第107話 本屋と楽器屋。
日本国内でのインヴェスターZとしての本格活動は防衛省からの振り込みを確認して、これはと、思える俺だけの超優良銘柄を見つけてからだ。
証券会社で口座を作った俺は、隣街の大きな通りに面した歩道を歩いて歩道に面した店をのぞいていたら、ちょうど書店があった。間口はそれほど広くはないが奥行きがあり3階だか4階まで売り場なので本屋とすればかなり大きな部類だ。
『イオナに魚の図鑑を買ってやろうと思ってたんだ。ちょうどいい。他にも幼稚園とか小学校の国語の教科書的なものを買ってやれば日本語が少しは理解できるようになるかもしれないしな。先生は華ちゃんに頼んでみよ』
俺が勝手に国語の先生を決めてしまうのはどうかと思うが、その程度は受けてくれるだろう。
書店に入った俺は、まずは図鑑の並んでいそうな場所を探してうろうろしていたら、コミックが目に入った。今まで手元不如意につき、コミックなど買ったことがなかったのですごーく興味がある。
最新刊は並べられているのだが、1巻からちゃんと全巻揃ったものがない。アマ〇ンでポチったり、ダウンロード版を買った方が早いのだろうが、地域社会の振興のためにはココでちゃんと本を買った方がいいだろう。
ということで、近くで本の並べ替えをしていた店員に、
「このコミックの全巻揃えたいけど、注文になるのかな?」俺は、拉致される少し前に完結したとどこかで知ったあるコミックを指さした。
「そのコミックは売れていますので、全巻揃っています。
お持ちしましょうか?」
「お願いします」
そこで5分ほど待っていたら、店員さんが段ボールの小箱にコミックを入れて持ってきてくれた。
「全34巻です」
「ありがとさん。
わるいけど、こっちのこのコミックも全巻揃うかな?」
「そのコミックは作者さんが急逝なさっていますが、昔のお仲間で続編が出されるそうです。今のところこれまで出版された41巻全部そろいます。お持ちしましょうか?」
「お願いします」
こちらも5分ほど待っていたら、店員さんがさっきと同じように段ボールの小箱にコミックを入れて持ってきてくれた。
「この階のレジの裏に置いておきますので、お買い物が終わりましたら、レジの者に声をかけてください」
そう言って店員は、二つの段ボール箱を重ね、それを抱えてレジのある方に歩いていった。
『なかなか、サービスいいな。まだ金を払ってはいないが、ここで買って正解だった。
コミックも75冊もあればかなり楽しめるから、コミックはこんなところでいいか。
本命の図鑑と子ども用の国語の教材を買っておかないとな』
俺はそういったものがありそうな2階に階段で上ったら、国語の教材はすぐに見つかった。4人分買っても良かったが、そこはお金の問題でなく、量が量なので仕方なく1種類ずつ買うことにした。
その階の奥の方に歩いていったら、図鑑類が並べられた棚があった。図鑑はもとをただせば寿司を食べてどういった魚を食べているのかイオナに教えてやろうと思ったものだったので、魚介類図鑑をまずは買うことにした。隣にあった動物図鑑と昆虫図鑑は、これから握り寿司で食べることはまずないだろうと思い買わなかった。働く自動車とか子ども向けの図鑑もあったが、向うの世界では働いていないのでこれもやめておいた。寄生虫図鑑は少し興味はあったが、やはりやめておいた。
俺は魚介類図鑑と国語の教材を抱えて一階のレジにいき、コミックを預かってもらっていることを告げて代金の5万円ちょっとを支払い、2段重ねの段ボール箱の上に図鑑と国語の教材を置いて両手で抱えて店を出た。
ふつう車で買い物にきたと思うだろうな。
歩道を歩きながら、俺は上の段の段ボール箱を本ごと収納し、しばらく歩いて残りの段ボール箱を収納した。これで良し。
これで、用事は片付いた。
本屋を出た後は俺の街の方向に向けて少し歩いていたのだが、通りを挟んだ向かいに楽器屋があった。
これだ!
ピアノを1台買って居間においてやれば、居間の中がいっきに締まるんじゃないか?
