ」
それだけでみんなの手が俺の両手を持った。
例のレストランの近くに転移して、店の前にいくと、もはや顔見知りの入り口の脇に立ったおっさんに個室に案内された。
ここはリサに任せておけばいいので楽ちんだ。俺の出番は支払いの時だけ。
リサの注文が終わったところで係の女性は部屋を出ていった。
すぐに飲み物がやってきた。華ちゃんと子どもたちにはグラスに入った冷たそうなジュース。俺とはるかさんとリサの前に置かれたグラスにはワインクーラーから取り出した冷たい白ワインが部屋付きの女性によって注がれた。
「それじゃあ、今日ははるかさんの歓迎会だから、まずはみんなグラスを持って。座ったままでいいぞ」
みんなグラスを手にしたところで、
「乾杯!」
「「かんぱーい!」」
全員日本語での乾杯だった。
部屋付きの女性には俺たちが何を言っているのか分からなかったろうが、黙って部屋の隅で控えている。異国人の集まりと思っただろうな。
乾杯を終えたら待っていたように、料理が運びこまれて食事が始まった。
「まずは、いただきます」「「いただきます」」
「乾杯は済ませたから、今度ははるかさんからひとことどうぞ」
「えー。
えへん。木内はるかです。ハルカ・キノウチかな?
それで、日本からやってきて、みなさんと一緒に生活することになりました。仕事は この街のことやこの国?の文化などを調べることです。仲良くしてくださいね」
「「はい!」」子どもたちが、元気にはるかさんのお願いに返事をした。いいぞ。素直なところは実に良い。
日本にいたころの俺は、手元不如意につき、たまに第3のビールの6本パックをスーパーで買う程度だったので、当然ワインの味など全く分からないのだが、不思議なものでみんなと飲んでいるということだけでおいしく感じる。
グラスに注がれたワインが3分の1くらいにまで減るとすかさず部屋付きの女性が注ぎ足してくれる。
王侯貴族とは言えないし、そもそも王侯貴族の生活など知らないが、そんなリッチな気分になる。
「善次郎さんは本当にお金持ちなんですね」と、はるかさん。
「錬金術さまさまですから。
もうご存じでしょうが、この国だかこの世界は金本位制のようですから、個人が金を貯め込んでいるとマズいと思ったもので、先日から投資を始めたんですよ」
「ほう。どういった産業に投資されたんですか?」
「難しいことはさすがにわからないので、商業ギルドに投資しました。ほんの金貨5000枚ですけどね。フォッフォッフォッフォ」
なんだかワインを飲んでいるうちに、自分がいっぱしの資本家になったような気がしてきた。インヴェスターZの活動しててよかった。
今は安定してポーションを売りさばいているが、そろそろ市場は飽和しないのだろうか? こういったものは社会に必須なものだから、この街で飽和してもよその街に流せばいいだけだから、あの程度では飽和するはずないか。かりに市場が飽和して、ポーションが売れなくなったとしても年率5パーセント。年間金貨250枚が寝ていても手に入るわけだ。ウハウハだな。
それに、今となっては日本円でいくらでもものを買うことができる。日本で二束三文で買った商品をこの世界に輸入して売りさばけばそれこそ莫大な富を築けるハズだ。もう少しエヴァが大きくなって簿記やらなにやらマスターし商売に目覚めたら、最終的には日本と異世界をつなぐ超巨大商社イワナガの総支配人にしてやろう。夢は膨らむ。




