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拒絶


 私はさっさと通り抜ける為に歩き出した。

 ムカムカする気持ちが止まらない。暫く進むと背後からバタバタと走ってくる足音がした。


「ねぇ、君ー!」


 げっ、さっきの人。


「君、認定冒険者でしょ?」

「えっと…認定冒険者?」

「あ?最近は教育してないのかな、その黒いカバン貰ったんだよね?」

「そうですけど何でしょうか?さっきお断りしましたけど」

「まぁまぁ。どうせ目指す場所一緒なんだからさ」


 何が一緒なんだからさ?

 腹立たしい気分が収まらない時に追い打ちって、この世界の人間は村人もそうだけど、厚かましくて大嫌いだ。


「ガルフさん…あの、無理強いは…」

「えー?でも彼女テント持ちだよ?テント持ちなのに見逃す手はないよ」


 どうやら私のアイテムが狙いらしい。


「あ、僕はガルフ・タールで彼女はエリカ」


 …ん?おかしい。

 この人ガルフ・ローゼンタールだよね。嘘ついてるし、もう完全に不信感しかない。


「戻った先に村があるんで、村で認定冒険者とかにしてもらったらどうですか?」

「うわ、君何気に意地悪とか言われない?」

「初対面の人間にテントを無料で使わせろって強引に言うのもどうかと思いますよ?

 それにエリカさんでしたっけ?あなたの事ローゼンタールって呼んでたけど。

 聞き間違いかな?嘘つく人信用できないんで。ついてくるのは勝手にどうぞ。私テントは出しませんから」

「えっ?何か怒ってるけど、非人道的なのは君の方だからね…最近の認定冒険者ってろくなのいないな」


 プチン。どうやらこの男、人を怒らすのが得意なようだ。


「元の世界から訳も解らないでここに来て、数日魔法使わせられてレベル5になったからって、何もわからないまま村の外に追い出されて知らない人間からは非人道的とか言われて…」


 ジワッと涙が溢れる。

 こんな奴の前で泣いたら負けだ。

 ぐっと我慢して叫ぶ。


「なんなの、この世界!大ッ嫌いだわ、まじ最悪」


「え?それ本当?」


 無視。

 ついてくるなら勝手についてくればいい。会話するのも見るのも嫌。人間怒りながら歩くとスピード上がる訳で。


「ねぇ、君〜!エリカちゃんついてこれないからゆっくり歩いてくんない〜?さっきのは謝るからさぁ」


 無視。

 話し掛けられて怒りが倍増、スピードアップ。


「うわぁ、スピード上げやがった。性格悪ぅ」

「ローゼンタールさん…もう…やめて下さい…非常識なのは、ローゼンタールさんですよ…」

「うわ、エリカちゃん優しい〜」


 イチャつくなら他でやれっての。






 かなり引き離したら村が見えてきた。良かった今日はちゃんとした布団で寝られて魔獣にも怯えなくて良いんだ。

 村について直ぐに宿屋に向かう。カウンターには横に貫禄があるおばちゃんがいた。


「すみません、一晩泊まれますか?」

「素泊まりなら5銅貨、食事込みなら7銅貨前払いだよ」

「食事込みで」


 金貨を渡すと9銀3銅貨のお釣りを貰った。


「すみません、近くに服売ってる場所ありますか?」

「服屋なら3軒隣にあるよ。それと夕食は19時だよ。それまでには戻っておいで」

「はい」


 服屋で値段が手頃な替えの服と下着を購入した。全体的にオーガニックな色合いでふんわりとして可愛らしい。

 満足して宿に戻ると、ローゼンタールとエリカがいた。無言で通り過ぎると宿のおばちゃんから声を掛けられた。


「ちょっとお客さん!3人で泊まるなら追加料金貰わないと」

「え?その人達、勝手についてきてるだけで、全然知らない人です。しつこいんで警察とか呼んでもらっていいですか?」

「警察はなにか知らないけど、憲兵みたいなのかい?」

「はい、お願いします」


 途端に顔色が変わった。


「え?おいおい、冗談だろう?」

「私の国では、あなたみたいなつきまとい罪になりますから。それに立派なたかりですよ?」

「えー!僕ら、無一文なのに酷いよねぇ。エリカちゃん」

「ぇ…酷いのはローゼンタールさんです…一緒に居て恥ずかしい…」


 エリカは案外まともなのだろう。顔を両手で覆ってしくしく泣きはじめていた。

 おばさんが憲兵を呼んで、あっさり二人は連れて行かれた。無一文なら教会か憲兵の牢屋で泊めてもらえるらしい。


 もう、凄く疲れた。


 憲兵に説明してるのを横で聞いてたおばちゃんが同情してくれて。いっぱい食べな!なんて沢山ご飯を食べさせてくれた。


 ふと食べながら思う。

 まぁ自分でも少し意固地になり過ぎたかなっては思ってた。


 ガルフって人の厚かましい態度や物言いがどうしても許せなかった。村から突然追い出された八つ当たりもあったし、元々人間不信気味だったのが、ここに来てからは人間不信だ。


 はぁとため息をついて、自分の意固地さを少し反省した。…本当に少しだけ。


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