華ちゃんならピアノを弾けそうだし。そしたら、音楽教室が開けるぞ。
かくいう俺もピアノは少々嗜んでいるんだがな。ゴジラ出現のテーマ(注1)を10秒ほど弾けるのだ。
青になった横断歩道を渡って楽器屋に入ったら、すぐに店員がやってきた。実際何をどう言えばピアノが買えるのか分からなかったので、
「ピアノください」
と正直に言ってみた。
「どういったピアノでしょう?」
「普通のピアノください」
「アップライトピアノでしょうか?」
「なんでもいいです。ちゃんと音がでれば」
ピアノは調律とか必要だと聞いたことがあるが、少なくとも買った時には調律されているだろうから、新品をコピーしてしまえばいつでも新品を錬成できる。そこらに並んだ楽器もコピーしてしまえばそれまでだが、店員さんがこうべったりだとそれもやりにくい。
「もちろん音は出ますが、
ご予算はいかほどでしょう?」
「いくらくらいのものなんですか? 普通のピアノだと」
「お客さまでしたら、こちらの電子ピアノはいかがでしょう? これですと消費税を入れても5万円以下ですが?」
「電子ピアノって電気がいるんでしょ?」
「はい」
「電気がなくても音が出た方がいいな」いまのところ、電気の安定性に不安を残しているからな。
「それで、電気の要らない普通のピアノはいくらくらいするの?」
「アップライトピアノですとお安いもので70万から、グランドピアノになりますと200万から300万のものを当店では扱っています」
なるほど。中庸の精神は大事なので、
「なら、中を取って150万くらいのピアノをください」
「か、かしこまりました。当店で扱っていますアップライトピアノで最高級のものになります。値段は消費税込みで165万となります」
「じゃあ、それでいいや。それください」
困惑したような店員さんだが、それでもきっちり仕事をしてくれ、カウンターで伝票を書くことになった。
「お届けの住所をお願いします」
「現物は今ないの?」
「はい。工場からの配送になります。重さが250キロありますが床の方は大丈夫でしょうか?」
力士の平均体重が150キロと聞いたことがある。250キロなら力士二人分以下だ。さすがにその程度であの屋敷の床が抜けることはあるまい。
「大丈夫と思います」
そう言いながら俺はアパートの住所、XX市XX区XX、XX-XX、XXアパート1-03と伝票に書き込んだ。
「えーと、先ほども申し上げました通り商品の重さは250キロありますので、一般の家屋ですと補強が必要な場合が多いのですが、補強はお済なのでしょうか?」
「いや。
ここに届けてもらったら、自分で別途運ぶから。ここに置くわけじゃないから大丈夫」
店員さんは納得だか理解はしていないようだが、それでも商売人なので、
「そうでしたか。お客さまの判断でその先はよろしくお願いします。
配送は、明後日以降になりますがご都合の良い日時をお願いします」
「週明け月曜の午後2時頃で」
「2時ピッタリに到着できないかもしれませんがその時はご連絡します。
あと、キーボードベンチはサービスさせていただきますので、この中からお選びください」
椅子のカタログを渡された俺は、背もたれのあるちょっとお高い椅子を選んでおいた。
「この椅子ですね。
あとは、連絡先の電話番号をお願いします」
電話番号を伝票に記入し、代金を支払った俺は、収入印紙が貼られた領収書を受け取った際、店の人から調律についてひとことあった。
「これまでのピアノですと搬送後調律の必要がございましたが、専用の運搬車で運搬することで、運搬中の振動が直接ピアノに届かないようになっています。従って工場出荷時のままで、初期調律は不要ですが、新品のピアノですと数年間は半年に一度程度の調律をお勧めしています。調律は当店でも承っていますので、よろしくお願いします」
どうせ新品のままピアノをコピーするので調律しなくてもいいと思うが、ピアノというのはそれなりに大変な物のようだ。
注1:ゴジラ テーマ
https://www.youtube.com/watch?v=N2dn-vWr8V8 これの高音に移ってから。
作者はもちろん素人なので楽器のことで分かるのは小学校の縦笛だけでーす。




