射線軸と偏差射撃攻略
宙賊たちは慎重に前進する。
「この扉の向こうは1G重力区画だな」
フラメンシュヴェルトと二機のカットラス。十機いた宙賊は今や三機しかいない。
忽然と消えた僚機がどこに消えたかは不明だ。
「追い掛けるよりまずは重力区画だ。遺宝相手に宇宙空間では一方的にやられてしまう」
スラスター出力はそのまま性能差に繋がる。
全力で移動する宇宙艦に小型兵器は追随は非常に厳しい。
小型機同士なら遺宝のリアクターとスラスターの性能に対して現行機が対抗できるはずもない。
「重力さえあれば、ちったあ拮抗できる」
三機のホークは重力区画の扉を開けて、駆け込むように突入する。
巨大な広場のような格納庫の中心に紫黒色に赤いラインの入ったホークが立っている。
ヴァーリだ。
「ようこそ。シコラクス基地にいたお仲間は生きているぞ。投降してホークから降りるなら生命だけは保障しよう」
「ふざけるな! 重力区画なら一対三だぞ!」
「そうか」
フラメンシュヴェルトが真横にスタスターを吹かし、ビームライフルを発射する。
カットラス二機は左にスタスターを吹かし、同様に射撃をした。
「普通なら挟撃になるが――」
ヴァーリが加速した。あっという間にカットラスの背面に回り込み、両肩を掴む。
そのまま両腕部を強引に引き抜いた。
「は? 稼働中の機体を分解できるなんてありえるのか!」
ホークの両腕部を喪失し呆然とする宙賊のパイロット。
腕部を無くしたカットラスはそのまま蹴倒された。機体を支えることもできない。
「何をしやがった!」
「腕を引き抜いただけだが」
背面に回ったヴァーリは、カットラスの背面装甲を剥ぎ装甲カプセルを引き抜いて、地面に放り投げる。
「これで一対一だな」
隻翼がフラメンシュヴェルトのパイロットに告げる。
「化け物かよ…… 魔王の名は伊達じゃないってわけか」
「賞金首に対する情報収集が足りなかったようだ」
「宇宙艦を裂いたとか盛りすぎだったからな」
「事実だ」
「――くそっ! 俺のフラメンシュヴェルトだって伊達じゃねえ! 殺してその機体を奪い取る」
隻翼はパイロットの威勢の良さに嗤う。
「いいぞ。来い」
ここで逃げたら殺すつもりだったが、フラメンシュヴェルトは両肩のローンチポッドを展開して大型ミサイルを発射してあくまでヴァーリを倒すようだ。
大型ミサイルは分裂し、無数の小型ミサイルとなってヴァーリに襲いかかる。
ヴァーリはシールドを水平にし、内蔵されたビーム砲で迎撃した。
「そこだ!」
フラメンシュヴェルトは足を止めず、移動しながら大型のビームライフルを乱射する。
ヴァーリも加速し、射線軸をずらす。敵機の移動を読んで行う偏差射撃には相手の予想を上回る加速か、不規則な移動が有効だ。
ヴァーリがティルフィングを引き抜いてフラメンシュヴェルトに接近し、手首を切り飛ばす。
シールドを持っている方の左腕部を強引に掴み、機体ごと投げ飛ばした。
「なんてパワーだ…… こっちの機体だってレプリカBクラスだってのに!」
起き上がろうとしたフラメンシュヴェルトに、ティルフィングの剣先が突きつけられる。
「投降しろ。命までは取らん。リアクターを停止しろ」
「――降参だ」
勝ち目がないと悟ったフラメンシュヴェルトのパイロットはリアクターの停止に応じ、機体を停止させた。
隻翼は剣を突きつけたまま、パイロットを問い質す。
「宙賊にも母艦があるはずだ。座標をいえ」
「今頃、獲物の確保に向かっているよ。天王星の浮遊基地を移動する、謎の……キッチンカーだ」
「キッチンカーが宇宙を飛ぶものか。馬鹿も休み休みいえ」
隻翼はシラを切りながら、問いかける。
もっとも初耳なら宇宙を飛ぶキッチンカーなど、はいそうですかと納得できるわけもなく妥当な反応だろう。
「本当なんだってばよ。何やら祭りをするらしくてな。宇宙船機能をもったキッチンカーが宣伝に浮遊基地を巡っているそうだ」
「もう拿捕したのか? 信じられるか」
「今頃拿捕しているはずだが…… キッチンカーの話は本当だ。宇宙船機能を持つキッチンカーなんて俺達も聞いたことがねえ。いい金になると思ったんだ」
「それが事実ならそうだろうな」
隻翼もキッチンカーの様子はまだ知ることはできない。
捕まっているなら計画通りなのだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
宙賊の宇宙艦内部で、キッチンカーが爆走していた。
「死ねやぁ!」
作業用のホークが、荷電粒子砲のビーム砲弾によって弾け飛ぶ。
「誰か! 助けて!」
「ぎゃあ!」
問答無用で立ちはだかる人間を轢き、なぎ倒していくキッチンカー。
運転手はセンノスケだ。
「若頭! 目の前に隔壁が閉じられました!」
助手席にいるヘイジが悲鳴をあげる。キッチンカーは減速する気配がない。
「ぶち抜け!]
新機能のスイッチを押す。
ダンパー付近から巨大なドリルが出現した。
「内部からかき乱してやる! 中枢を若い衆で制圧だ!」
十人ほどの戦闘要員と浴衣姿の女性陣たちがガウス式のアサルトライフルを手に目的地まで待機している。
「なんでキッチンカーにドリルがあるんだよ! 誰か止めろよ!」
「やだよ! 死ぬわ!」
宙賊たちが我先へとキッチンカーから遠ざかる。
破砕用ドリルに巻き込まれたら死あるのみだ。
宇宙艦内は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
「外にいるホークはどうした!」
「それが――戦闘機に襲われているようで!」
「戦闘機だと? どこからやってきた!」
キッチンカー周辺には護衛はいなかったはずだ。
「これで四機。センノスケさんは暴れているようですね」
悠然と微笑むナミ。
艦外にいた護衛のカットラスはビッグヴァルチャーによって次々と撃破されていた。
いつも応援ありがとうございます! 誤字報告助かります!
FCSは未来位置を予測してくれるものですが、防御側も予測を外すための挙動をします。
そこで射線軸と偏差射撃が重要になってきます。FPSやTPSでもお馴染みの概念ですね!
ゲームによっては二重ロックでより未来位置の予測が正確になるものもあります。
ヴァーリの解体はまずアクチュエイターから生み出されるパワーが桁違いという点です。
PCショップの友人も言っていますが、何事もパワー。24ピンを外すのも、硬い防塵ケースの蓋を外すのもすべてパワー。
パワーが無い自分にとっては自作PCの道は厳しいです。ATX24ピン規格なんていつの規格やねん。進化して欲しい。
さてキッチンカーに謎ドリルがついたのか。
その謎は次回明らかになります!
応援よろしく御願いします!




