第124話 街歩き3。将来の希望
午後から俺は、はるかさんを連れて図書館にいき、そのあと近くの市役所を紹介した。市庁舎については、ここが市庁舎だと教え、中には入らない方が良いと教えておいた。
理由を聞かれたので、訳の分からない人間がうろうろしてたら奇異な目で見られるから。と、説明したところ、うろうろしたことがあるんですね? と言って笑われた。
「善次郎さん、冒険者ギルドにいってみたいんですが」
「良いですよ。
そうだ、これが冒険者ギルドのギルド証」
俺は金色に輝く冒険者証をアイテムボックスから取り出してはるかさんに見せた。
「金色なんですね」
「Aランクですから」
「ほかのランクのギルド証はやはりこれとは違うんですか?」
「最初のランクはFで銅色、飛ばして、Bランクが銀色で、Aランクがこれです」
「飛ばしてというのは?」
「FランクからいきなりBランクになったもので途中は知らないんです」
俺も、これが言いたかったんだよな。華ちゃんさまさまだ。
「三千院さんはFランクからAランクにいきなり、と、うかがっていましたが、善次郎さんも相当なものなのですね」
「それほどでも。
そろそろ、冒険者ギルドにいってみましょうか。
ここからなら何とか歩いていけるはずだけど、面倒なので転移で」
はるかさんが俺の手を取ったところで、冒険者ギルドの横の小路に転移した。
表に回って、
「ここが冒険者ギルドです」
「想像していた冒険者ギルドそのままです」
確かに、そういった感じがする。
二人してギルドのホールに入っていった。ホールの中には、いつも通り何をしているのか分からないような連中がそれなりの数たむろしていた。
「せっかく冒険者ギルドにきたから集金してこよう。
はるかさん、ここの売店にもポーションを卸しているので、来たついでだから集金してきます」
売店のおばちゃんがすぐに俺を見つけて、
「ご苦労さま。これからもお願いね」そう言って、ずっしり重たそうな布袋を渡してくれた。
俺が袋の中の硬貨の枚数を確認もせずにアイテムボックスに仕舞ったのでおばちゃんが、
「中身を見なくていいのかい?」と、聞いてきたので、
「袋を見ただけで分かるんですよ」と、答えて、おばさんが差し出した受け取りにサインしておいた。
見なくてもある程度の枚数はなんとなく分かるのだが、枚数があまり多いと正確には分からない。その代わりアイテムボックスの中に入れてしまえば、袋の中に入っていようがいまいがすぐに正確な枚数が分かる。まさにアイテムボックス、レベルマックスさまさまだ。
はるかさんは、俺がおばちゃんと話をしているあいだ興味深そうに売店の商品を眺めていたが、俺の用事が終わったのに気づいてすぐに俺のところにやってきた。
「ここで売っているのはポーションが主なんですね」
「ケガの多い商売だからでしょうね」
「なるほど。
それはそうと、わたしでも冒険者に成れますか?」
「だれでも成れますよ。そこの窓口にいってひとこと言っただけで冒険者に成れました。俺の場合は歳がいってた関係で少しだけ奇異な目で見られましたがね。
はるかさんも冒険者になりますか?」
「いえ、それはさすがに遠慮しておきます」
「そうですか。
ここはこんなところですね。あと、この街の名まえはバレンって言うんですが、街の北にバレンダンジョンというダンジョンがあってその近くにここの支部が建ってるんです。
バレンダンジョンは一般に開放されているので、かなりの数の冒険者が出入りしてるんですよ。わたしでは詳しいことは分かりませんが、この街の経済の一部に成ってるんじゃないかな」
「日本にできたダンジョンもそのうち開放されるとか聞きますが大丈夫でしょうか?」
「最初の冒険者次第かな、って思っています。最初の冒険者で死傷者が沢山でると規制も相当厳しくなるでしょうし、そうなるとダンジョンの中で活動しづらくなる」
「なるほど」
その後、俺の知っているところを一通り案内したが、基本的には転移による点と点の移動になるので、屋敷からの道順は全く分からない。そもそも俺自身屋敷の門からまともに歩いて外に出たのは一度もないので仕方ない。
俺がはるかさんにつきっ切りでいるわけにもいかないし、放りっぱなしでは、はるかさんの調査活動に支障をきたす。
そうだ! 明日はリサに言って、はるかさんを連れて街の案内をさせよう。昼食は二人だけ外食で、残りの俺たちは屋敷でハンバーガーか何かでいいだろう。夕食は歓迎会を兼ねていつもの高級レストランでいいしな。
「はるかさん、転移で移動してたから道が分からなかったはずなので、明日はリサを案内に着けるからそれで街の中を見て回ってください」
「ありがとうございます」
「まだ早いけど、そろそろ帰りましょうか」
「はい」
俺たちは居間に転移で現れた。
ピアノを見ると華ちゃんが横に立ってオリヴィアが椅子に座って弾いている。初歩的な曲なのかもしれないが結構うまいんじゃないか?
