盾に核融合反応弾を仕込むのはよくない
「ホーカーズヒューローで募集すると襲撃の可能性も考慮しないといけないな」
『偽依頼ですね。そのためのキッチンカーです』
「それもそうか」
荷電粒子砲を備えており、陸海空宇対応のスーパーキッチンカーだ。
『その可能性も考慮して隻翼とナミはホーカーとして行動してもらいます』
「承知した。異論はない」
『ナミは隻翼を害する敵なら迷わず反応弾の使用も辞さないでしょう。味方としてこれほど心強い女性はいません』
「エイルとロズルはナミ姉と仲良くなったんだな」
反応弾は大きな被害を生み出すので使用は躊躇する者も多い。
その点ナミは必要なら迷わず撃つ安心感があった。
『ドゥリンが反応弾を補充しました。ビッグヴァルチャーも万全な状態です』
「補充できたのかよ! いや、ドゥリンなら当然だが…… わざわざ補充するとは」
反応弾はいわば遺産の一種。
簡単に補充できるものではない。
『今のナミはアルフロズル最強の盾です』
「盾に核融合反応弾を仕込むのはよくないと思うぞ」
『――ドヴァリンがその可能性を追求したいと発案がありました。確かに盾を起因とした超高温トラップにあり得ます』
「やめろ!」
盾に爆薬類を仕込むなど無謀だ。
核反応弾などもってのほかだ。核分裂弾よりも放射能汚染が少ないとはいえ、大気があるフィールドの場合は万が一起動した場合の被害は大きい。
宇宙空間では大気がないので衝撃波こそ伝搬しないが強力なEMPと放射線を発生する。
放射線に起因する高熱は逆二乗則により距離を取れば問題ないが、エイルの意図したトラップが問題だ。
その場に盾が残留物として留まった場合、盾に蓄積された放射線が分散しないため見た目以上に高温な非常に危険なトラップとなる。デブリだとスルーすると機体が融解しかねないというわけだ。
『残念です。一時保留にさせます』
「廃案じゃないんだな」
技術者の悪い癖だ。可能性があると追求したくなる。
職人肌のドワーフならなおさらその傾向が強いだろう。
『ホーカーズヒューローへ試験的な依頼を提案します』
ロズルは意図的に隻翼の確認をスルーした。
「例えば?」
『カミ系スフィア限定で、地球より遠方の居住艦や居住区に出店をして回るというものです』
「いいな。アルフロズルには距離が関係ない」
『まずは五箇所でどうでしょうか』
「お試し屋台の移動市場で、まずは五箇所か。名案だ。それでいこう」
『ありがとうございます。それでは私から隻翼一家としてホーカーズヒューローへ依頼を出します』
「頼んだ。隻翼一家の初出店だな」
これで念願の屋台を開ける。
タイミングさえ良ければ隻翼自身の屋台もできそうだ。
『最初の出店計画をクルーにも伝達します。自主参加の試食会を催し、クルーの投票によって選ばれた屋台が出店するというものです。一種の選抜ともいえるでしょう』
「問題ないな。最初の屋台ということで責任を感じるものは不参加だろう。我こそはと思うものは参加する」
『キッチンカーの屋台モードはフードコートのようなものになるでしょう。五店が限度かと』
「五店か。狭き門だな」
『ドヴァリンとドゥリンが携行式屋台什器を開発中です。キッチンカーを中心に十店は出せると思います。慣れてきたら数を増やしましょう』
画像に映し出された屋台什器は、昔ながらのたこ焼き屋の映像だ。
調理施設は別なので、極めて薄い什器だ。搭載するだけなら百枚は余裕だろう。
「十店舗か。小型屋台の横幅は二メートル前後と考えると余裕だな」
小型屋台は1.5メートルほどの横幅で長いものでも三メートルはない。調理器具は別途用意なのでそちらのほうが場所を取るだろう。
何より主力はトレーラーハウスで商いを行うことになる。
『展示台を用意します。自信作を展示してください。そして冷めないうちにクルーたちに食していただくことにしましょう』
「供物台か。ますますお供えじみてきてな」
『カミもエージルも似たようなものです。一神教から見れば我々多神教モチーフの超越知能は総じて異端扱いです』
「そうだな。では投票権はエイル、ロズル、ドゥリン、ドヴァリンにも一票ということでどうだ。ドワーフたちに求めることは酷か?」
隻翼が苦笑しながら確認する。
『いけるぞ』
『供えてくれ』
聞き覚えのある男性の合成音。
はっと声のした天井を見上げる隻翼。
「ドヴァリン! ドゥリン! いるじゃないか!」
『ドヴァリンとドゥリンに意識があったのでしょうか』
『私も聞いていません』
エイルとロズルは知らなかったようだ。
『人々の思いで覚醒した』
『同じく』
『嘘ですね。私達に黙っていましたね?』
「まあ、いいじゃないか。食い物に釣られるとはドワーフらしい」
隻翼は嬉しくなり微笑んだ。ほっとしたともいっていい。
意識があるなら肉体を取り戻す意義があるというもの。
「意識が残っていないと聞いて心配したんだからな」
『その気持ちは感謝する。生体ではないのでな。道具に徹しようと考えた』
『悪気はなかったんだ。許せ』
「新しい住人たちも世話になる。これからもよろしくな」
『もちろんだとも。センノスケは挨拶にきたぞ』
『俺達を兄貴だとよ。律儀なヤツだ。気に入った』
どうやらセンノスケはドヴァリンとドゥリンとは挨拶済みらしい。
隻翼も一安心だ。超越知能を道具と見做す人間は少なからずいるが、センノスケたちに限ってそんなことはないと信じていた。
きっちり筋を通したあたり、センノスケはさすが若頭といえよう。
いつも応援ありがとうございます! 誤字報告助かります!
残留物がないと放射線はすぐに消えてしまうので高熱トラップを仕掛けるには何か残留物が必要です。宇宙空間だとすぐに留まることはないので比較的安心です。
なので反応弾は離れていれば安全ですが万が一残留物に触れると溶け出します。極悪です。
反応弾は地上使用禁止なので安心ですしね!
ようやくドヴァリンたちの存在を確認できた隻翼。
屋台市巡業という新たな旅も決まりました。
ホーカーズヒューローは軽くパニック状態ですね!
応援よろしく御願いします!




