65話 影で動く者達
こんにちは!作者です!
今回で夏休み編も終了です!
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
龍空高校には無断で作られた地下研究室がある。家主はサナ・クリスタル。使用されていない倉庫から出入りが可能である。
そんな地下研修室で今、サナは診療台に寝かせているソノの記憶の封印を解いていた。
「………」
無言の状態で空中に浮かぶ複数のディスプレイや魔法陣を操作するサナはかなり集中しており、目を瞑って大人しく寝転ぶソノは、チラチラと片目を開けて様子を伺うが、話しかける雰囲気ではないと察すると、黙って終わるまで待つことにした。
「オーケー、今日の分は終わったわよ。」
10分ほど集中し続けたサナは、操作を終えると同時に大きく背伸びをする。
「いつもすいません、サナさん。」
ソノが診療台から下りながら謝る。
「別にあんたが謝ることじゃないわよ。イルファがあんたの記憶を封印したのが悪いんだから。」
サナは2人分のブラックコーヒーを用意し始める。
「あの…気になっていたんですけど、何でイルファさんは記憶を封印したんですか?」
ソノが疑問を口にする。
「魔法を使う時、記憶の役目は取扱説明書みたいなものよ。いくら魔力が高く、強力な魔法を習得していても、魔法の発動方法を知らないと意味がない。だからイルファは記憶を封印することで、あんたが青幽鬼魔法を使えなくしようとしたんでしょ。」
「そうだったんですね。ご説明ありがとうございます。」
ソノがペコッと頭を下げて礼を言う。サナは気にしないでと伝える。
(多分、それ以上にソノが『自分の出生』を思い出すことを恐れているのね。まぁ正直、こればっかりはイルファに同感するけど。──だとしても、絶対に封印は解いてやるけどね。)
そう思いながら、サナはソノにブラックコーヒーが入ったコップを渡す。2人は互いに近くの椅子に座ると、コーヒーを飲んでひと休みする。
「あの、サナさんは何処かに行ったりしないんですか?」
ソノが唐突に質問する。
「別にそんな予定はないけど。」
難しい本に視線を落としながらサナが特に考えることなくさらっと答える。
「そう…ですか。」
ここで会話は途切れ、暫し沈黙が発生する。その時、サナはソノの声が落ち込んでいることに気付き、先程の質問の意図を理解した。
「もしかしてあんた、どこか行きたいの?」
本を閉じて、ソノに視線を向ける。
「えっ!あ〜いや、せっかくの夏休みなので…」
ソノが指先を合わせてモジモジする。
「シャインやエアルとかは?」
「先程NELIを見たら、どうやら皆さん用事があるみたいで。」
「………何処に行きたいの?」
サナは空気を読んだ。
「──!!今日からルコルコの夏の新グッズが発売されるんです!」
ソノが目を輝かせる。因みにルコルコとは、氷神魔法を使い手のアイドル──ルコード・フリズの愛称である。
「はいはい。じゃ、早く出発の用意をしてきなさい。」
露骨にテンションが上がるソノを見て、サナはクスッと笑いながら告げる。ソノは元気いっぱいにハイ!と返事をすると、準備のために急いで研究室から去っていった。
1人となったサナも外出のための準備をしようとした時、研究室に置いていた水晶玉がぼんやりと光り始めた。するとサナは表情をスッと真顔に戻し、水晶玉にそっと触れると、
「よう、サナ。」
水晶玉から聞き慣れた男の声が聴こえてきた。
「あんたが通信をしてくるなんて珍しいわね。」
冷たい声で応えるサナ。
「お前の声が……久々に聴きたくなってな。」
通信相手の男が色気のある声を出す。
「本気で言ってんならぶっ飛ばすわよ。──で、何の用?今から出掛けるから準備したいんだけど。」
「んだよ、ちょっとは乗れよ。──用件は1つ。『例の計画』の進捗状況報告だ。」
声色を戻し、通信相手の男が本題に入る。
「……少し前にもしたと思うけど。」
サナが呆れた態度をとる。
「御上がうるせぇんだよ。形だけでもいいから報告をくれ。」
「はぁ…直近の報告を変わらないわ。あとは彼らの魔力構造を調べ終えたら計画は実行できる。」
「その魔力構造の調査にかなり時間かかってんな。もう何年もしてるじゃねぇか。」
