55話 越えられない壁
こんにちは!作者です!
今回は1話完結にしてみました!久々に戦闘描写をかけて楽しかったです!
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
とある日の教員会議。議題は毎年恒例、12校の魔法科高校による大会──『KING OF MAGIC』、通称KOMの代表選手決めであった。
「えー、今年からKOMのルールが色々と変更されるようです。その中でも一番の変更部分は、対戦方式が2対2の『ダブルス』になることです。1人の代表選手を決め、その代表選手が自らパートナーを選ぶ、という形らしいです。」
進行役の男性教師がタブレットを見ながらルールを読み上げる。
「では、学校側が決めるのは従来通り代表選手のみで良いということですか?」
1人の教師が質問する。
「そうですね。しかし、代表選手が連れてきたパートナーがルール違反していないかの審査は必要みたいです。──では改めて、今年の代表選手を決めましょう。」
進行役の男性教師が本題に戻した。
『ジニアス・ナレズ』。3年3組。キッチリ七三分けの黒髪に青色の瞳をもち、フレームレス眼鏡をかけている。授業態度は模範的。成績優秀で運動神経も優れており、人間関係も悪くない。正に絵に書いたような『優秀な生徒』である。
そんな彼が今、人知れずとある人物の下駄箱に一枚の紙を入れ、その場から去っていくのであった。
雨が降る6月。今日も今日とて雨が降る。傘を差す生徒達が登校してくる中にシャインの姿もあった。
「おはよ、シャイン。」
背後から挨拶をされたシャインが振り向くと、そこにはレビィが立っていた。
「おう。」
短く返事をして向き直したシャイン。2人で仲良く校舎内に入り、下駄箱で上履きに履き替えようとした時、シャインの下駄箱からひらりひらりと1枚の紙が落ちた。
「なんだ?」
シャインが紙を拾い上げる。そこには達筆な文字で『果し状』と書かれていた。
「シャイン、なに持ってるの?」
レビィが話しかけてきたので、シャインは無言で果し状を見せた。
「これ、果し状じゃない。誰からそんなに恨みを買っているの?」
「あ〜…どれのことだか分かんねぇや。」
該当する出来事が多く、1つに絞れないシャインに対し、レビィは大きな溜め息をついて呆れるのであった。
「『放課後、グラウンドで待つ。武器を忘れるな。ジニアス・ナレズ』か。」
教室に入ったシャインが、いつものメンバーといながら果たし状の内容を読み上げる。
「こりゃ面白くなりそうだな。」
野次馬になる気満々のスノウがウキウキする。
「ジニアス・ナレズ…この人、確か『前KOM代表選手』の方ですね。」
ヒューズが送り主の正体を告げる。
「シャインの前の人ってことは、その人も1年生で代表選手になったってこと?」
レビィが尋ねると、ヒューズが頷く。
「しかも1位タイという成績ですからね、実力も本物でしょう。」
「で、シャインはどうするの?その果たし状、受けるの?」
アレンがどうするのかシャインに尋ねる。
「強ぇ奴がわざわざ喧嘩売りにきたんだ。戦わねぇと損だろ。」
ウズウズしているシャインがニヤッと笑う。
「そういえば、そういう性格だったね君は。」
忘れた頃に現れるシャインの戦闘狂の部分に、アレンは苦笑いした。
ここでチャイムが鳴り、教室に担任のナナリーが入ってきた。シャイン達は一度解散し、放課後まで待つことにした。
時は流れ放課後。降る雨の強さは増し、大雨となっていた。
「こんな雨の中、ホントに待ってるの?」
エアルが大雨の空を見上げる。
「行ってみれば分かるだろ。」
シャインは傘を差し、指定されたグラウンドへと向かった。他のメンバーもシャインと共にグラウンドへ向かう。
グラウンドの真ん中に、彼はいた。傘も差さず、雨に打たれながら待つ彼の目には覚悟が宿っていた。
「やる気充分らしいな。」
シャインは傘を畳むと、レビィに手渡した。そして同じように雨に打たれながら彼に近付いた。
「よう、あんたが果し状を送りつけてきたジニアス…先輩か?」
「いかにも。私はジニアス・ナレズだ。君はシャイン・エメラルド君で間違いないかね?」
「ああ。」
「そうか。よくぞ私の果し状に応えてくれた。」
「売られた喧嘩だ。買わなきゃ男が廃るってもんですよ。──で、何で果し状なんて俺に送りつけたんです?」
「それは、君をKOM代表選手の座から降りてもらうためだ。」
「──?まだ代表選手は決まってないのでは?」
「ああ、そうだ。しかし、去年の成績や君の実力…君以外を選ぶ理由がない。十中八九、代表選手は君になる。」
「で、代表選手に選ばれた時にはそれを辞退しろってことっすか?」
「そういうことだ。」
「成る程、別にいいっすよ。俺はKOMに拘ってないんで。いくらでも代表選手なんて譲りますよ。」
シャインはあっさりとジニアスからの要求に応じた後、話を続ける。
「でも先輩のその目、全く納得していない感じっすよね?」
シャインが付け加えた質問に対し、ジニアスはピクッと反応する。
「多分ですけど、代表選手の座の話は上辺だけで、本当の狙いは…純粋に俺を倒したいだけじゃないっすか?」
「……よく分かったな。」
ジニアスが見抜かれたことにフッと笑って見せた。
「ははは!やっぱりな!だが、俺もそれくらいシンプルな方が燃える!」
シャインは戦闘狂の笑みを浮かべながら刀を抜刀する。
「では、始めようか。君を…『天才』を超えるために!」
ジニアスは異空間から槍を取り出して構えた。
同時に地面を蹴ると、リーチの差を活かし、ジニアスが先手で攻撃を仕掛けた。
ジニアスの素早い二撃の突き攻撃、シャインは動きを見切って風砕牙で防ぐ。同時に直感で理解した。
──この男、強いと。
(あとこの先輩…!攻撃に…!)
