第106話 インヴェスターZ2、証券口座
誤字報告ありがとうございます。
商業ギルドに顔を出して、金貨5000枚ほど商業ギルドに出資することにした。これで俺もいっぱしのインヴェスターだ!
インヴェスターになった俺は、脈絡などなにもなかったが久しぶりのマイホームの様子も見たいと思い、一度日本に跳んでみることにした。
アパートの台所への上り口に跳んだ俺は、そこで靴を脱いで部屋に上がった。いまやインヴェスターの俺にはふさわしくないくらい狭い部屋だが、落ち着く部屋なことは確かだ。
俺は、一休みとばかり台所のテーブルの前の椅子に座り、先日のD関連室との会議の時貰ったスマホを取り出し、電源を入れた。
特に先方からのメールは入っていなかった。個人事業主の俺は営業マンを兼ねているので御用聞きも兼ねて、スマホの画面上のクマさんのアイコンをタップした。
「はい。野辺です」
ワンコールもなく、野辺副室長が出た。さすがだ。営業マンとしたら見習うべき早業だ。まあ、相手はスマホでない可能性は高いがな。
「岩永さんですね」
「はい」
「何かございますか? こちらに来られているなら防衛省においでになりませんか?」
「そちらには週明けの月曜にでも顔を出すつもりです」
「何時ごろになりますでしょうか?」
「逆にそちらの都合の良い時間を教えていただければ、その時間で結構ですよ」
「それでしたら午前10時に正門前でお待ちしています」
「あー、あのー、前回の会議室ではだめですか? あの部屋でも直接跳んでいけるもので」
「それでしたら、会議室をその時間押さえておきます」
「よろしくお願いします。
そうそう、前回お渡ししたヒールポーション、検査の結果はどうでした?」
「臨床試験は続いていますが、防衛医大病院でヒールポーションの臨床試験に関係した医師からは驚くべき効果が試験した全ての病変に対して有効であり、裂傷、切傷は言うに及ばず骨折にまで有効であることが分かったそうです。
そうそう、室長の川村は全くの健康体に生まれ変わったようで、視力も回復したそうです。
まだ予算措置は取れていませんが、ぜひヒールポーションをお持ちください。何本でもお引き取りします。
それと、引き取り価格ですが、1本10万円では低価格過ぎて逆に混乱が生じると川村が上と掛け合いまして、1本あたり100万円で引き取らせていただきます。もちろん税引き価格です。それと、今回頂いたヒールポーション1000本分の代金10億は今週中には岩永さんの口座に振り込まれますので、週明けにでもご確認ください」
あの1000本のことは全く意識していなかった。10億ーーー! 正直、驚いてしまった。
価格を提示した時、もっと吹っ掛ければよかったと思ったが、向こうは俺にとって思った以上に良心的だったようだ。好感度アップだ。となればこちらもサービスしようという気にもなる。向こうから見ればギブアンドテイク、俺から見るとテイクアンドギブだ。
「ありがとうございます。それでしたら、次回はヒールポーションを2000本、それにスタミナポーションを1000本おまけに付けましょう」
言葉が上ずりそうになってしまったが、何とか冷静な声音は作れたと思う。
「ありがとうございます。
それでスタミナポーションですが、そちらも臨床試験をして有効性にお墨付きがでれば購入させていただきたいのですが。用途は、ヒールポーションで回復後、体力が衰えている患者の体力回復です」
なるほど、スタミナポーションにそんな使い道があったのか。ただ、ヒールポーションの効果がもっと上がれば、気力までも含めて体力も回復するから俺にはあまり関係なさそうだ。それはそれとして情報はありがたい。
「それでは、週明け、ヒールポーション2000本、スタミナポーション1000本、合計3000本をお持ちします」
「了解しました。会議室でお待ちしています」
「それじゃあ」
スマホを切った俺は椅子の上で一人にんまりした。すでに10億、次はヒールポーション2000本で税引き20億。もう一生働かなくていい。
とはいえ、働くのが日本人だからこれからもできるだけ精いっぱい働くぞ!
憲法にも「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」と書いてあるからこればかりは仕方ない。
俺は忘れないうちに、スタミナポーションを片手に持って、さっそくちょっといいヒールポーションを2000本錬金工房で錬成した。少し疲れたがそれほどでもなかった。
その後、スタミナポーションを1000本錬成したあと、手にしたスタミナポーションを飲んでおいた。
今回作ったどちらのポーションも防衛省用なのでリ〇D仕様のポーション瓶だ。
この調子で毎週2000本のヒールポーションを卸していったらゴールデンウィークと正月を除いて年間50週。20億×50週=1000億だ。それも税引き後だからウハウハどころかウハウハウハウハだ。
どうすんのこの金?
ニューワールドは金本位制だから金の流通量は経済に直結するが、紙幣という紙切れで回っているこっちの経済はどうなんだろ? 貨幣の流通量が足りないと思えば印刷すればいいので、俺の1000億などどうでもいい話だろう。それでもタンス預金ならぬアイテムボックス預金とするつもりはないので、基本は銀行に預けることになる。それなら預けた金は銀行が融資だか貸付だかすることで、なにがしか社会の中で回っているはずだ。
そういうことなので、あまり難しいことは考えなくてもいいんだろうが、せっかくだからインヴェスターZとして、毎週20億円、国内の優良企業に投資するのも手だな。株で火傷したところで元金がゼロになるだけだ。またポーションで稼げばいい。
悟りを開いた俺は、今度はスマホを取り出して優良銘柄を検索しようとしたのだが、そもそも証券会社に口座がないとアカンだろと気付いたので、さっそく口座を作ることにした。
手続きに必要なものを調べたところ、
1、マイナンバーカード
2、運転免許証
3、印鑑
4、銀行通帳
どれもアイテムボックスの中に入っていたので、俺は、大手証券会社の支店のある隣街に転移した。
少し歩いてその証券会社に入っていったら、銀行と違って、ほとんど客はいなかった。入り口の受付で来意を告げたら、こちらへどうぞとすぐに窓口に案内され、窓口の女性から渡された書類に必要事項を記入して、ハンコを何回か押したら、すぐに手続きは終わってしまった。
「これで、すぐ株の取り引きができるんですか?」
「お客さまの証券口座に残高が必要です」
そりゃそうだ。
「ここでは現金を扱っていませんので、こちらに書いてあります当支店の銀行口座にお振込みください。振込手数料は当社で負担いたしますので、100万円のお振込みですと、振り込む手数料を差し引いて振り込まれても結構ですし、そうでなければ、100万円+振り込み手数料がお客さまの証券口座の預かり金となります」
「了解しました」
俺は、いろいろな銀行にあるこの支店の口座番号を書いたカードと窓口の女性の名刺をもらって証券会社を後にした。




