ヴァーリ固有スキル【Disassembly】
隻翼はヴァーリに乗り、不規則衛星シコラクスに潜んでいた。
宙賊のホーク部隊は中枢近くの重力ブロックにいると踏んでいるようだが、ヴァーリはシコラクス基地の出入り口付近にいる。
シャッターは開けられたまま。宇宙空間と基地内は繋がっている。奥に進めば大気がある区画になる。
「この場所なら音もしない。中央の重力部分に向かう連中を捕まえることができる」
センサーのついたデトコードを基地内部に十数本垂らしてある。
捕縛に長けた逸話を持つヴァーリは自在にワイヤーやデトコードを使いこなすことができた。
「――かかった」
垂らしたセンサーがホークを検知した。
すかさずデトコードを燃焼させ、加速させて捕縛する。
音もなく頭上の通路に消えるホークに、宙賊たちはすぐに気付かなかった。
引きずられる宙賊の機体カットラス。
通信する間もなく、ヴァーリのもとに辿り着いた。
ヴァーリは接触通信を用いる。
「宙賊。リアクターを停止するか死ぬか。選べ」
「なんだとてめえ!」
カットラスはビームライフルを構えることができた。
攻撃の意思があるとみるや、ヴァーリは無造作に殴り飛ばし壁に叩き付ける。
これほど派手な動作をしても、まったくもって無音。宇宙の利点だ。
ヴァーリはカットラスの機体正面を壁に押しつけ、背後を取っている。
隻翼は無言でヴァーリを操作し、背面のスラスターを解除する。
「てめえ! 何をしやがる!」
隻翼はこたえない。
ヴァーリは背面装甲を剥ぎ取った。
「は? 稼働しているホークを解体するってのか。おい馬鹿やめろ!」
ヴァーリはそのままコックピットを保護している装甲カプセルを掴んで引き抜く。
「嘘だろ…… こんな…… 正真正銘の魔王ってことか……」
制御中枢を喪失したカットラスは緊急停止した。
隻翼は結果に満足する。
「ヴァーリの逸話。――ロキの息子を解体し臓物を引き出したという。ヴァーリの固有スキル【分解 】だ」
大きな戦争で兵器は規格化されている。隻翼もノワール戦役時、敵戦車を破壊したあと残骸から兵装を奪い取ってスパタに装備させていた。
しかし稼働状態のホークを解体するなど、隻翼も聞いた事が無い。
「レベルが上がったから、ということか?」
『隻翼とヴァーリの同化が進んでいるということですね』
隻翼の疑問にエイルが答えてくれた。
ヴァーリとともに戦闘行為を重ねるにつれ、このスキルの存在に気が付いたのだ。
ホークとしての圧倒的な性能差がないとスキル行使はできない。まだ試みたことはないがラピエールやオリフラムのような高性能機相手には難しいかもしれない。
「コックピットはどうするか」
「親分。俺達に任せてください!」
通路から宇宙服を着たアルフロズルのクルーが集団で装甲カプセルを取り囲む。
手持ちの交信用発振機を装甲カプセルに取り付ける。
「でてこいやおらあ!」
「隠れてんじゃねえぞ! 死にてえか!」
真空なので音はしないが、コックピット内の空気が、激しい打撃音をパイロットに届ける。
「このまま宇宙に放りすぞダボがぁ!」
品が良いとは言えない言葉遣いだが、宙賊の戦意を喪失させるには十分だ。
両手をあげて出てきた宙賊はあっという間に捕縛され、通路に消えていった。
「エイル。グラデイゥスやスパタあたりなら【分解】は可能だった。カットラスもいけたぞ」
『良いデータが取れました』
「次のホークがかかった。引き続き処理する」
次のホークもカットラスだった。
「宙賊。リアクターを停止するか死ぬか。選べ」
同じ問いを行うと、分解されて装甲カプセルを引きずりだされた仲間の機体を見るやいなや降参した。
「リアクターを停止する! 頼む!」
「良い返事だ。お前は長生きしそうだな。カットラスから降りろ」
「はい!」
宙賊が大人しくコックピットをでる。
「そいつは賢い奴だ。丁重に扱ってやれ」
「へえ! ――大人しくしていたら沈めたりはしない。来い」
アルフロズルのクルーたちは宙賊を縛り上げず、両腕を掴んで連れていった。
一人がカットラスに乗り込んで、通路に消える。アルフロズルもまたこの基地内に隠してあるのだ。
「次だ」
一機だけ引き返そうとしていたカットラスを吊り上げるヴァーリ。
しかしこのカットラスは吊り上げられるカットラスを見ていた。
姿を見せた瞬間、ビームライフルを乱射するカットラス。
ヴァーリはシールドバインダーで全弾防ぐ。
「いい判断だ」
感心したかのように呟く隻翼。
一人だけ後退しようとした無謀さと、魔王の仕業と想定していた遅滞のない攻撃はベテランパイロットのそれだ。
「――-やることはかわらん」
ヴァーリはシールドバインダーごと体当たりしてカットラスを吹き飛ばす。
基地の内壁に叩き付け、銃口を突きつけた。
「リアクターを停止するか、死ぬか。選べ」
「降参だ。リアクターを停止する」
宙賊は命優先だ。判断からいってベテランパイロットなのだろう。宙賊におちぶれた理由はわからないが、生存第一は正しい判断だ。
リアクターの停止を確認して、隻翼は通達する。
「降りろ」
「わかった」
パイロットはカットラスのハッチを開けて機体から降りる。
通路からアルフロズルのクルーがでてきて身柄を確保されたパイロットは、ようやく罠にはめられたことを悟る。
「俺達の機体が目的だったのか。悪辣な魔王だな。どっちが賊かわかりゃしねえ」
ため息とともに、相手が悪かったと諦める宙賊のパイロットだった。
いつも応援ありがとうございます! 誤字報告助かります!
消えた三機のホーク、その後です。
ヴァーリの逸話は「一日で成人」「ロキの息子を殺す」「内臓を取り出してロキを締め上げてラグナロクまで封印する」が主なのでワイヤーやデトコードの扱いはお手の物。
さらに固有スキルは分解。ロキの息子の内臓をばらしてロープを作ったことからきたヴァーリ固有スキルです。
とはいっても背面を取れないといけないので、高性能機には手出しできません。
アセンブリの逆。ディスアセンブリです!
隻翼一家の口調が乱暴なのはご容赦を。
子供の頃、筆者は西宮の下町系なので柄が悪いのです。六甲とか宝塚は山の方という表現でしたね!
西宮の阪神市場という戦後闇市の残ったものがありまして。阪神淡路大震災で今は後影もありません。
隻翼一家の口調は子供の頃連れていかれた、黄色と黒の地元の球団ファンの方々がイメージです!
応援よろしく御願いします!




