第120話 焼肉屋1
デパートを出たところ、さすがに荷物が多いので、目立たないよう順番に一人ずつの荷物をアイテムボックスに収納していった。駅中を横断する時にはみんなの荷物は無くなっていた。
「駅中はデパートの中以上に人が多いから、迷子になるなよ」
「「はい」」
華ちゃんを先頭に子どもたち4人、その後俺とリサが歩いている。
駅中を通り過ぎて歩道を回り込んだ先の商業ビルの中に入り、出入り口脇のエレベーターの前に並んだ。
外国人、しかも可愛らしい女の子が4人と美女、それに日本人美少女がエレベーターに並んだので少し注目されてしまった。俺はその6人とは無関係の人と思われているような気がしなくもないが、横から見ればどう見ても無関係だものな。
いちど上から下がって客を降ろしたエレベーターが、そのまま地下階に下がっていき、しばらく待って引き返してきたところで俺たちは他の客と一緒にエレベーターに乗り込んだ。
ドアの反対側は外の景色が見えるよう、エレベーターもビルの壁もガラスになっているので、エレベーターが動き始めると、子どもたちは何も言わず口を開けて外を眺めていた。
すぐにエレベーターは目的の階についたので、一緒に降り、勝手知ったる華ちゃんに先導されてちょっとお高い焼き肉屋に俺たちは到着した。
入り口を入ったところの受付で、
「個室空いていますか?」と、華ちゃんが聞いてくれた。
「はい。大丈夫です。6名様ですね?」と、和服を着た受付の女性。
おいおい、俺が員数に入ってないんじゃないか!
「いえ、7名でお願いします」
「失礼しました。7名様こちらにどうぞ」
店の中に通され、少し奥まったところにあった個室に案内された。まだ時間帯が早いせいか店の中にはあまり客は入っていなかった。実際客が少ないのは時間帯のせいか価格帯のせいか。おそらく後者の理由が大きいと思う。
なーんとなれば、この焼き肉屋にやってくる前にちらっと見えたほかの店の中には結構客が入っていたからだ。あまり意味のある才能ではないかもしれないし、就職試験なんかで特技と言えるようなものではないが、俺はそういうところダケは目ざといのだ。
部屋の中は長四角のテーブルがあり、そのテーブルを囲んで長い方の辺に4人ずつ向かい合って座る8人部屋だった。ということなので、屋敷の食堂と同じ並びで席に着いた。
「ご注文がお決まりになりましたら、そちらの呼び鈴を鳴らして下さい」
そう言って案内してくれた受付の女性は、テーブルに置いてあった8人分の箸とナプキン、それに紙エプロンのうち空いた席のものを持って部屋を出ていった。
俺は、テーブルの上に置いてあった紙エプロンを付けながら、
「みんな、油で服が汚れるから、この紙のエプロンを着けた方がいいぞ」と教えてやり、華ちゃんに、
「俺は、ここは初めてだから、慣れていそうな華ちゃんが適当に注文してくれ」
「はい」
「先に飲み物だな。俺はせっかくだし、久しぶりにビールにしよう。
リサも成人してるんだからビールを飲んでもいいんだからな」
「わたしはお酒は結構です」
「好きにしてくれ。俺は瓶ビール。
そうそう、華ちゃん、俺にはセンマイがあったらセンマイを頼む。それと、ホルモンは外さないでくれ。ホルモンあるよな?」
「どちらもあります」
華ちゃんは、その後すぐに呼び鈴を鳴らした。
黒い制服を着た女性店員がすぐに現れた。店員に華ちゃんが注文を伝えていく。
「まずは瓶ビール」と華ちゃん。
「グラスはいくつお持ちしましょう?」
「グラスは1つで」と俺。
「はい。銘柄は、キリ〇とア〇ヒがありますが」
「キリ〇で」これも俺が答えた。あたりまえか。
「次はジュースで、オレンジジュースの人?」と華ちゃん。
2人が手を挙げた。