「私も最初はすぐに終わると思っていたけど、魔力構造って一人一人微妙に違うのよね。だから発動範囲内の全員分把握しなきゃいけないことが分かった時は、流石の私も心が折れかけたわ。」
「はは、心中ご察しするぜ。──オーケー。あとは適当に理由つけて報告しておく。」
「任せたわ。──そうだ、あんたってイルファって知ってる?」
サナが話題を変える。
「イルファ?あー…確か研究施設から消えた女だったか?」
「そのイルファなんだけど、こっちで生きていたわよ。」
「マジか。どっかで野垂れ死んでいると勝手に思っていたぜ。」
「革命軍っていう敵対組織の幹部をしているわ。」
「組織の幹部か…。こっちの事、変に喋ってなきゃいいが。」
通信相手の男が懸念する。
「少なからず、組織のボスには筒抜けでしょうね。」
「だろうな。ま、邪魔な存在になるんだったら殺してしまって構わない。その辺の判断は任せる。取り敢えず今は計画を進めることが優先だ。御上ども為にも頼んだぜ。」
水晶玉から光が消え、男との通信が切れた。
(あいつ等の為なんて冗談じゃない。私は…私の為に計画を完遂してやるんだから。)
サナは心の中で固い決意を持つと、外出の準備を始めるのであった。
サナの地下研究室とは違う研究室。サナの地下研究室とは違い、こちらの研究室は最先端の機械がふんだんに搭載され、近未来的な部屋となっている。
そんな研究室に、とある制服の上から白衣を着用する少年が試験管に入った赤い液体を眺めていた。
「それは貴方が魔法で集めたサンプルですか?」
白衣の少年とは別で、黒縁眼鏡をかけた少年が入室して早々問いかける。
「部外者が勝手に入って来ないでくれませんか。」
白衣の少年が黒縁眼鏡の少年に警告する。
「まぁそう言わずに。別に完全部外者ではないのですから。」
黒縁眼鏡の少年は軽くあしらいながら、近場にあった椅子に着席する。
「……何の用ですか?」
ハァと溜め息をついた後、白衣の少年が用件を尋ねる。
「貴方が新たな『柱』となったと耳にしましてご挨拶を、と思いましてね。」
黒縁眼鏡の少年が訪れた理由を告げる。
「そうですか。ならばこれで目的は終えていますので、どうぞお引き取り願います。」
白衣の少年が睨みつける。
「えらく毛嫌いしますね。互いに認知はしていましたが、こうして会話をするのは今日が初ではないですか。」
黒縁眼鏡の少年がわざとらしく悲しいリアクションをする。
「僕からすれば先輩は得体の知れない人物なんですよ。そんな人が自分のテリトリーにズケズケと入ってきたら、このような対応になるとは必然でしょう。」
「ま、それもそうですね。では、去る前に少しご質問を。この試験管に入っている液体、これは『血』ですよね?この血で何をするつもりですか?」
「……『人工魔法』。先輩にはこれだけで通じるでしょう。」
「………成る程、理解しました。ありがとうございます。それでは、さようなら。」
黒縁眼鏡の少年はニコッと笑った後、椅子から立ち上がって研究室を去ろうとする。
「待って下さい。こちからも最後に質問させて下さい。」
白衣の少年が呼び止める。
「何でしょうか?」
「結局、貴方は何者なのですか?──ヒューズ先輩。」
白衣の少年が、黒縁眼鏡の少年──『ヒューズ・クオーツ』に問いかける。
「ただのしがない高校生ですよ、ヴァン・ピレブロード君。」
ヒューズは蛇帝高校の制服の上から白衣を着用する、黒色ショートに赤いメッシュが入った髪に真紅色の瞳をもつ少年──『ヴァン・ピレブロード』に対して、明らかに適当な返答をすると、研究室を後にした。
「……食えない人だ。」
ヴァンは不信感を抱きながらも研究に戻るのであった。
──シャイン達は各々の夏休みを過ごした。
──そして時は流れ、2学期が始まる。
──高校2年2学期、高校生活最大級イベント。
──『修学旅行』が今、始まる。
──舞台は自然の国、『シュッドサウス』。
本日はお読み下さり誠にありがとうございます!
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さて!本編の最後にも触れたように、次回から『修学旅行編』が始まります!
何事もなく、シャイン達が修学旅行を楽しんでくれたら良いんですけどねぇ〜…
気になった人は気長に待っていただけると幸いです!
それでは次回をお楽しみに!