シャインが思考を巡らせる前に、ジニアスがすぐに攻撃を仕掛ける。
「[濁流波]!!」
ジニアスは距離を空けると、ぬかるんだ地面に横薙ぎをし、広範囲の濁った大波を発生させ、シャインへと放った。
(水属性の魔法か…!)
シャインが風砕牙を構える。
「[爆風刃]!!」
風砕牙を振るい、前方に爆風を発生させ、迫る濁流を吹き飛ばして風穴を空けた。風穴を通り抜け、濁流を回避したシャインが目にしたのは、隆起した土の柱が何本も立っている光景であった。
(水属性じゃねぇ…!地属性魔法か!)
シャインがジニアスの属性に気付いた時には、ジニアスの術中にはまっていた。
「[跳槍の陣]!!」
次の瞬間、土の柱の死角からジニアスが飛び出してきて、高速の突進攻撃を放つ。シャインは紙一重にそれを回避する。
しかし、この技はここからであった。ジニアスは前方の土の柱の側面に着地すると、瞬時に蹴って再度突進攻撃を放った。縦横無尽に放たれる連続突進攻撃に、シャインは防戦一方の状態となった。
「すげぇ、あの先輩。シャイン相手に善戦してやがる。」
遠目から見守るスノウがジニアスの強さに素直に感心する。
「伊達にKOMの代表選手に選ばれていないですね。」
スノウの隣にいるヒューズも感心する。
「けど、最終的に勝つのはシャインでしょうね。」
サナが告げる。
「どうして?現状だけ見ると負けそうだよ?」
エアルが理由を訊いた。
「あの二人の間には絶対に『越えられない壁』がある。」
「越えられない壁?」
エアルは首を傾げる。
「ま、見ていたら分かるわ。」
サナに言われ、エアルは大人しくシャイン達の決闘を見守るであった。
ジニアスからの猛攻を防ぎ続けるシャイン。
(このままじゃ埒が明かねぇ…!)
無理矢理現状を打開するべく、シャインは高く跳び上がって土の柱の迷宮から脱出した。
しかし、この動きはジニアスによって完全に読まれていた。ジニアスは既に空を向いており、槍投げの構えをしていた。
「[螺旋土槍]!!」
ジニアスが回転を加えた槍を投げた。途中で土の柱を貫通することにより、先端に土のドリルを装着し、攻撃力を跳ね上げた。
この攻撃はこのままでは受け切れないと判断したシャインは、一気に魔力を高めた。同時に髪は黄緑一色に、瞳は黄緑から金色に変化した。
──能力解放。
「[閃嵐渦]。」
シャインは迫るドリル付きの槍に掌を向け、嵐級の威力をもつ竜巻を放ち、ジニアスの槍を包んだ。竜巻の回転は槍と逆回転。それにより槍の回転は完全に相殺され、シャインの元に届いた時には、回転も速度もなくなっており、シャインは容易に回避して槍を掴み取った。
「返すぜ。」
シャインは槍を構え、ジニアスに投げ返した。
「くっ…!」
豪速球レベルで飛んでくる槍を紙一重で回避したジニアスは、地面に突き刺さった槍を抜いて空を見上げた。しかしそこにシャインの姿はなく、気配は視界の下にあった。
「[閃光掌底]。」
光を纏った掌底の一撃がジニアスの顎を捉えた。放物線を描いて吹き飛ぶジニアスは、泥水を撥ねつつ地面に倒れた。
「勝負あり、ですね。」
ヒューズが告げる。
「もしかしてサナが言っていた壁って、能力解放のこと?」
エアルが確認するようにサナに問う。
「そ。先輩には悪いけど、能力解放だけは本当に天賦の才がないと到達出来ない力。あの力がある限り、先輩はシャインを越えられない。」
サナは真剣な面持ちで答えた。
雨は止んだ。シャインは髪と瞳の色を戻し、風砕牙を鞘に納めた。そして倒れるジニアスに近寄り、べちゃっと片膝を立てて座った。
「先輩、俺に能力解放を使うように仕向けたっすね?」
「……何故、そう思う?」
倒れたままジニアスが理由を尋ねる。
「全ての攻撃に殺意がマシマシだったからですよ。」
「はは、そうでなければ能力解放という選択肢を切ってくれなかっただろ?」