「オレンジジュースを3つ」
「はい」
「リンゴジュースの人」
2人が手を挙げた。
「リンゴジュースを2つ」
「わたしはコーラで」とリサ。これで全員の飲み物が決まった。
「あと、センマイを一つ。これはビールと一緒にお願いします」
「はい」
店員の女性がメモを取る中、華ちゃんが肉の注文を続けていく。カルビだけ人数分頼みあとは4人前ずつ頼んだようだ。ホルモンも4人前だった。俺は焼肉ではホルモン、カルビ、タンの順に大好きなんだがな。
最後に華ちゃんが野菜サラダとサンチュを頼み、
「そんなところでお願いします」
女性店員はメモを見ながら注文を復唱して部屋を出ていった。
すぐに女性店員ともう一人の女性店員が飲み物と俺のセンマイを運んできてくれて、俺の前に置いたグラスにビールを注ぎ、瓶をテーブルの上に置いて部屋を出ていった。
「それじゃあ、まずはカンパイだ。食事のときは『いただきます』だが、こういう時は『カンパイ』だ。『カンパーイ』!」
俺は意図して日本語で『カンパーイ』といったのだが、みんなちゃんと「「カンパーイ」」と言ってくれた。いいじゃないか。乾杯の時、華ちゃんだけが俺のグラスに自分のグラスを当ててくれた。
「カンパイのときはいま俺と華ちゃんがやったようにお互いのグラスを軽く当てるんだ。間違っても思いっきりぶつけるなよ」
「「はい!」」
「それは次回からでいいからな」
ビールの入ったグラスを片手に『カンパイ』について簡単に説明したあと、一口だけビールを飲んだ。
久しぶりのビールだったせいか、それだけで思いのほかキックー! うまい!
センマイを箸で摘まんでカラシ酢味噌をちょっとつけて口に運ぶ。うんまーーい!
俺のグラスの中のビールが3分の1くらいになったところで、向かいに座る華ちゃんビールを注いでくれた。
「おーと、華ちゃんありがとう」
「どういたしまして」
2杯目のビールを飲んでいたら、先ほどの女性店員2人が野菜サラダを人数分運んできて各人の前に置いていったん部屋を出ていき、すぐに肉の皿やタレの入った小皿を運んできてテーブルの上に並べていった。一皿に乗っている肉の枚数は少ないのだが1枚1枚は結構大きい。
もちろん緑の葉っぱのサンチュも置かれている。
最後にテーブルに2カ所あるコンロの上に油を塗った網を置いて火を点け、
「火の強さはこちらのつまみで調節してください」と言って女性店員2人は部屋を出ていこうとしたので、
「ビールもう1本お願いします」と言っておいた。
「はい、すぐにお持ちいたします」と言って二人は部屋を出ていった。
「サー、どんどん焼くぞー!」
俺は肉の皿の上に乗っていたトングで肉を近くの網の上に乗せていった。もう一つの網にはリサがトングを使って肉を乗せていった。華ちゃんがリサに肉の種類を教えてやっていた。子どもたちも聞いているのですぐに覚えるだろう。
「肉を食べる前に野菜を食べると胃にやさしいそうだから、まずは野菜サラダから食べよう」
すぐにビールがやって来たので瓶に残っていたビールをグラスに注いで、空き瓶は持っていってもらった。
焼肉の方は、まずは俺用にホルモンだ。その後、適当にカルビを網の上に乗せ、空いたところにタンを乗せた。
リサを見ると、肉の種類を万遍なく網の上に乗っけている。
肉に少し火が通ったところで裏返していく。
「そろそろいいかな。お好みのタレを付けて食べればいいぞ。
それと、タレを付けた後でそこにある青い葉っぱに包んで食べてもおいしいぞ」
俺は、そうは言ったが、自分ではようやく焼けたホルモンをタレにつけてそのまま口に運んだ。
ウンマイ! ホルモンだから口の中に肉汁が広がるわけでも、肉の味がするわけでもないが、数年ぶりだからという以上のうまさがあった。




