第126話 夕食後
今日の夕食はみんな蜘蛛を食べるのに夢中で和やかな食事という訳にはいかなかったが、明日は例のレストランで歓迎会だから問題ないだろう。
蜘蛛の甘露煮の味が濃かったので、食後のデザートは、先日焼き肉屋でコピーしたモモのシャーベットをさっそく出すことにした。シャーベットはこれ一種類しかないので出すのは面倒がない。
「今日のデザートは、蜘蛛の味が少し濃かったから、この前食べたシャーベットだ。小皿とスプーンを持ってきてくれ」
「「はーい」」
子どもたちがわれ先にと台所に駆けていき、小皿とスプーンを持ってきて各自の前に置いていった。
俺は皿の上にシャーベットを出していく。
「「冷たくておいしー」」「「ふふ。ふふふ」」
「善次郎さん、シャーベットまで」と、はるかさん。
まだまだだが、食べ物のレパートリーはそれなりに豊富になってきているからな。
お好み焼とかたこ焼きとかそっち系もコピーしたいし、牛丼とか親子丼とかあっち系もコピーしたい。夢が膨らむなー。これからは積極的に食べ歩いてレパートリーを増やしていくぞ!
しまったー! さっきの蜘蛛の甘露煮をコピーしとけばよかった。さすがに毎日食べられるようなものではないが、年に数回は食べたい味だな。
夕食の片づけが終わったところで、華ちゃんとリサがはるかさんを連れて風呂に入った。
窓を閉め切ってエアコンを点けて、俺と子どもたちでCDを聞いていた居間に風呂から上がった3人が入ってきた。3人とも華ちゃんのヘアードライヤー魔法のおかげか髪の毛はもう乾いていた。勉強道具は居間の棚に置いているので、これから国語の勉強時間だ。
華ちゃんを教師として30分ほど国語のお勉強をしたリサと4人の子どもたちだが、今日はいつも以上に気合が入りなおかつ発音が流ちょうになってきたような気がする。先週は日本にいって買い物もしたし焼肉も食べたから、一皮むけたのかもしれない。
勉強時間の間、はるかさんは子どもたちとリサの日本語の発音に驚いていた。俺の英語の発音は中高6年間血のにじむような努力を重ねたものだが、ほんの1週間ほど、それも1日30分の日本語の勉強に負けていると胸を張って言える。
「今日もご苦労さま。
部屋の中も涼しいから、ケーキにするか」
「「はーい」」「はい」
子どもたちとリサは台所に急いでいった。
10分ほどで、お茶の準備が終わったようで、ワゴンに乗せたお茶とケーキ用の取り皿、それにナイフとフォークとスプーンが運ばれてきた。ソファーの真ん中に置かれたテーブルの上に手際よく並べられていく。
居間のソファーは誰がどこに座るという決まりはないのだが、大抵俺の近くにイオナが座っている。ケーキやアイスの順番はいつも最後の方だから、順番を早くしたいという訳でもないようだ。
うちのみんなは次に何を食べるか決めているようなのですぐに望みのケーキを出すことができた。今日はお客さまのはるかさんにパンフレットを渡しておいた。はるかさんがケーキを選んでいるあいだに、みんなの前の皿にケーキを乗せ終わった。
「わたしは、えーと、イチゴのタルトで」
「どうぞ」
2秒ほどで、はるかさんの前に置かれた取り皿の上に真っ赤なイチゴがたくさん乗ったタルトを乗っけてやった。
「「いただきます」」
俺の食べているのは何の飾りもないシンプルなあっさり系でレアチーズだ。一番初めに食べ終えた俺は、はるかさんの食べている見事に赤いイチゴの乗ったタルトを見ていたら、いいことを思いついた。
楽園イチゴを普通のイチゴの代わりにケーキに乗っけたらどうだろう。もちろん楽園イチゴは大きすぎるので適当にスライスする必要があるが、かなり美味しいケーキができ上るんじゃないか? しかも食べただけで体がリフレッシュする。
今日は止めておくが、次回みんなに出してやろう。きっとみんな驚くぞ。
ケーキを食べているあいだに俺はリサに、明日はるかさんを街中に案内することを頼んでおいた。
「かしこまりました。お任せください」
みんながケーキを食べ終え、後片付けが終わったところで、歯を磨いて寝るため各人洗面所に移動していった。洗面所はトイレの隣りで、水の入った樽が二つと、ひしゃくが置いてあり、顔を洗う時には樽からひしゃくで洗面器に水を入れ、歯を磨くときには柄杓でコップに水を入れて使う。
樽の水は子どもたちが手の空いたときに井戸から汲んできている。樽の底の方まで水を使ってしまうとひしゃくですくいづらくなるので、子どもたち二人がかり樽を持ち上げて残った水で中を軽く洗って、その水を洗面台の流しに流し、樽が一杯になるまで井戸から水を汲んでくることになっている。重労働ではあるよな。雨の日だってあるし。そんな日は俺がちょっとだけ手伝うこともあるけどな。
洗面所の棚の上には各自の歯磨きセットとタオルが置いてある。華ちゃんがはるかさんを連れていったから、そこら辺の割り振りは適当にしてくれるだろう。
俺は居間のエアコンを切って歯を磨いた後、自分の部屋に戻って、ここのところ飛び飛びになりがちだった金の錬成をしてぐっすり眠った。




