カインの食卓
当日、祭りが始まるか如く大量の機材をカインが用意した宴会場に設置する。
小型屋台までずらりと並ぶ。住人が気軽に食事できる配慮だ。
「追放者以外の人間が、しかも屋台など珍しいからな」
カインはその光景だけですでに満足気だ。
「カイン。撮影には協力してもらうぞ」
「EL勢力どもに見せつけるのだろう? 構わん。やれ」
超越知能カインはどちらかというとEL勢力敵対派のような言動を取る。
悪魔と同じく人類初の殺人、しかも弟という存在を模している。配下の天使を模した超越知能と仲が悪くて当然かもしれない。
「どんなものをしてくれるのだ。隻翼よ」
「アルフロズルの主砲という対価に相応しいもてなしをさせてもらおう。お好み焼きでな」
「楽しみにしているぞ」
大きなテーブルには巨大な鉄板プレートが置かれた。
「隻翼の補佐をさせていただきます。ナミです。そしてこの二人はチヒロとユノです」
ナミが別人のようだ。いつもの片目カクレメはやめて、髪を後ろで結い清潔感を出している。三人とも和風をイメージした動きやすい服装だ。
「ではまず私たちから。牛すじと鉄板焼きを先にお出ししますので、お時間をいただきますね」
ナミは手早くカイン、惑星カインの重鎮二人、そしてベルゼブブが見ている前で海鮮焼きと溶かし卵でとん平焼きを調理する。
その後、牛コウネをはじめとする贅沢な肉料理を焼いていく。
「こちらもどうぞ。明石焼ききです」
センノスケから大玉の明石焼ききが出された。絶妙な独自の出汁につけて食べるタイプのたこ焼きだ。
「これがヒロシマのお好み焼き。生地と生地に蕎麦、卵を載せていくのです。乗せ焼きですね。この生地は技法的には種なしパンと同じですよ」
ナミが快活に説明しながらお好み焼きを焼いている。
「お好み焼きに入れる具材を指定してくださいね」
チヒロからメニュー表を渡され、それぞれが好みの具を指定する。
「ふむ。小麦を平たくしたものを四層もの具材を一つのお好み焼きにするのか。技術的には種なしパンを使っているな」
生地、キャベツや天かすを中心にした具、中華麺、そして卵の四層だ。
ナミは大きなお好み焼きを器用にひっくり返している。
ソースの香ばしい香りが漂ってくる。ナミは焼きそば麺ではなく中華麺を炒めることにした。
ナミは要領よく四枚ものお好み焼きを焼いている。
「残りお好み焼きは二種類あります。無理だったら暴食のベルゼブブに食わせてください」
「承知した」
「承知するんじゃねえ!」
「アスモデウスの死因は聞いた」
「死んでないからな?」
ヒロシマのお好み焼きが出された。
「ネギはかけてありますが、お好みで増量してください」
あらかじめ切れ目が入れてあり、ヘラで切り取って食べる。
「これは……実に食べ応えがありますな」
カインの側近が感嘆する。
「ソースとキャベツと麺が絶妙だ。麺が主体だな。食べやすい」
「その通りですカイン様。我が家に伝わるヒロシマのお好み焼きは、二十世紀、WW2後に発展したもので、もともとおやつや昼食用だったと記録されております」
四人はあっさりと平らげる。
その間にもベルゼブブは配信に余念がない。
「次はオオサカのお好み焼きを出します」
ヘイジが緊張しながらも、手際よく準備を始める。
ステンレスのお好み焼きカップにお好み焼き粉、指定された具材、卵がすでに入っている。
お好み焼きは小麦粉ベースで山芋が多め。これでふっくら感を出す。ヒロシマのお好み焼きと違ってキャベツはそれほど入っていない。
四人の眼前でかき混ぜ、鉄板で焼くのだ。
カップと長箸がカカカッと小気味良い音を慣らしながらかき混ぜ、鉄板に混ぜたものをすべて乗せ替えて焼き始める。
ヘイジもヘラで器用に何度かひっくり返しながら丁寧に焼き上げる。
ソース。青のり。カツオ節の粉を振りかけ、カラマヨで仕上げだ。カラマヨは好みもあるので確認は必須。
「へい! おまち!」
