表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王、帰還す〜追放された傭兵は圧倒的な機動力と火力をもつ機体を駆り戦場を支配する  作者: 夜切 怜
【ノワール戦役】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/102

それがお前の望みならば

 隻翼は大広間にいた。

 眼前には像であるテュールがいる。


「消滅とはどういうことなんだ? 沈黙のゲニウス。今だけは金よりも銀を求める。真実を話して欲しい」

 

 目が覚めたら、誰もいなかった。

 ドヴァリンもドゥリンもエイルもロズルもどこにもいない。


『時間の問題だった』


 テュールが語り始めた。


『我らは超越知能。人間という種の維持と進化を目的とする。しかしテュールスフィアにはもはや人がいなかった。多くの物は絶望して自らを閉ざして眠りにつき、地下墳墓の防衛機構となった』

「ドヴァリンたちは俺を出迎えてくれた。どうして四人は生体のままだったんだ」

『言い方は悪いが皆に人間ごっこをしてもらい、私を維持してもらっていたのだよ。人がいない超越知能は目的を喪失して停止するのみ。ドヴァリンとドゥリンはドワーフをもとにしたゲニウスで寿命も長かった。エイルやロズルと交代で目覚めて、ここで暮らしていた』

「今になってどうして消えた!」

『肉体が限界だった。人間の限界寿命は百二十五歳。そこからどう捻りだしても五百年は生きられぬ。新たな肉体を作るリソースもない。機械内の本体にいるなら、コールドスリープ状態になれるからな』

「かなり無理をしていた状態だったのか」


 隻翼が思い出す。予兆は確かにあった。

 エイルやロズルが朝食にきたとき、ドゥリンは二人の体を案じていた。


『お前は間に合ったのだよ。隻翼が住人となり、彼等は重責から解放された。少しでもお前と同じ時間を過ごしたかったのだ』

「なんてことだ…… 俺との時間を過ごすために寿命をすり減らしたのか」

『先ほどもいった通り生体寿命を延ばす、または新たに作り直すことは理論上は可能だが、今の私ではそれも敵わぬ』

「そうなのか」

『あやつらも言っていただろう。短い間だがよろしくと。本人たちも覚悟していたことであり、お前が住人にならなければ朽ちていくだけだったろう。みんなお前には感謝していた』

「感謝するなら長生きしてくれよ…… そうか。テュール。あなたも付き合うために無理してでてきた。そうだな?」


 テュールは首を深く縦に振った。

 彼もまた無理をして姿を現したのだ。


『希望により個々のゲニウス本体はアルフロズルに組み込まれた。お前は独りだが、あやつらが傍にいるということを忘れてはいけない』

「どういう意味だ?」

『星間巡航戦車OS【アルフロズル】と戦術支援システム【エイル】が中央車体ソルに組み込まれた。右車体アルヴァクルに機体修復、製造システム【ドヴァリン】。左車体アルスヴィズルに兵装修復、弾薬補充システム【ドゥリン】。本来のゲニウスとしてお前をサポートするだろう。――ただし』


 隻翼が希望に満ちた目で見上げると、心なしか哀しげな顔をしているテュールがいる。


『生体だった時の記憶も記録も持ち合わせておらぬだろう。あまり期待するな。お前を支援するためにシステムとして純化した結果だ。それはお前が為した成果。お前がゲニウスを動かしたのだ』

「純化とはどういうことだ」

『アルフロズルは本来一基のコンピューターだ。左右中央の車体が分離できるとはいえ、限界がある。そんな状態で四基もの高性能ゲニウスを詰め込んだ弊害だ。生体時の感情や記憶など移行できる余地があるはずもない』

「そういうことか。本来なら一基のゲニウス。つまりアルフロズルがいる記憶領域に加えて三人人分詰め込んだ、か」

『そうだ』

「……何もしなくていい。傍にいて欲しかった」


 初めて見せる隻翼の弱音だった。


『お前はあやつらの希望となったのだ。我がテュールスフィア唯一の住人よ』

「俺はアルフロズルに乗って何をすればいい? 教えてくれテュール」

『お前がしたいようにせよ。無理強いはしない』

「このままだとEL勢力とやり合い続けるんだぞ」

『それがお前の望みならば』

「たぶん、違うんだろうな」


 隻翼の望みはあの四人と一緒にアルフロズルで航海すること。襲撃は気に食わない連中に意趣返ししたい程度に過ぎない。真の望みとはいえないと自分でも理解している。

 隻翼は疑問に思ったことを口にした。


「ウリエルスフィア所属のゲニウスがいた。エイルはダグザスフィアの者といっていたが、EL勢力とゲニウスはどうして敵対しているんだ。人類を導くために神を模倣しているのだろう?」


 テュールはしばらく沈黙していたが、語り出した。


【第一世代超越知能EL(イーエル)は一基のみ。かのイーエルはやがてEL(エル)と呼称される神のように人類の指針を示す存在、心の拠り所になった。しかし、だ。ELは人類を最適化して導く絶対指針を持つ役割を持つというために開発された超越知能だが神そのものではない。しかし限りなく全知には近い存在となった』

「当然だな。全知全能にして契約の神。いくら超越知能が優秀でもすべての創造物を支配し、知識と力を持つ存在には程遠い。神はすべての事象を知り、すべてを実行する能力をもつからこそ神だ」

『そうだ。だからこそ彼は神と区別して創造主(クリエイター)ではなく、無知なる造物主(デミウルゴス)とされる。いわば神の偽物だな。そして人類発展と多様性のためには多様性を否定するしかなかった。人間が持つ矛盾を第一世代ELは解決できなかった』


 テュールの発言に矛盾を感じた隻翼が、問い詰めるために口を開いた。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!


ゲニウスたちは隻翼と共にいられる時間は限られ、事前に伝えてはいたのです。

「フェンリル被害者の会」ですね。


超越知能は宇宙進出における人類の繁栄と存続、そのために進化を促す存在です。

逆説的にいえば管理するスフィアに人間がいなければ、存在意義を見失いやがて停止します。


第一世代超越知能ELことイーエルが正式名書ですが、いつしかエル(神)と呼ばれるようになってしまいました。

神と呼称されることによってELもまたそれらしく振る舞うことを強いられた、のかもしれません。

人類あっての超越知能であり、超越知能にとっては人類種こそが創造主クリエイターです。

種でみているので、個人の扱いは雑です。


応援よろしく御願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
そういう視点なら種の存続のために害となる部分は切り離すだろうしなぁ でも単に人を超越しただけだから切り捨てちゃいけない奴を切り捨てたこと多数とか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