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始まりは魔法科高校から  作者: 眼鏡 純
5章:西の国

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35話 天秤が傾くのは

こんにちは!作者です!エアル&スノウ編8話目です!


今回は短い回です。次回と合わせても良かったのですが、それはそれで長くなりそうなので分けました。



──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。

 「あ〜そういえば、ナナリー先生いましたね。」

シャインがアハハと苦笑いして誤魔化そうとするが、当然無意味な行動であった。

「笑って誤魔化さない!完全に皆、私のこと忘れていたでしょ!」

ナナリーがシャイン達をギロリと睨んでいく。しかし誰も目を合わさず、バツが悪そうな空気を作っている。ナナリーは大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから話し始めた。

「皆がエアルさんを助けたい気持ちはよく分かる。でもね、生徒達が死ぬかもしれない計画を企てているのを、教師の私が聞いてしまった以上、無視することは出来ない。」

「でもよ先生、このまま──」

「でもよ、じゃない!」

シャインの反論を、ナナリーは大声で遮った。指導室にピリッとした空気が流れ、シャイン達は誰も口を開かなくなった。張り詰めた空気の中、ナナリーが話を続ける。

「あなた達が勇敢で強いのはこの高校に在校している者は皆知っているわ。恐らく下手な教師よりあなた達の方が能力もカリスマ性もあると思うわ。だからこそ、このエアルさんの一件も、『あなた達なら何とかしてくれるかも。』なんて考えてしまう私がいるの。そんな考えをする自分が無力過ぎて殴りたくなるわ。」

ナナリーが机の上でギュッと強く拳を握る。

「そ、そんな…ナナリー先生は私達にとって頼れる先生ですよ。」

レビィが慌ててフォローをするが、

「じゃあその頼れる先生が、エアルさんの件で何が出来ると思う?」

ナナリーからの返しに、レビィは口籠ってしまった。レビィの反応をして、ナナリーは苦笑いする。

「ごめんなさい。意地悪な訊き方をして。でも、これが現実なの。たかが一教師に出来ることなんて1つもない。それに私にはあなた達みたいに勇敢さも強さもない。助けたい、救いたいなんて思いながら、結局保身やその後を事を考えて踏み出せない。」

ナナリーが握る拳を強める。

「でも私は…教師として…!あなた達に傷ついてほしくない!犯罪者になってほしくない!死んでほしくないの!私は…!皆が笑って!楽しんで!良い思い出を作ってこの高校を卒業してほしいの!」

ナナリーの瞳から涙が溢れる。

「だから絶対にあなた達をザーパトウェストには行かせない!これは指導です!分かりましたか!?」

ナナリーは涙が溢れる瞳でシャイン達を見詰める。

数秒間の沈黙の後、シャインが応える。

「ナナリー先生の本音、想い、充分に伝わりました。その上で答えます。──俺達は止まる気はありません。」

「えっ…?」

シャインが立ち上がると、レビィ達も立ち上がる。

「先生は俺達を必死に制止しようとした。それは先生として、そして大人して当然で充分な行動です。だから先生は何も悪くねぇっす。悪いのは先生の言う事も聞かず、一国に喧嘩を売った不良生徒(俺達)だ。何かあったら全部俺達のせいにしてくれれば良い。」

「ダメ…ダメよ!絶対ダメ!絶対に行かせないから!」

ナナリーは立ち上がると、指導室の扉の前に移動し、両腕を広げて行かせない意志を示す。

「『仲間(ダチ)の涙』と『先生の想い』、天秤にかけたら傾くほうは決まっちまってんだ。──だから先生、通らせてもらう。」

シャインは堂々とした態度でナナリーに近寄ると、優しくナナリーの腕を下ろす。そしてそのまま真横を通り、指導室を後にした。シャインに続くように、他のメンバーも次々と指導室を出ていく。