カインたちもお好み焼きに慣れてきたのか、すぐにヘラで切り分け、口に入れる。
「先ほどのヒロシマも良かったが、カンサイも違う食感だな。柔らかく、食べやすいのに食べ応えがある」
「サイダーおかわり!」
「最後の一枚が気になりますな」
その間、ベルゼブブはこのお好み焼きがいかに美味いかを視聴者に伝えるべく、詳細に食レポしている。
「それでは俺だ。まだ入るかな?」
隻翼がやってくる。
「無論だ。頼む」
ヘイジのお好み焼きを使った鉄板を改めて綺麗にし、油引きを使い油を鉄板に塗り直す。
四人の前でステーキのようなロースを焼き始める。こちらはバターを使っている。肉がじゅうと焼ける音が広がる。
溶かした白色の粘りがあるものを鉄板に敷く。
「それは?」
「山芋と卵だけで生地を作ってある。食べやすいぞ」
「ほう」
それぞれが希望した具を乗せ、最後に先ほど焼いたロースを乗せる。
お好み焼きにステーキカバーで蓋をした。
「ステーキカバーだと?」
「カンサイのお好みが混ぜ焼き。ヒロシマのお好みが重ね焼き。これは伊良家秘伝。いわば蒸し焼きだな」
「これは期待できそうだ!」
「少し時間がかかる。好きな一品を頼んでくれ」
それぞれが気に入った一品を注文する。ベルゼブブはオムソバを注文していた。炭水化物だらけだが、アスモデウスの総カロリーに比べたらまったくもって気にならない。
「待たせたな。できたぞ」
出来たお好み焼きにソースをかけ、鰹節をふりかける。そして同じようにカラマヨをさっとかけて完成だ。青のりは好みでふりかける。
見た目はカンサイのお好み焼きに近い。
さっそくヘラで食べる四人。
「こ、これは…… 口のなかで溶けるようだ」
「山芋だけの生地がこうなるとは」
「このお好み焼きは具材の味が生きるな」
ベルゼブブが評しながら、じっくりとアップする。
「食べやすいが…… 腹持ちは悪そうだな」
アンドロイドのくせに腹持ちを語り出すカイン。配下の二人は人間のようだ。
隻翼のお好み焼きもぺろりと平らげてしまった。
「一品料理大量にお好み焼き三人はカロリーオーバーだからな?」
隻翼は念押しする。
「第一の試練は乗り越えられそうか?」
「これほどまでのものとは。文句などあるまい。ただし、一つだけ注文を」
「なんでもいってくれ」
「もっと食べたいが、他に変わり種はあるか?」
食べ足りないらしい。
隣にいるナミが提案する。
「カイン様。では次は焼きそばはどうでしょうか。ただの焼きそばではありません。オムレツに包んだ焼きそばのオムそば。あとは焼きそばとご飯を混ぜたそばめし。こってりしています」
「両方もらおうか!」
「まじかよ。俺も両方貰う!」
カインとベルゼブブは強欲だった。
「我々は一人前を二人で分けます」
「正しい判断だ。センノスケはそばめし。ヘイジがオムそばだ」
「へい!」
コウベより伝わるそばめしはセンノスケ。オオサカから発祥したオムそばはヘイジが得意だ。
「馳走になったな隻翼よ。それでは明日。傭兵としてのお前に依頼を出すとしよう」
「承知した」
第一関門は突破した。
アルフロズルの改修という無理と思われた目標が大きく近付いたのだ。
魔王、帰還す〜疵痕
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
お好み焼きは大好物なので自爆飯テロを喰らっています。お好み焼き食べたい……
今回こだわりの描写はお好み焼きカップを慣らす音です!(笑)
関西の混ぜ焼きですが調べたら発祥は東京みたいですね。いつの間にか関西圏の代表的な食べ物に。
明石焼きとそばめしはJAサイトに掲載されている郷土料理です!
蒸し焼きお好み焼き。自宅でアレンジして作ります。筆者はお好み焼き粉と山芋を1:9に卵多め。全部山芋にすると崩れやすいので。
有名なお店は難波。そして東京では原宿にあります。近郊にお住まいの方は是非食べてみてください!
もう原宿は厳しいなぁ……
応援よろしく御願いします!




