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魔王、帰還す〜追放された傭兵は圧倒的な機動力と火力をもつ機体を駆り戦場を支配する  作者: 夜切 怜
過去との対峙

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ぽんこつオペレーター

「北極冠を生身でナイトホーキングをしたのですか? ありえませんよね。その戦闘ログは?」


ホーカーズビューロー所属のオペレーターとしては、規格外ホークの入手経路が気になるようだ。


「戦闘が発生しなかったからな。戦闘ログも何も、存在しないものは記録できない」

「そういうことですか。よほど運が良かったのでしょうか?」

「一山あてたといっただろう。大当たりを引いたさ」


 悪戯っぽく笑う隻翼。

 事実、結果的にはその通りだ。


「ホーカー業は引退ですか? 機体を強化する余地も少ないと思いますが」

「屋台行商とナイトホーキングは続けるぞ。手に入れたい武装が山ほどあるからな」


 隻翼はアルフロズルの兵装をどうにかして入手したい。

 できれば主砲を復活させたいところだが、かなり危険な代物なので難しいだろう。


「了解しました。引き続き、遺跡に関する情報は提供させていただきます」


 そういいつつ、ミレーネの表情が強ばっていることに隻翼は気付いている。

 隻翼はミレーネの顔をじっと見つめた。


「俺にもいいたいことはあるんだ」

「なんでしょう?」


 恐れていた瞬間が訪れ、ミレーネは身を強ばらせる。


「俺は火星に屋台行商としてのホーカーとして派遣される予定だったはずが、いつの間にかパイロットのホーカーとして登録されていたんだ。どういうことだ」


 ミレーネが気まずそうに顔を横に向ける。


「断ればいいじゃないですか!」

「どあほう。現地までいって断ることができるか。まずどうしてこうなったか、理由を説明しろ」


 隻翼の要求は正当なものだ。


「コンピューターの処理で……」

「三十一世紀にもなってその言い訳は通用しないだろ」

「嘘です。ごめんなさい。……伝達ミスとヒューマンエラーです」

「ミレーネの、だな?」

「はい……」


 ミレーネは力無く肯定する。


「最初は確かに屋台の派遣依頼だったのです」

「そうだな。俺も確認して向かった」

「知っての通り、ホーカーズビューローの依頼にも優先順位があります。かのノワールの英雄ジーンから緊急で腕の立つホーカーを派遣して欲しいという依頼があり、特殊事例での最優先事項の依頼となりました。火星にいるホーカーでホーク所有者のあなたが選ばれたので依頼が上書きされていたのです」

「……伝達ミスとはそのことか」


 隻翼が若干呆れる。

 優先依頼に上書きされたなら当事者に一言あってしかるべきだろう。


「はい…… まったく異なる業種と依頼でありながらも両方こなせる方などそうおらず。私の担当であるあなたが抜擢されていたとは露知らず。そんな事態が発生するとは思いもしませんでした」

