第121話 焼肉屋2。週明けの会議3
ちょっとお高い焼き肉屋の個室で俺たちは焼肉パーティーだ。
「みんな、肉はすぐに焼けるからどんどん食べて、途切れないように網の上に乗っけていけよ」
「「はい」」
俺もどんどん食べていった。
カルビも最高だ。厚みのあるカルビだったので、真ん中あたり、熱は通っていたがまだ少し赤かった。そこがまた柔らかくて肉の甘い味がしてよかった。
タンは最初レモン酢のタレで食べたがプリプリ感が堪らん。次に普通の醤油タレで食べたがこっちもいい。
その代わりミノは俺にとって歯ごたえがありすぎた。ホルモンを噛んでたほうがいいな。これはタダの偏見だろう。華ちゃんもミノをおいしそうに食べてるもんな。
子どもたちとリサは最初俺と華ちゃんを見ながら似たような肉を同じようなタレで食べていた。
5人とも黙って肉を食べているのだが、顔が真剣だ。
「無くなれば注文するから、どんどん食べていいんだからな」
そう言ってやったら、顔の緊張感が少し薄れたようだ。
俺の方の網は俺と華ちゃん、それにイオナの3人、リサの方の網にはリサを含めて残りの4人。どうしてもイオナが遠慮がちなので、俺が時々イオナの取り皿に肉をとって入れてやっている。
「飲み物と肉の追加をしよう。
肉はなにが食べたい?」
「「カルビ!」」「レバー!」
みんな肉の名まえをちゃんと覚えていたようだ。俺はホルモンが一番だが、みんなの一番人気はカルビだったようだ。
呼び鈴を鳴らして、女性店員が来たところで、俺がまずビールを頼み、華ちゃんがジンジャーエールを頼んだ後、5人がそれぞれ日本語で飲みたい飲み物を注文した。
「肉の追加で、カルビを4人前、レバーとホルモンを1人前お願いします」
「かしこまりました」
注文を復唱して女性店員は部屋を出ていき、すぐに注文した飲み物と肉の入った皿を運んできた。その際、網の上に乗っていた肉をいったん取り皿に移して網を変え、空になった皿やグラスも片付けてくれた。
新しくやってきた肉はさすがに消費速度が落ちてきたので、ちょうどいい量だったようだ。
最後にもう一度店員を呼んでデザートにモモのシャーベットを全員分頼んだ。アイスにはないさっぱりした甘酸っぱさが食後にぴったりだった。
焼肉はコピーしなかったがこの桃のシャーベットはコピーしている。アイスクリームに飽きたらシャーベットを出してもいいからな。
「「おいしかったー」」「「お腹いっぱいでもうダメ」」
みんな幸せそうな顔をしてお腹をさすっている。
お会計は10万ほどだったが十分満足できた。帰り際、レジでチューインガムを貰ったが、いきなりガムを食べさせるのはマズそうだったので俺が預かっておいた。
店を出て、いまいる商業ビルの中を見せてやりたかったが、子どもたちをこれ以上歩かせることは無理そうだったので屋敷に帰ることにした。
人目のあまりないところで転移しようと近くの階段を見つけたところ思った通り人がいなかったので、みんなに手を取らせて屋敷の居間に転移した。
「着替えたら、みんな歯を磨いて寝た方がいいな」
「「はい」」
俺も、ビールが回ったようで早々に自室に戻って、日課の金づくりを忘れて眠ってしまった。
翌日。
今日は防衛省のD関連本部にポーションを卸す日なので、朝の日課を終えた俺は、アイテムボックスの中のポーションの在庫を確認し、華ちゃんを連れて防衛省の例の会議室に予定の5分前、9時55分に転移した。ポーションは前回とちがい100本ずつ段ボール箱に入れている。200本だと一箱当たり30キロを超えるので扱いが大変そうだったためである。その辺りは業者としての心配りである。
今日から木内はるかさんが屋敷にくることは数日前からみんなに伝えている。リサは今日の昼食から8人分用意することになる。
俺たちが会議室に現れたら、D対策室の4人は前回同様席に着いており、他には理研の木内女史、はるかさんだけだった。
はるかさんの今日の格好はスーツ姿ではなく向こうですぐ活動できるような白のシャツに灰色のスラックスといった軽装だった。履いている靴もこの前は革靴だったと思うが今日は履きやすそうなスニーカーだ。装身具の類はこの前と同じで腕時計だけのようだ。肩まで髪の毛があったはずだが、今日は襟足が出ており、手入れが簡単になるよう配慮したのだろう。
胸の装甲は知的とかリケジョっぽいというと完全な偏見だが、動き易そうではあった。これもマズいか?