「俺が押し負けて死ぬって未来は考えてなかったんすか?」
「君は『天才』側の人間だ。私では到底無理だ。」
「……戦い始める前にも、俺のこと『天才』って言ってましたよね。実際に戦った俺からしたら、先輩も充分天才だと思いますけど?」
「そう思ってくれるとは光栄だな。だが、私は良くて秀才止まりだ。」
「秀才でも充分凄くないっすか?」
シャインが問いかけると、ジニアスは少し間を置いた後、自身の事について語り始めた。
「ナレズ家はいわば天才家族でな、両親も兄も今の職業の中でトップクラスの座についている。だが、私だけは凡人だった。両親からは常に優秀な兄と比べられ、兄からは見下された視線を向けられる。ボロボロになるまで体が鍛え、熱が出るほど頭を使い、枯渇寸前まで魔力を使用して魔法を磨いた。それでも尚、家族は私を認めてくれない。龍空高校に入学し、KOMの代表選手に選抜され、1位タイという記録をとっても、圧倒的な1位でなければ無意味だと一蹴された。そして去年は、君に代表選手の座すら奪われた。私はもう、家族から期待というものを持たれなくなった。」
「だから天才という俺を倒すことにより、天才を越えたという証明をしたかった、と。」
「正にその通りだ。君は能力解放になれる。それは君が天才である紛うことなき根拠だ。そんな能力解放になった君を倒したかったのだが、私程度ではこれが限界だったな。」
最後は自嘲気味にほくそ笑むと、ジニアスは話を終えた。
ジニアスの事情を聞いたシャインは少し考えた後、尋ねる。
「じゃあ先輩は、もう俺に挑んでこないんですか?」
シャインからの問いに対し、ジニアスは黙秘という形で返した。しかし、シャインはジニアスの表情を見てニッと笑った。
「その顔、全く諦めてない顔っすね。──なら、こう言ったほうが先輩としても燃えますかね。」
シャインは立ち上がり、鉛色の雲の間から差し込む陽の光を浴びる。
「俺は天才側で待ってる。さっさと登って挑んでこい。」
背中に陽の光を浴びながら、シャインが楽しそうに笑みを浮かべてジニアスに手を差し出す。
「ふふ…あははははは!!シャイン君、君は最高な天才だ。」
ジニアスは大笑いした後、シャインの手を握って立ち上がる。
「KOM、私の為にも1位をとってくれよ。」
「その方が俺を倒した時に箔が付くからっすか?」
「ああ。勿論だ。」
シャインとジニアスは互いに笑い合いながら、晴れていく空を仰ぐのであった。
──この年、代表選手はシャインに決定された。
──そして今年も始まる。12校の魔法科高校が集い、頂点を決める大会──『KING OF MAGIC』が。
本日はお読み下さり誠にありがとうございます!
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因みにジニアス先輩は、去年のKOM代表選手決定会議(9話)にて、最後までシャインと選ばれていた人でございます。
それでは今回のキャラクタープロフィールは…『スノウ・シルバー』です!それでは〜…どうぞ!
名前:スノウ・シルバー
魔法名:なし。各属性を己に付与する。
戦闘方法:格闘
身長:180cm
体重:68kg
髪:ウルカットされた銀色
瞳:茶色
誕生日:9月25日
血液型:O型
好きな食べ物:焼肉
嫌いな食べ物:味が薄い料理
好きな教科:体育
嫌いな教科:体育以外
キャラクターモデル:『FF13』の『スノウ・ヴィリアース』
【名前の由来】
名前どころか、外見も戦闘方法も雰囲気も、殆どがモデルのスノウですね。当時の私の中でFF13のキャラはかなり影響を受けていますね。ですが、影響は受けているとは言え、スノウ・シルバーは私が生み出した自慢のキャラクターです。
次回から新しくなった『KOM編』が始まります!お楽しみに!




