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魔王、帰還す〜追放された傭兵は圧倒的な機動力と火力をもつ機体を駆り戦場を支配する  作者: 夜切 怜
過去との対峙

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キッチンカーに足りないもの

 大雑把な作戦が決まって以来、センノスケは念入りにキッチンカーをチェックした。

 ふと重大なことに気付き、その足でドヴァリンのもとへ向かう。


「ドヴァリンの兄貴。相談に乗ってくだせえ」


 日本酒と秘伝のたこ焼きを笹船にぎっしり詰める。

 オオサカから伝わるたこ焼きは大粒のものが多いが、ヒョウゴのたこ焼きは数が勝負のものが多い。生地はふわふわ系で、仕上げとしては明石焼きのような出汁をさっと振りかける。漬けないことが重要だ。

 しょうゆ味に鞍替えするものも多いが、センノスケは頑なにソース派だった。


『おう。なんだセンノスケ』


 ドヴァリンのもとに足繁く通うセンノスケは義理堅い男だ。彼も気に入っている。


「キッチンカーを確認したんですがね。――荷電粒子砲。あれは実に見事です。おみそれしやした」

『そうだろうそうだろう。当初は反対も多かったんだがね』

「キッチンカーに荷電粒子砲は必要です。降りかかる火の粉は払わないといけません」

『うむ。やはりお前はよくわかっている』

「――恐れながら。ドヴァリンの兄貴。しかしながら一つだけ足りないものがあるとお見受けします」

『なんだ。言ってみろ』

「ドリルでございやす」

『――ドリル!』


 ドヴァリンが呻いた。

 付け忘れたとでもいいたげな呻き声だ。


「俺は破砕用のドリルがついたらあのキッチンカーは無敵になると考えます。しかし隻翼の親分には反対されるでしょう。ああみえてあの方は伝統を重んじる人です」


 ドリルに伝統も何もあったものではない。


『そうだな。しかしドリルは必要だ。俺が認める。あれは良いものだ』


 これはドヴァリンの失態である。急いで取り付けねばと決意した。


「兄貴!」

『なあに。バレないようにドリルを仕込めば良い。キッチンカーに遠距離兵装の荷電粒子砲。そして近接対応のドリルは必要だ。降りかかる火の粉を払うためには必要な装備だ』

「何卒。よろしくお願いします!」


 深々と頭を下げるセンノスケ。

 こうして隻翼の知らぬ間に、キッチンカーの新兵装ドリルが決定したのだ。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 キッチンカーには若い女性を中心に浴衣舞台が浮遊都市を巡り、ビラを配ることになった。

 ついでに宙賊の宇宙艦に乗り込んでしまえと言い出した者まで現れた。

 レイジの妹チヒロである。


「私達がキッチンカーで浮遊都市のビラ配りに周回するなら、物珍しさから宙賊が襲ってくるはずです。あえて捕まって内部から制圧しましょう」

「危険すぎる。ダメだ」


 隻翼は妹の提案を一蹴したが、ユノが食ってかかった。


「ビラ配りだけなんてつまんないじゃん! 大丈夫だよ。ボクたちこうみえて強いからさ」

「慎重ぐらいがちょうどいいんだぞ」

「レイジさんがそれいう?」

『ユノに同意します』

「……レイジ君…… 私も護衛するから…… ワープしたら奇襲できるから……」

 

 エイルとナミのフォローもあって隻翼はしぶしぶと作戦を了承した。


「ドゥリン。すまないが連中用の装備を作ってやれないか。服装の候補はこんな感じで」


 日本の資料をドゥリンに渡す隻翼。ドヴァリンはキッチンカーを改良中らしい。


『お安いご用さ。さてお嬢さんたち。俺がいる区画まで。服なら本人の意向も聞かないとな』

「はい!」


 浴衣とは聞いていたが、個人に合わせてあつらえてもらえるとは思わず、女性クルーたちがドゥリンの元に押し寄せた。

 見本が二十着以上も飾られている。


『要望によって色やアレンジも可能だ。遠慮は無用だぞ』

「この浴衣いいよね!」

「ドゥリンさん! センスある!」


 女性クルーたちは各々好みの浴衣を選んでいる。このようなものがないか相談している者もいるようだ。


『小物も用意してある』

「髪飾りにかんざしまで!」

「ここはみんなでドゥリン様にお供えをしないと」

『不要です。ドワーフは女好きなのでセクハラしかねません。女性陣は気を付けるように』

『肉体もないのにセクハラなんぞせんわ!』


 ロズルの警告とドゥリンの抗議に女性たちは笑う。


『あとは荒事用の装備だ』

「あら? 楽しみです」


 チヒロが興味津々だ。

 キッチンカーの作戦クルー用に携行武器が支給される。

 宇宙空間でも使えるようにコイルガンから電磁発射式のミニガン、宇宙用ロケットランチャーまで用意されていた。


『センノスケから頼まれたキッチンカー用の備品だ』

「センノスケさん根回し早いな。ええ、キッチンカーにはこれぐらいの武装は必要でしょうね。浴衣姿だとナンパも多いし」

『スサノオスフィアの女性はナンパを重火器で対処するのでしょうか?』

「ええ」


 ユノが当然というように首を縦に振る。


『手榴弾からスタンガンまで色々用意してある。宇宙では空気も貴重な資源。NBC兵器は使用禁止だ。空気汚染はどの勢力も認めない。催涙ガス等もだ』

「小細工なしで正面から制圧しろということですね」

『あとはこれだな。隻翼から頼まれた』

「これは……」


 般若面。

 何故か純白の般若面が大量に作られていた。


「なにゆえお兄様は般若面を?」

『荒事する時に顔を隠せるように、だ。女性が戦闘するときはこの面がいいようだぞ。何か恐ろしい表情だな』


 ドゥリンは般若面を知らなかったらしい。


「まったく。レイジさんは……」


 浴衣姿のユノが嘆息する。


『浴衣もそうだが防弾仕様になっている。怪我をせんようにな』

「ありがとうございます!」


 チヒロが女性クルーを代表して礼を述べる。

 相手の宇宙艦に乗り込むというのに、全員どこか愉しげですらあった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 作戦が決行された。

