第129話 旅行の予約と中華料理。
誤字報告ありがとうございます。
華ちゃんが子どもたちを連れて勉強用の本を探しにいっているあいだ、俺は面白そうなコミックを探すことにした。
特にお目当てのコミックがあったわけではないが、目に付いたコミックをシリーズ買いしておいた。いつもの店員さんだったこともあり、ちょっと意味は違うがスムーズに箱買いできた。
しばらく華ちゃんを待っていたら本を数冊ずつ持った子どもたちを連れて戻ってきたので、コミックと一緒に勘定を済ませておいた。
「童謡の本もあったので買ってきました。国語の勉強にいいかなと思って」
中学生くらいの子に童謡はきついかもしれないが、日本語教育には有効だろう。ピアノもあるしなかなかいい着眼点だ。
「今日から勉強時間を増やしてもいいかもな」
「「はい!」」
「オリヴィアはピアノもちゃんと弾けよ」
「はい!」
「それじゃあ、次は旅行屋にいってみよう。旅行屋は確か駅の方に歩いていった途中で見た気がする」
俺にしては珍しく、思っていたところに旅行屋の看板を見つけた。
店に入ったら、数人の客を窓口の女性が相手にしていた。すぐに「どうぞ」と呼ばれたので、6人でぞろぞろその窓口の前にいき、俺が後ろに5人従えて椅子に座り窓口の女性に旅行の希望を話した。
「来週の金、土、日の2泊3日で熱海の温泉に。大人8人でいきたいんですが」
小学生に見える子もいるが、子どもたちはみんな中学生という設定でいいだろう。
「宿のグレードはいかがしましょう?」
「広い温泉と食事が美味しければ、少々高くても大丈夫です。ホテルというより旅館の方が良いかな」
「それでしたら、こちらの旅館はいかがでしょう?
2泊3日で続き部屋の4人部屋を2つお取りして、32万円でご紹介できます。
食事は朝夕のご提供になります。ここの旅館の食事のおいしさは保証できますよ」
「それはいい。そこでお願いします」
「かしこまりました。
駅前に専用バス乗り場がありますので、旅館からの迎えのバスに乗ってください。昼間バスは1時間ごとに迎えにきます。他のホテルや旅館からも迎えのバスが同じ乗り場から出ますので間違えないようお願いします」
「はい」
「どちらからご出発でしょう?」
「東京駅からの新幹線でお願いします。
混んでますかね?」
「いえ、東京、熱海間ですから問題ないでしょう」
「それじゃあ指定席を3人掛けで6人と2人掛けで2人で」
「旅館のチェックインは2時からですので、12時ごろの新幹線をお取りしましょうか?」
「それでお願いします」
「帰りはどうされます?」
帰りは直接屋敷に帰ってもいいので、
「帰りは適当に帰りますから大丈夫です」
「かしこまりました。お支払いはカードでしょうか?」
「いえ、現金で」
35万ほどをその場で支払い、8人分の新幹線のチケットと旅館の宿泊券、それと駅前周辺の地図を受け取って店を出た。
「旅行、楽しみですね」と、華ちゃん。
「俺も楽しみだ」
子どもたちはあまりよく分かっていないかもしれないが、一度旅行にいけば新幹線がなんたるか、旅館が何たるか、温泉が何たるか理解できるだろう。言い方はアレだが体で覚えるわけだ。
「そろそろ、良い時間だから、昼にしようか。
今日は何にしよう?」
昼はお好み焼でもいいが、広島のお好み焼が食べたいんだよな。ブタたまそばで。この近辺にお好み焼屋あったかな? 見たことないからないんだろうな。
「もと来た道に戻りますが、中華料理はどうでしょう? 広東風の中華料理屋さんがあったはずです」
確かに中華料理屋があったような気がする。
「いいねー、中華料理。人数で丸テーブルを囲んで食べてみたかったんだ。
よし、それでいこう」
「はい」
真面目な中華料理ってかなりの値段がするので、一度は食べてみたいなーと思いつつちゃんとした中華料理を今まで食べたことがなかったのだ。
もと来た道を引き返ししばらくいったら、証券会社の向かいが目当ての中華料理屋さんだった。
「この人数だから個室があれば個室だな」