「半年間ジーンの部隊にいたがホーカーズビューローから連絡一つなかったぞ」

「そちらから連絡してくださいよ。依頼主からのクレームもなく確認できるはずもありません」

「戦争中にそんな悠長な暇はないし、途中で抜けても依頼主が困るだろ。いつ依頼の上書きに気付いた?」

「ジーンからあなたへの報酬が支払いされ計上された時、我々ホーカーズビューローは依頼が上書きされていたことに気付いたのです」

「確認もせず、誰も気付かなかった、か。ホーカーズビューローから派遣されたホーカーが誰だったか、チェックすべきだろう」

「仰る通りです」


 ミレーネの声は今にも消え入りそうだ。

「なんのためのコミュニケーションオペレーターなんだ。コミュニケーションが取れていないぞ」

「ごめんなさい」


 平謝りのミレーネ。

 彼女の役職の制式名称は指示を伝達するコミュニケーションオペレーターなのだ。


「確かにヒューマンエラーだな」

「大変申し訳ありません。しかしあなたはつつがなく任務を終えてくれました」

「賞金首になったんだが?」

「それは私共の責任ではないですからね?!」

「そもそも俺以外のホーカーなら、こんな事態にならなかったと思うぞ」

「戦死していたでしょうね。こちらもジーンからの報酬確認後、消息を絶ったホーカーは亡くなったと思っていたのです。――これでも心配していたんですからね!」


 最後は逆ギレのようにも思えるミレーネの叫び。


「責任を問うつもりはない。――屋台のほうはもういいのか。半年以上前だが……」


 隻翼としても屋台の出し物には参加したかった。


「屋台商の行商人(ホーカー)はたくさんいますので。すぐに別の方が派遣されました」

「なんでもかんでもホーカーという単語でひとまとめするほうに問題があるのでは?」

「英語が標準語になっているせいです。magazineだって雑誌と弾倉、その単語のみでは区別つきませんよね?」

「ホークの傭兵をホーカーと名付けたヤツが問題だな」

「それを私にいわれても。屋台のホーカーだって歴史がある表現ですよ」

「俺が屋台派遣の依頼を好んでいることは知っているよな」

「存じております」

「……仕方ない。ぽんこつオペレーターへの追求はここまでにしておこう」


 隻翼はわざとらしく大きな溜息をついた。


「誰がぽんこつですか!」

「人材派遣業なのにアバウトすぎるだろ」

「うぅ、ホーカーが私をいじめる」

「隻翼と呼べ。これは貰った名だからな」

「そうそう。コードネームなんですが、いっそ魔王にしちゃいません?」

「自らお尋ね者と宣伝してまわるような趣味はないぞ」

「屋台の宣伝にもなるかと……ダメですね」


 隻翼の片眉が吊り上がった様をみて、ミレーネも諦めた。


「どうして魔王なんですか? 説明を求めます」


 ミレーネが慌てて話題を変えた。


「火星の連中が俺と俺の新しい機体を、ジーンに力を与えた北の魔王の刺客と誤認したからだ」

「そこまでの戦闘力なんでしょうか? いえ。そうなんでしょうね。宇宙艦を二隻も破壊したそうですから」


 ホーカーズビューローも所属不明機の魔王と呼ばれるホークの戦闘データは確認している。

 本人から登録されるとは想定外だった。


「エンジンを一基破壊した程度だ。おおげさだな」

「ホーク単機で可能な所業ではありませんからね?」

「可能なホークもあるさ」

「なにがどうやったらスパタから規格外のホークに乗り換えることができるんですか?」

「ホーカーズビューローのヒューマンエラーが主因だな。感謝する」

「皮肉しか聞こえないんですが」

「ばれたか」

「あまりいじめないでください。本当に心配していたんですよ……」


 さすがに涙目のミレーネに対して隻翼もからかうことをやめた。


「ま、ご覧の通り元気だ。信頼できる仲間もできて元気にやっている。今まで通り、情報を斡旋してくれたらいい」

「信頼? 私よりもですか!」

「ミレーネよりよっぽどだ。じゃあな」

「ちょっと! 待ちなさ――」


 隻翼は無慈悲に通信を切った。


お読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!


依頼内容と任務内容が異なることなど、この業界?にはよくあること。

任務にも優先順位があり、やはり高額な依頼ほど優先されます。

相反する内容の場合は、ホーカーズビューローによってそれぞれ別の当事者に割り当てることになります。

今回はそれがなかったということで、屋台行商から傭兵派遣に切り替わったことをミレーネが見落としていたということになります。

隻翼にとってもよくあること、なのです。


東京から早々に帰宅できたので更新できました! 岐阜の大雪で新幹線があやしかったので。

今回も大きな収穫がありました。後日詳細を書きますが今回はヴァルケンやFM2~3のシナリオ、ゼノサーガシリーズの脚本やシナリオを担当した方に色々なお話をする機会に恵まれました。

SF作品としてもロボット作品としても先駆者ともいえる方であり、これを機に自分も教えを請わないといけませんね! 大変刺激になりました。

少しでも作品に反映できるよう頑張る次第です。


よろしければ星評価、イイネ、ブクマ等で応援よろしく御願いします!

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