依頼『要塞を撃破せよ』
依頼を話すために食事を終えた一同はアルフロズルに乗車する。
カインとベルゼブブも一緒だ。接客は昨日調理に参加したナミが担当している。
「カイン様。ベルゼブブ。これを。フルーツティにございます」
テーブルの上に置かれたものは紅茶のようであった。
「ふむ。――林檎やオレンジとは違うようだ。なめらかな食感だな。滅多に食さないものだ」
「マンゴーティーです」
「マンゴーか! なるほど。実に贅沢な戦車だな」
マンゴーティーを味わいながら満足気なカイン。
隣にいるベルゼブブは隠れてマンゴーティーの写真を撮影している。隻翼は知っている。EL勢力に見せびらかすためだ。
「俺への依頼を聞こう」
「隻翼。お前には惑星アベルに突入し、建造中の大型施設を破壊してもらいたい。中枢区画のリアクターを破壊すれば停止するはずだ。惑星アベルごと破壊してもらっても構わないがね」
「請け負った」
隻翼は即答する。
「この大型施設が完成してしまうと、惑星カインへの攻撃拠点となるだろうからな。俺の住人が誘拐され、完全義体統合されてはかなわん」
「惑星アベルの戦力は?」
「無人機を指揮するホークとネフィリムが多数。ただそのホークはパイロットの元人間専用ともいえる。旧式だが性能はなかなかのものだ」
「旧式とはどういうことだ」
「スパタだよ。魔改造されてスパタアベルと俺は呼んでいる。たまに攻めてもくるな」
「スパタの設計は筋がいい。積載もあり装甲もある。使いやすくて良い機体だ。そんなものを元人間のアンドロイドが使うのか」
「お褒めにあずかり恐悦至極だ。スパタやグラディス系統は俺が設計した」
「なんだと?」
カインの言葉に隻翼は驚愕する。長く伝わるスパタではあるが設計者は不明だった。
「正確には俺の子機であるレメクが設計したものだよ。装姿戦闘機からスパタあたりまでは惑星カインで担当していた。ライセンス料で大もうけだったが、さすがに旧式だ」
カインが可笑しそうに笑う。
「世界最初の殺人者には相応しい仕事だろう。トバルカインは鍛冶屋だったと記されている」
「普及しているわりに開発者が不明だった理由がようやくわかったよ。つまりホークの規格を作ったのもあんたということか」
「そういうことになるな。ホークで多くの人が死んだ。それが俺の咎であり存在証明だ」
カインは自嘲する。
「まあいい。つまらない話はやめよう。手段は選ばなくてもいい。連中は拠点から無人機を飛ばして惑星カインの住民をELへの供物としている。哀れな子羊としてな。第一世代ELはもういないにも関わらず、だ」
「アベルは破壊されてもカインへの復讐と、人類最適化のための機械化を諦めていないということなのか」
「妄執といってもいい。超越知能はしぶといもんだよ。なあエイル。ロズル」
カインは戦車として生き残っているエイルとロズルに呼びかける。
『質問を。それらスパタ・アベルの部隊はヴァーリ一機で対処可能なものでしょうか』
「敵機は最低でもスパタ以上の性能はある。現行技術でいえばレプリカBあたり。雑魚でも手強いということだ。ヴァーリの性能は知っている。対処は余裕だろう」
エイルがカインに問いかける。戦力は隻翼のヴァーリが突出している。
『防衛網突破ではもう少し戦力があったほうがよさそうですね。中に入ればヴァーリの能力が生かされます』
「アルフロズルは兵装が鹵獲したものしかないという話だったな。この戦車の戦力を表示してくれ」
カインの要請に、エイルはアルフロズル所属のホーカー達が乗るホークを表示した。
「ほう! グラディウス・ビッグヴァルチャーまであるのか。しかしパーツの劣化具合がひどいな。いや、残っているだけ奇跡か」
「申し訳ありません。古い機体な分、部品の調達が困難でして。ビッグヴァルチャーの図面はすでに存在せず、部品はこのアルフロズル内の工廠でも再現は難しいとのことです」
「ん? ナミもホーカーなのか」
気配りが上手なナミに対して悪い印象はないカインが確認する。
「はい。このビッグヴァルチャーのホーカーです」
「図面はくれてやる。これも俺の造った道具だ」
「よろしいのですか?」
「ビッグヴァルチャーも改修しよう。あとで俺のところへもってこい。スパタとグラディウスもだ。アップグレードぐらいはしてやれるはずだ」
「ありがとうございます!」
「感謝する。カイン」
隻翼も礼を述べた。
「ヒロシマのお好み焼きと一品料理の数々の礼だ。お前のヴァーリにも何かしてやりたいが技術ツリーが異なるからな。ヘタに手をいれないほうがいいだろう」
「ビッグヴァルチャーの改修だけでも助かるよ」
「生きて帰ってくれ。今度は別の料理で頼むぞ。食っている間、アルフロズルの主砲の再現もしくは太陽炉を使った代替の砲の構想しておく」
『感謝しますカイン』
「感謝はまだ早い。まずは依頼を達してもらわないとな」
『あなたは隻翼が依頼を達成する前提で考えています』
「生きて帰ってもらわないといけないだろ。ベルゼブブ。あとでおすすめの料理を教えろ」
「嫌だ」
「なんだと?」
「どれも美味い。絞れないほどにな」
「暴食め」
ベルゼブブの不遜な言い方にカインは苦笑する。
やはり古い仲のようだ。
「必要な弾薬や砲はいってくれ。敵は無数だが、施設に入ってしまえば同時に対応できるものなど限られる。ネフィリム程度ならヴァーリの敵でもあるまい」
「入るまでの兵装のサポートまでしてくれるのか。気前の良い依頼人だな」
「久々の贅沢を味わった。何より民が喜んでいる。巡業もしてくれるのだろう? 相応の対価は頂いているよ」
「任務を終え次第、巡業を開始する」
「ならばこそだ。協力は惜しまん。好きなだけ惑星アベルで暴れて、帰ってきてくれ」
「承知した」
アルフロズルのホークが惑星カインで整備される。
隻翼にとってこれは思わぬ収穫だった。
魔王、帰還す〜疵痕
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
アルフロズル勢力強化フェイズに入りました。
どのゲームでも僚機は弱いですよね! ビッグヴァルチャーはかなり弱いという設定です。反応弾が強いだけで。
お好み焼き尽くしとは打って変わって、要塞攻略という本来のメカアクションに戻ります!
軌道修正ではありませんよ。地球グルメもテーマなので!
応援よろしく御願いします!