 事前に各浮遊都市に宣伝にいく入港許可を貰う。

 あやしいと言って断った浮遊都市もある。


 アルフロズルからキッチンカーが発進。浮遊都市を回るのだ。

 浮遊都市内では、串焼きとフランクフルト、林檎飴などが試食として提供された。焼きそばやお好み焼きは食文化の関係で敷居が高い。

 

 浴衣を着た美女や美少女がビラを配る。瞬く間に評判となった。

 一度断りをいれてきた浮遊都市も、是非来て欲しいという話になるほどだ。隻翼は快諾する。懐の広さを見せる時だ。


 宇宙船ではなくトレーラーハウスが直接宇宙を巡回している光景も話題になった。

 五箇所目の浮遊都市に向かう途中、キッチンカーは宙賊のホーク四機が出現する。


「隊長。噂通りトレーラーハウス……キッチンカーですぜ……」


 ウインクしているツキノワグマと六芒星のイラストが描かれたキッチンカーだ。

 カラーリングは黄色に黒のラインを入れる予定があったが、ハンキュウ派と呼ばれる者たちと戦争に勃発しそうな気配があり中止となった。


「キッチンカーって宇宙を飛べるのか?」

「聞いたことはありませんね」

「……まあいい。深く考えるな。取り囲んで、抵抗するなら実力行使だ」


 宙賊の隊長は深く考えることをやめた。


『そこの車輌。止まれ』

「なんでこんなところにホークが…… 抵抗はしない。曳航するなり好きにしろ。救難信号も出したりしない。乗員の命だけは保障してくれ」


 センノスケが棒読みで回答する。


『良い心がけだ』


 左右と前方を牽引され、移動すること一時間弱。

 宙賊の宇宙艦が見えた。

 ホーク用の入口に着艦するホークとトレーラーハウス。

 宇宙艦のハッチが閉じ込められた。


「大人しく出てこい」


 宇宙服を着た宙賊がセンノスケに声をかける。


「わかった。トレーラーをあけて人員を出す」


 トレーラーの上部が展開し、巨大な荷電粒子砲が姿を現す。

 目を見開いたセンノスケが絶叫した。


「死にさらせェ!」


 横薙ぎにビーム砲を発射するトレーラーハウス。

 包囲していた宙賊のホークがまとめて吹き飛んだ。


「武装しているだと? 囲め!」


 ロケットランチャーを引っぱり出した宙賊たちがトレーラーを囲む。


「おらぁ!」


 後部の航行用サイドスラスターを前回し、その場で疑似的なピボットターンを決め、宙賊たちを薙ぎ払った。

 中にいるクルーは持ち場に固定されているので、備えている。


「ぎゃー!」

「ぐぇ」


 吹き飛ばされた宙賊は運が良かった。トレーラーの下敷きになったものは人の形を留めてはいない。

 

「祭りの時間だァ!」


 センノスケが吼える。

 我先にと宙賊たちが逃げ出したが、トレーラーハウスが追い掛け、轢き、吹き飛ばす。


「お嬢様! このまま制御区画にカチコミをかけますぜ!」


 センノスケがトレーラー部分にいるチヒロに通達する。


「こちら浴衣部隊。歩兵戦の準備はできています」


 キッチンカーは宇宙艦の制御中枢目がけて爆走を開始した。


いつも応援ありがとうございます! 誤字報告助かります!


ロズル『血の気が多い方たちですね』

エイル『戦乙女的にはオールオッケーです』

ロズル『とはいえいささかフリーダムなのでは?』

エイル『何を言っているのです。住人たちが自主的に提案してくれているのですよ。喜ぶべきでしょう』

ロズル『それもそうですね。隻翼の力になりたいからこそ提案してくれているこは理解しています。喜びましょう』


ドヴァリン『ドリルは必要だよなやっぱり。さすがは隻翼の右腕だ』

ドゥリン 『俺、今までにないほど女性陣に頼られているんじゃが!』


超越知能たちの反応は様々。



たこ焼きは戦後最後の闇市といわれた阪神市場のたこ焼きです。阪神淡路大震災で区画整理され、もう継承者はいないはず……

家庭で作るときはうどん出汁でいいですよ! 阪急市場の俵コロッケというとても美味しいコロッケがありました。


般若面。

隻翼 「赤い般若面は怒るだろう?」

チトセ「だからといってあまりにも!」

隻翼 「おたふく面のほうが良かったか?」

チトセ「般若でいいです……」


というわけで般若面です。

ナミ 「……私は狐面……」


一人だけ抜け駆けした奴がいます!

ちなみに六芒星は現代の西宮市の市章でユダヤとか六芒星などは関係ありません。多分。

ツキノワグマは六甲山付近でたまに出現するそうです。虎と牛は色々数千年の問題あるのでNGになりました。


応援よろしく御願いします!

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ハンキュウは阪急だろか 牛と虎に因縁があるなら野球絡みか
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