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魔王、帰還す〜追放された傭兵は圧倒的な機動力と火力をもつ機体を駆り戦場を支配する  作者: 夜切 怜
過去との対峙

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宇宙を駆けるトレーラーハウス

 月の宇宙港に旧イチノミヤスフィアの住人が百名余りが集まっている。

 レイジが指定した時間まであと少しだ。

 

「宇宙艦らしくものは見えませんね」

「レイジさんは必ず来る。信じろ」


 巨大な宇宙艦らしくものが見えず不安になる彼等の前に巨大なトレーラーハウスが止まった。

 隣には人型形態になったビッグヴァルチャーがいる。護衛だ。

 トレーラー部分の窓は開いており、運転手が腕をかけている。

 グラサンをかけてノースリーブの隻翼。変装の一種だ。


「久しぶりだな。みんな、待たせたな。百人程度なら多少狭いが全員乗れるはずだ」

「え? このトレーラーは……」

「屋台用のキッチンカーだ。俺のキャリアーは目立つからな」


 星間巡航戦車で入港しようものなら大騒ぎになる。

 換装したトレーラーなら目立つこともないと判断した隻翼だった。


「屋台用?!」


 どうみてもトレーラーという規格を越えている大型車輌だ。そもそもトレーラーは宇宙空間を航行しない。

 これが手に入れた宇宙用キャリアーといっても信じる者はいるだろう。


「俺達の本業は屋台商(ホーカー)だろ? そのためのキッチンカーだ」

「さすがは若だぜ……」

「こんなキッチンカー見たことがねえ」


 大気圏再突入、離脱能力、宇宙空間航行能力を持つ超巨大キッチンカーは宇宙初の可能性もある。

 隻翼の思惑とは違い、宇宙港の管制室では混乱の極みだった。


「おい! 超大型トレーラーが宇宙を飛んでやってきたぞ! 古代のSFかよ!」

「宇宙艇と護衛の戦闘機と申請書にあったのにトレーラーが宇宙を飛んできた。ふざけてんのか!」

「宇宙艇のカテゴリはなんだ?」

「キッチンカーです……」


 申請書を受付した管制士が申し訳なさそうに告げる。


「てっきり宇宙艇にキッチンカーを搭載しているものだと思ったら、宇宙を飛ぶキッチンカーが来るなんて思わないじゃないですか! ボクは悪くない!」

「そりゃそうだろうがな!」

「カグヤ様から連絡がありました。あの宇宙キッチンカーは定期的に飛来して屋台祭りをするので丁重に扱うようにということです!」

「宇宙キッチンカーってなんだよ?!」


 宇宙港にいた人々も、トレーラーをみて大騒ぎしている。

 トレーラーが宇宙空間から飛来して宇宙港に着陸するなど前代未聞だからだ。


「空港が騒がしいな。何かあったのか」

「いや。こいつのせいですぜ。若」


 レイジは昔と変わっていない。相変わらずの破天荒ぷりだ。

 安堵するとともに、笑いを咬み殺すことに必死なセンノスケ。


「とりあえず乗り込んでくれ。先に入った人間は二階だ」

「おう。みな順番に乗り込め!」

「お義兄様。あとでしっかりお話しましょうね!」

「それな」


 チヒロとユノがいる。義理の妹と幼馴染みの関係だ。


「お前らは呼んでないんだが。今からでも間に合う。引き返せ」

「そういうとこですよ。この薄情者!」

「ええ。そういうとこですね」


 肩をすくめる隻翼。

 全員を収容してトレーラーハウスは宇宙港を飛び立つ。

 乗り込んだ者たちはアルフロズルの威容に圧倒された。


 この騒ぎは各地の居住施設で繰り返すことになる。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「宇宙艦と思ったら戦車だった件について」