そして最後のレビィが通ろうとした時、ほぼ放心状態のナナリーが尋ねてきた。

「レビィさん、あなたは死ぬのが怖くないの?」

レビィは足を止め、ナナリーに体を向けて答えた。

「いえ、とても怖いです。ですが私だけこの場に残り、もしもシャイン達が死んで独りぼっちなってしまったら、その方が私は耐えきれないです。──それに、私はシャインの夜叉です。例え(あるじ)が行く先が地獄であろうと、共に行くのが夜叉の使命です。」

レビィはペコッと一礼した後、指導室を後にした。

1人となったナナリーは、流れる涙を拭き取ってから椅子に戻ると、ストンと力なく座った。

「はぁ…あの子達には敵わないなぁ…」

そして天井を仰ぎながら、ポツリと呟くのであった。





 少し時は戻り、スノウが過去の話をしている時。

 暗殺部隊隊長ジェノによってザーパトウェストの首都ヨロパへと連れ戻されたエアルは、実家であるダイヤモンド城の謁見の間にいた。そして今、階段の先の玉座に座す、とある人物と向かい合っていた。

 年齢50歳、身長179cm、綺麗にセットされた白髪に黄色の瞳、王族を体現したかような豪華な服を身に纏うこの男。名は『アルバーノ・フィン・ダイヤモンド』。ザーパトウェストの国王であり、エアルの実父である。

 「久しいな、エアル。」

玉座に座ったままアルバーノがエアルを見下ろす。

「ええ、お久し振りですね。お父様。」

冷たい声で返答するエアル。

「髪が短い上、母親と同じ色に染めたのか?」

「髪は自身の覚悟を形にしたかったので切りました。あと、単純にロングがあまり好きではなかったので。髪色は昔からお母様の髪色に憧れがあったので染めました。二度とお父様と同じ色には戻しません。」

淡々と会話をしているように見えるが、エアルの返答にも声色にも明らかな棘があり、険悪な空気が謁見の間を包み込む。

「それで、今更私に何か用ですか?」

エアルが自分が連れ戻された理由を尋ねる。

「愚問だな。家出をした娘を連れ戻したまでだ。それ以上もそれ以下もない。」

「ならば何故、4年間も放置していたのですか?」

「単純にお前を見つけられなかっただけだ。まさか子供だけで国外に逃亡しているとは考えもしなかった。お陰でザーパトウェスト中を探す羽目になった。」

「左様でございますか。」

腑に落ちない顔をしたまま、エアルはアルバーノに背を向けた。

「どこに行くつもりだ?」

「自分の部屋に戻るだけです。もう話すことはありませんから。」

背を向けたまま答えたエアルは、振り返ることなく謁見の間を去っていった。アルバーノも特に止めることなく、去っていくエアルを無言で見送った。




 自分の部屋に戻ってきたエアルが最初に思ったこと。それは4年前のクリスマスの夜の時と全く変わらない状態であることであった。服も家具も劣化しておらず、汚れも埃もない。加えて棚の上に置かれている花瓶の花も綺麗に咲いている。

「何でこんなに綺麗なまんまの?」

エアルが部屋を見渡しながら不思議に思っていると、開けっ放しにしていた扉がコンコンとノックされた。

「それはエアル様がいつでも帰ってこられても良いように、私が毎日手入れしていたからです。」

ずっと聞いてきた優しい声。エアルが振り返るとそこには、燕尾服を着用した70代半ばの女性──ハーグが立っていた。

「ハーグ……ハーグーーーー!!!」

エアルはドバッと涙を流すと、そのままハーグに抱き付いた。

「ご無事で何よりです、エアル様。」

ハーグも瞳から一粒の涙を流す。そして2人は暫くの間抱き合い、再会の喜びを分かち合うのであった。

本日はお読み下さり誠にありがとうございます!

少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価などをお願いします!


ナナリー先生の立場って、本当に大変だと思います。とんでもない問題児達の担任なんですから…。



それではまた明日、お会いしましょう!お楽しみに!

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