はるかさんの席の後ろの壁際には大き目のスーツケースが一つ置いてあった。いくら量があっても俺にとっては同じだが、ここまで持ってくるのは大変だったろう。
例のごとく全員が立ち上がってあいさつしてくれたので俺たちも軽く頭を下げておいた。敬礼する人が混じっていると「おはようございます」というのも変な感じがして、何となくあいさつがしづらい。
全員が椅子に座り直したところで、川村室長。
「まず、ヒールポーション、スタミナポーションですが、防衛医大病院に入院中でかつ重篤な患者は提供していただいたポーションのおかげで全員回復しております。厚労省に出しゃばられては情報の統制もあやふやですし、薬事法など持ちだされて利権がらみでポーションを潰しに来られても困りますので、都内の一部の公立病院に防衛医大発の新薬の臨床試験依頼の名目で提供を始めています。
すでに、身元のはっきりしている有力議員数名にはこちらで接触していますので、何とでもなるでしょう」
この辺りは大人の話だな。おそらく、ポーションをエサに有力議員を抱き込んだのだろう。
「自衛隊の動きですが、自衛隊によるピラミッド内の探索は終了し、現在はピラミッドの封鎖のため小隊規模でピラミッドを囲んでいる状況です。これも来週には分隊規模に縮小し、何もなければ、来月中に地元警察と交代することになっています。
以上です」
「わたしの方からは報告することが一点あります。
三千院さんと一緒に拉致召喚されていた田原一葉さんですが、拉致先から脱走しうちに逃げ込んできたところを保護し、昨日彼女の日本での住所近くに送りました」
「そのようなことが。
了解しました。失踪事件については防衛省の方から警察庁に一度申し入れを行っていますが、再度こちらから警察庁に連絡しておきます。報道関係への公表はしないようにも重ねて依頼しておきます。
残りの拉致被害者1名については?」
「田原さん本人には聞いていませんが、田原さんが一人だけで逃げてきたところを見ると、拉致先になじんでいるのかもしれません」
「なるほど。
田原さんについては、直接接触することはありませんが、こちらの方でも注意しておきます」
「よろしくお願いします。
それと、もう少し前にお話ししていた方が良かったのですが、すっかり失念してしまって」
「どういったお話でしょう?」
「これはわたしの推測なんですが。……」
そこで俺は、ダンジョンに侵入する人が多くなればそれに比例してモンスターの出現頻度が上がるのではないかという自説を披露した。
「なるほど。お話は承りました。今後ダンジョンを一般開放できるかどうか、するかどうかを判断する前に検証した方が良さそうですね。
これまで、ダンジョンへの自衛隊の侵入人数は把握していますし、モンスターとの交戦回数も記録されていますので、ある程度の相関があれば統計的に検証することも可能でしょう」
なるほど、自衛隊ならそういった事柄も簡単に検証できそうだ。
「それでは、ポーションを卸していきましょう。今日はご依頼通りヒールポーションとスタミナポーション各2000本です。今回は100本ずつ段ボール箱に詰めています」
ヒールポーションとスタミナポーション、100本入りの段ボール箱各20箱、計40箱をアイテムボックスから順次取り出していき、8名の運搬係が、会議室内に運んできた4台のコンテナ付き台車の中に積み込んでいった。積み込み終わった運搬係8名は一礼して会議室から出ていった。
想定している焼肉屋ですが、作者は値段設定に恐れをなして一度も中に入ったことはありません。メニューなどを参考に適当にでっち上げた架空の焼肉屋なのでご了承ください。
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