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岩永善次郎、異世界と現代日本を行き来する  作者: 山口遊子


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第108話 QOL(クオリティ・オブ・ライフ)3


 ピアノも注文したし、ついでに、うちの近くにできたというピラミッドを見にいってみるか。


 そう思い立った俺は、わき道に入ってピラミッドの出現した近所の公園近くに転移した。


 公園の前の道路はかなり広い道なのだが、公園側の1車線は自衛隊の車両で埋まっていた。


 歩道橋に上って公園の中を見ると、並んだ立ち木の向うに金色のピラミッドの上の方だけが見えた。思った以上に小さい。それでも十分目立っているので、そこにダンジョンの出入り口があることが一目瞭然なのは親切仕様だ。


 公園の中にも自衛隊の車両が数多く入っているしテントなども設営されている。公園の中の通路は以前は通勤通学の人が行き来していたが、今は人の行き来はないように見える。


 歩道橋を下りて公園の入り口に回ったら、やっぱり公園は立ち入り禁止にされていた。自衛隊の車両も多いから、ダンジョンどうのという前に、一般人がウロチョロできるような雰囲気は全くない。


 俺自身は今や防衛省の職員なので立ち入り禁止の公園内に入ってもいいかもしれないが、俺が防衛省の職員であることを示すものは今のところ何もない。何か持っていたとしても、本社の社員が、勝手に子会社に入り込んでいいはずはないので無理だろうな。


 今日はこんなところか。


 そろそろ昼だし、昼食どうするか何も言わずに屋敷を出ているので、俺の分まで用意されているはずだ。屋敷に帰って昼メシにしよう。



 俺が屋敷の居間に転移したら、誰もいなかった。あれっ? と思って食堂にいったらみんな料理を前にして座っていた。俺のことを待っていてくれてたようだ。


「「ご主人さま、お帰りなさいませ」」「岩永さん、お帰りなさい」


「待たせていたようで悪かったな。さっそく食事を始めよう。いただきます」


「「いただきます」」


 俺は手を洗っていなかったことを思い出したので、温かい濡れタオルを錬金工房で作ってそれをお絞りにして手を拭いた。あらためて『いただきます』



「だいぶ気温が上がってきたからエアコンを点けるか。

 扉を閉めて、外窓を閉めた方がいいな。暗くなるからスタンドも点灯しよう」


 子どもたちがてきぱきと扉を閉め、板でできた外窓も閉めた。部屋のスタンドライトは華ちゃんが点けた。俺は壁にかけられたエアコンのコントローラーを操作して設定温度26度の冷房でエアコンを起動した。


 最初少ししか風が出ていなかったがそのうち勢いよく涼しい風がテーブルの上に吹き出してきた。


「ふー、すずしー」「ほんとだね」「きもちいいー」「……」


 食堂にはエアコンがあった方がいいよな。



 食事しながら、


「そう言えば華ちゃん。華ちゃんはピアノはどうだい?」と、華ちゃんにピアノの話を振ってみた。


「わたしは幼稚園から小学校の低学年まで習っていたんですが、3年生になって水泳を始めてそれでピアノは止めてしまいました。

 ピアノがどうしました?」


 てっきり華ちゃんはピアノを弾けるものと思ってピアノを買ったのだが、ちょっと言い出しにくくなってしまった。


「俺はピアノを習ったことはないんだが、ちょっとだけ弾けるんで自慢したかっただけだ」


「どんな曲が弾けるんですか?」


「ゴジラのテーマ。チャララ、チャララ、チャラチャラチャラララ、チャララ、チャララ、チャラチャラチャララってやつだ」


「もう覚えましたから、わたしも弾けます。

 一度聞いたことがある曲はたいてい弾けるんですが、子どものころ弾こうと思って頭の中では弾けてるのに指が短くてうまく弾けなくて。本当は、それが理由でピアノを止めて思い切って水泳を始めたんです。長いこと弾いていませんが、2、3時間練習すればある程度弾けるんじゃないかな」


 なんだ。華ちゃん。俺から言わせれば音楽の天才じゃないか。これなら大丈夫だ。


「それならよかった。きょう隣街の楽器屋に寄ってピアノを買ったんだ。週明け、防衛省にいくから、その日の午後に俺のアパートに届けてもらうことにした。届いたらアイテムボックスの中に入れてここの居間に置くつもりだ」


「そうなんだ、楽しみ」


 これでまた、生活の質が向上するな。



「ご主人さま、ピアノってなんなんですか?」と、エヴァが興味深そうに聞いてきたので、


「楽器の一種だ。鍵盤と言って白黒の細い板があって、その板を指で叩くとその先の箱の中から一つ一つの板に合わせたきれいな音がするんだ。決まった順に板を叩くとその音が音楽になるんだよ」


「すごい。CDから流れてくる音楽も自分でその鍵盤を叩けばマネできるんですか?」


「おう。その通りだ。ちゃんと練習すればエヴァもああいった音楽をマネできるぞ」


「わたしもそのピアノを触ってもいいんですか?」


「もちろんだ。

 華ちゃん、できたらこの子たちにピアノを教えてやってくれないか?」


「はい。わたしに人を教えることが上手くできるかはわかりませんが精いっぱい教えます。

 エヴァちゃん、ほかのみんなも一緒にがんばろうね」


「「はい。ハナおねえさん!」」


「それと、子どもたちには魚の図鑑と国語の教材を買ってきたんだ。

 魚の図鑑は今度寿司を食べる時のためだな。国語の教材は幼稚園から小学校低学年用のものだ。簡単な言葉だけでも日本語を覚えればアニメを見た時もっと楽しめるだろ?

 悪いが華ちゃん、これの先生も頼む」


「任せてください」


「あのう、わたしもご主人さまの言葉を習いたいのですが」と、リサ。


「もちろんいいぞ。なあ、華ちゃん」


「もちろんです」


「みんな仕事があるから、勉強は夕食後、片付けが終わって華ちゃんとリサが風呂から上がって30分くらいだな。勉強が終わったらアイスかケーキを出してやろう」


「「わーい」」


 目先に人参があれば走り続けられるからな。


 俺は人数分教材を忘れずコピーしておいて、後で居間の棚の上に並べておいてやった。


 国語はこれでいいとして、ピアノには楽譜はあった方がいいよな。俺じゃ何が何だかわからないから、華ちゃんと週明け日本に跳んだ時買いにいこう。





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