「ここには個室があったはずです」と華ちゃん。
店に入って、
「個室空いていますか?」と聞いたら、
「はい大丈夫です。6名さまですね」
「はい」
「ではこちらにどうぞ」
受付よこの階段から2階に上り、個室に案内された。部屋の真ん中には真っ白なクロスを敷いた丸テーブル。テーブルの真ん中の回転部分にはクロスはかかっていなかった。
店の人が椅子を引いてくれたので子どもたちは、リサの知っていた高級レストランの時と同じように最初戸惑っていたが、店の人が優しく「お座りください」と言ってくれたので安心して椅子に座った。
みんなが席に着いたところで、
「華ちゃん詳しそうだから、適当に注文してくれるか?」
「はい。
それじゃあ、まずは飲み物から。
岩永さんは、何にします?」
「俺は、そうだな、炭酸水にしておくか」
「子どもたちは?」
子どもたちはそれぞれ好きなジュースを華ちゃんに告げ、最後に華ちゃんが、
「わたしは、何にしようかな。アイスジャスミン茶 かな」
「かしこまりました」
「料理の方は、まずは前菜で、
……」
華ちゃんがどんどん注文して、それを復唱した店の人が部屋から出ていった。
1分もかからず、飲み物が運び込まれ、おそらく手洗い用のウーロン茶のボウルがみんなの前に置かれた。
「そのボウルに入ったお茶は、手を洗うものだから飲んじゃ駄目よ」。ちゃんと華ちゃんが子どもたちに注意してくれた。
飲み物を飲んでいたら、2人の女性がワゴンを押して部屋に入り、テーブルの真ん中に大皿をいったん置いて、その中の前菜を小皿に取り分けて各人の前に置いていった。
「クラゲとチャーシュー、それに蒸し鶏でございます」
店の女性が一礼してワゴンを押して部屋を出ていった。
「食べようか。いただきます」「「いただきます」」
みんなの前にはナプキンと箸と前菜の乗った小皿それに飲み物のグラスが置かれている。みんな箸をとって食べるのだが、箸が俺でも大きく感じるくらいだったので、子どもたちには少し扱いづらかったようだ。
すかさず華ちゃんが、テーブルの上の呼び鈴を鳴らして、店の人を呼び、子どもたち用にナイフとフォークを用意してくれるよう頼んだ。
これも1分もかからず届けられ、子どもたちもフォークで前菜を突き刺して食べ始めた。
「何だか変わった食べ物」
「そいつはクラゲだ。コリコリして歯触りが良いだろ?」
「はい。変わった食べ物だけどおいしい」
「このハムみたいなのは甘くておいしいよ」「鶏肉も柔らかくておいしい。かかっているソースは何だろう。変わった味だけど」
今日出てくる料理は子どもたちにとって初めてのものだろうし、俺にとっても初めてのものがあるだろう。
前菜を食べ終わる前に部屋の扉が開いて次の料理が運び込まれた。これも前菜の時と同じように取り分けられたが取り皿ではなく深めの皿に取り分けられ、各自の前に置かれた。
「ふかひれと海の幸のスープでございます」
店の人が一礼して部屋を出ていった。
一見太めの春雨に見える透明で薄茶色のふかひれの他、エビとホタテが入っているようだ。
次に運び込まれたのは、北京ダック。店の人がアヒルの肉と野菜を小麦粉で作った皮に置いて、その上からタレをかけ、手際よくクルクル巻いていく。各人に2つずつ行き渡ったところで店の人はそれまでの小皿などを回収して退場した。
「大海老のチリソース煮でございます」
……。
「なまこのオイスターソース煮でございます」
……。
さすがの俺もそろそろ腹いっぱいになってきた。子どもたちは出されたものはきっちり残さず食べているのでもう腹がパンパンだろう。
「デザートのライチーシャーベットでございます」
この選択はナイスだ。これなら最後まで子どもたちも食べることができるだろう。
「「ごちそうさまでした」」
いやー、おいしゅうございました。
支払いは、もちろん結構お高うございました。
作者は広島旧市内出身なんですが、作者の言う「ブタたまそば」は、今はというか昔からか知りませんが「肉玉そば」とか言うんですね。