俺たちが帰ったことに気づいたオリヴィアは演奏を止めたので、
「続けてくれていいからな。オリヴィア、結構うまいじゃないか」
「他の子もそれなりですが、オリヴィアは特に才能あるようです」と、華ちゃん。天才の華ちゃんがそう言うのならかなりの才能かもしれない。
「それなら、その才能を伸ばしたいものだな」
「そうですね。空いている時間はピアノに向かっていた方が良いかもしれません」
「となると、ピアノが1台じゃ足りなくなるな」
「ピアノは1台でもいいかもしれませんが、難しい曲をアップライトで弾くのは物理的に難しいので、もう少しオリヴィアが上手くなったら、グランドに代えた方がいいかも」
「必要になったらいつでも言ってくれ。そしたら用意する。
ほかの子たちにもそれぞれ好きなことをさせてやりたいが、こういったものは機会があって初めて向き不向きがわかるものだから難しいよな。
子どもたちに何か希望があれば逆に簡単だが。
エヴァは何かやってみたいという希望はあるかい?」
「成人したら、商人になってお金をどんどん儲けたいなって思います。
ご主人さまくらいお金持ちになったら、ご主人さまのようにたくさんの子どもたちを奴隷商会から買ってきたいと思っています」
なんだ、考えてるじゃないか。しかも、ちゃんとした理由まである。エヴァはもちろん俺の娘ではないが、何だか嬉しくなってきた。
「じゃあ、キリアの希望は?」
「わたしは、亡くなった両親が冒険者だったので、両親のかたき討ちというわけじゃないけど冒険者になりたいと思っています。そしたら、ご主人さまの助けにもなるし」
キリアは両親をダンジョンか何かで亡くしていたのか。子どもたちの過去にこれまで触れたことはないしこれからも触れようとは思わないが、それぞれ思いはあるんだろうな。そういったなかででも俺のことまで考えてくれていたのか。
「それなら、少しずつ体を鍛えたほうがいいな。そのうち、ダンジョンに連れていってやる。冒険者の登録はその時やってしまおう」
「はい!」
キリアを連れてダンジョンにいってやろう。いまから慣れていけばそれなりの冒険者に成れるだろう。それに、スキルブックもあることだしな。
「じゃあ、イオナは?」
「わたしは、なんでもいいからご主人さまのお役に立つ仕事がしたいです!」
嬉しいことを言ってくれる。イオナは俺が脚を治してやったことを恩に感じているんだろう。
「そうか。ありがとう。俺はイオナがやりたい仕事を見つけてくれればそれだけでも嬉しいんだけどな。そういった仕事で成功した姿を俺に見せてくれれば十分だから」
「わかりました。何か自分にできることを見つけて、ご主人さまに自慢できる自分になります!」