 ヘイジが周囲を見渡して感想を呟いた。

 中身はほぼ宇宙艦と同等の施設が揃っている。

 人工重力、クルーの個人部屋。大きな食堂まであった。

 三胴車体構造の左右は鍛冶機能ならぬ生産施設能力を持つという。


 アルフロズルの車内には三百五十人以上を収容できる広間もある。

 普段は共有食事スペースだが、数百年以上使われておらず、テーブルも椅子も格納されている状態だったからだ。


 改まって隻翼が集まってくれた人間たちに挨拶する。事実上、新たなテュールスフィアの結成にもなるので演説に近い。

 背後にはナミが控えていた。

 何故か畳が敷き詰められており、全員が正座している。

 紋付き袴に着替えたセンノスケが先頭に座り、背後の者たちがずらりと並んでいる。これでは組の儀式か何かだ。


「なんだよこれ」

「……私が気を利かせた……ロズルちゃんに頼んだ……」

『使われていなかった場所です。問題ありません』  


 ロズルまでそういうものだから、仕方なく上座に用意された上段の間に座る。

 

「上段の間まで再現したのか」

「……隻翼…… 一家のあるじ……」

「そうだな。気を引き締めないとな」


 そういわれると納得してしまう隻翼。意外と流されやすいのかもしれない。


「集まってくれたみんなには感謝する。旅の目的はメールにあった通り。俺個人の目的だ。乗車した以上、みんなはテュールスフィアの住人となる。俺のことは隻翼と呼んで欲しいが、レイジでも構わない」


 全員が深く頷く。

 何か別の任侠団体の集会を思わせる光景に、隻翼本人が気まずい。


「楽にしてくれ。あぐらでも構わないぞ」

「若の挨拶が終わるまではこのままで」


 センノスケがぴしゃりといった。


「相変わらずだなセンノスケさん。では続けよう。俺は傭兵(ホーカー)として太陽系を放浪していてな。つい最近火星のノワール戦役でEL勢力同士の闘争に巻き込まれた。その時、テュールスフィアのゲニウスたちに助けられたんだ。そして超越知能テュールに隻翼の名とこの戦車。そして俺の愛機となるヴァーリという機体を授かった」


 どよめきが走る。超越知能から直に授かったという話も前代未聞だからだ。


「超越知能には生体を持つ者もいた。エイル、ロズルという女性。ドヴァリン、ドゥリンという男性のドワーフ。この四名は俺の料理を気に入ってくれた。――消滅寸前まで、俺の傍にいてくれたんだ」

「……消滅とはただごとではないですね」


 センノスケが配下を代表として確認する。


「生体を維持するためには触媒がいる。テュールスフィアはその触媒も含めてEL勢力に一切合切奪われていたんだよ。住民は殺され、攫われ、逃げ延びた者たちは火星を脱出した。俺達の故郷であるニシノミヤスフィアの最後を連想した」

「仰せの通りです」

「残ったテュール本人にはEL勢力も手出しできなかった。火星の磁場を制御する存在でもあったからだ。超越知能の役割は人類の存続。生体ELは人間がいなくなったあと、テュールを維持するために存在していたんだ」


 隻翼はあの短い日々を思い出す。


「エイルとロズルは俺の料理を笑顔で。――喜んで食べてくれた。俺はその笑顔に惚れた。しかし彼女たちの肉体の限界が迫っていたが、それを隠して最後まで俺と一緒にいてくれた。そして肉体を喪った今もなお、超越知能として俺をサポートしてくれている。この戦車と戦術コンピューターとしてな」

「なんと!」


 肉体が消滅してなお寄り添っているという事実にセンノスケと配下一同が感銘を受ける。

 レイジが惚れ込むはずであった。

いつも応援ありがとうございます! 誤字報告助かります!


ヴァーリ 「ノースリーブとグラサンはいますぐやめろ! 色々と縁起が悪いぞ! 誰のセンスだ!」


レイジはトラック野郎的なものを目指したのですがヴァーリはどうやら違うものを連想したようです。

彼の苦労はつきませんね!


現代のトレーラーハウスは設置型と移動型の二種類あります。

上下水道の配管やガス電気の関係で多くは設置型で、トレーラーできままに移動できるトレーラーハウスは色々と大変そうです。

このトレーラーハウス(仮)は通常のトレーラーハウスよりも二回りほど大きく二階もあるので百人ぐらいは乗るだけなら余裕です。

レストラン風にするなら四十人程度を収容でしょうか。

おそらく太陽系にはこいつぐらいしかないはずです。


応援よろしく御願いします!

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― 新着の感想 ―
サブのトレーラーを4台用意して合体して人型に変形するように改造だな
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