表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王、帰還す〜追放された傭兵は圧倒的な機動力と火力をもつ機体を駆り戦場を支配する  作者: 夜切 怜
【ノワール戦役】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/102

標準化と階位

 エイルが自嘲を思わせる笑みを浮かべる。


「第二次太陽系戦争はゲニウスの技術と人間の確保です。超越知能は人間の進化、存続のために生み出されました。そのためにも人間というリソースは略奪の対象でもあったのです。――本末転倒と笑いますか?」

「笑う。存続するために必要な人間を戦争ですり減らしてどうする」

「人間全員が必要なわけではありませんから。優秀な人間と言い換えることができるでしょう。少なくともEL勢力にとって住人層はカウントされていません」


 隻翼が眉をしかめる。ジーンの話と合致したからだ。


「現在営まれているEL勢力文明の話をしましょう。火星でのEL勢力が管理するスフィアでは高等学校(ギナジウム)の試験によって十代前半の時点で人間をランク付けします。現行EL勢力の方針は優れた人間をより純化、発展させて階位を設定します。平準化から外れることを嫌います」

「階位? 平準化にもランクがあるということか」

「ありますよ。より優れた人類を作り出す、進化するべきと認められた人間が数段階役割に応じて。そしてそれ以下の住人階級です。人間は教育環境と個人の才によって大きく変質します。世代を重ねることによって上層と下層の差が開き選別される制度です」

「人間の均一化ではなく、階位内による平準化ということか」


 均一化はすべてを同じ状態にすること。平準化は効率よくバランスを取ること。似ているようで両者は違う。


「下層に流れてしまった場合、並大抵の努力では公民になれません。何故ならば住民階級は最低限の教育を施し、政治や学問の世界など遠いものだと思わせることがELの方針だからです」

「なんて平準化だ」


 優れた容姿と身体能力、長寿命。

 進化するべき最高ランクの人間と比較しても、超越知能と人間の子供だったジーンは平準化から大きく外れていたのだろう。


「EL勢力の方針ですから」

「一種の愚民化政策ではないのか。人間の進化を促す超越知能とは思えない」

「それは違います。公民階級の教育レベルは洗練されて進化しています。中位ランクはその予備で、公民階級の教育がフィードバックされて進化してます」

「下もいるだろう?」

「低層の住人は最低限の教育を受けて、文字の読み書きや四則程度の数学を学びます。超越知能が管理する以上、数字の意味もわからないと何もできませんから。逆に政治や経済にはあまり興味がわかないように適度の娯楽と労働を与えられています。これらのランクから公民が生まれる可能性もありますしね」

「苛烈な教育社会だな」

「適者生存ですよ。生まれが重要になり、運の要素もあります。EL勢力が大切に育てた公民階級が宇宙艦同士の戦争で一掃された事例はいくらでもありますから。人類を生存、進化させるための方針はELやゲニウスによって異なってきます」

「その平準化から外れた事例がジーンなのか」

「今回の追放は平準化が根底があることは否めません。隻翼の故郷にも似たニュアンスの格言はありますよね」

「出る杭は打たれる。ルテース軍と寝返ったバーガンティ軍にとってはゲニウスの血を引き突出しすぎていたジーンは交渉材料にしやすかった、か」


 少なくとも彼がいたスサノオスフィアは露骨なランク分けなどなかったことを思い出す。

 しかし隻翼はジーンが殺された理由はそれだけではないようだと考えている。他の要因もあると推測しているのだ。


「我が主ティールはバーガンティ勢力はミカエルスフィアに吸収されると踏んでいますけどね」

「どういうことだ?」

「ヴァレンティアはノワール海を挟んでいますから。ルテース軍が所有するノワール地方と地続きです。地表の自治権も百年持つかどうか。遠からず土地を捨てて宇宙へ逃げるしかなくなるでしょう。地政学的に国境の狭間にある領土の宿命ともいえますが、問題はそこではありません」

「別の問題?」

「本当の敵は強大で、今の隻翼とホーク一機では無駄死にするだけです。一矢報いて死ぬという覚悟は結構ですが、効率的に敵に損害を与えて目標を達成しなければ結局あなたはジーンのために死んで彼女の遺言に背くことになります」

「そうだな」


 エイルの語る言葉は辛辣だ。

 戦闘に関してはいつになく厳しい。


「スフィアを敵に回すのはもっと後。とくにウリエルスフィアは無視しても構いません。真の敵はミカエルスフィアでしょう。作戦中にジーン追放とオリフラム部隊解散を実行したカール総司令と大統領マイケルです。しかし彼等はひとまず置いておきましょう。まずはジーンの直接的な死因となった二人を優先すべきです」

「了解した」

「先程いった通り、当初の戦略目標をバーガンディ軍宇宙戦闘艦ルーアンとその所属部隊パイロットライオネルと宇宙居住艦マルニーのピーターに絞ります。異存はありますか?」

「ない」


 手にかけた者こそ隻翼だが、ジーンを誘い出し追い込んで処刑した者はその二人だ。

 最初の戦略目標としては隻翼も異存がない。


「一機のホークでできることなど限界がある。俺もそれぐらいは理解している」

「問題はそのあとです。宇宙艦ルーアン、宇宙居住感マルニー。撃墜は厳しいと思いますが、成し遂げた場合の死者は数千から二万人近くなるでしょう」


いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!


人間の標準化と階位は古いイギリスの教育制度や欧州に採用されている現在のギナジウム制度を参考にしています。ギナジウムは古代ギリシャから伝わる教育施設ですね。

現代の用法は中高一貫校的な意味合いです。


過去ではイギリスでは11歳で修学コースと労働者コースに分かれていました。イレブンテストといいます。

現代では代表的なドイツのギナジウムでは10歳のテストで基本学校→職業学校で労働者訓練、専門学校(成績優秀なら大学)、そしてギナジウム進学のエリートコースに別れます。

イギリスの受験戦争の様子は実写版の「クマのプーさん」で垣間見ることができます。

北欧も同様の制度を採用しており、フィンランドだけ抜けました。

そういう意味では日本は理念で教育環境は充実しているといえるかもしれません。


作中の火星ではEL勢力はもう少し人道的な教育が施されています。現代二十一世紀の10歳分岐よりは手心が与えられています! たぶん。


応援よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