33話 クリスマスの逃亡劇
こんにちは!作者です!エアル&スノウ編6話目です!
過去パートも今回合わせて残り2話となりました。
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
噴水広場を出て、細い路地を爆走するスノウ。両手にはお姫様抱っこでエアルを抱えたままである。
「スノウ!このまま駅に向かって!」
抱きかかえられたまま、エアルが駅がある方角を指差す。
「駅に?何でだ?」
器用に障害物を避けながら、スノウが理由を訊く。
「私の部屋の窓から駅が見えるんだけど、ボーッと眺めていたら、0時を回った後に一度だけ貨物列車が発車していることに気が付いたの。」
「それに忍び込むって魂胆か?」
スノウがニッと悪い笑みを浮かべる。
「さっすが!分かってる!」
エアルがパチンと指を鳴らす。
「よし!そうと決まれば急ぐぞ!」
目的地が決まったスノウは、逃げる足を速めた。
夜空を照らした花火は暗闇に消えた。そして同時にエアルの姿も消えていた。案の定、噴水広場は大騒ぎになっていた。
「早く見つけるのだ!アルバーノ様のお耳には入れるなよ!娘を行方不明にさせたなんて、全員打ち首だけでは済まされないぞ!スマイリーマスクにも捜索させろ!」
ステージ裏。全身から冷や汗をかく老人──ゴーマンが騎士達に恐喝まがいの命令を下す。騎士達も右往左往しながらエアル捜索へと動いている。
「ハーグ!君はエアル様専属のメイドみたいなものだろ!何故目を離していた!?」
ゴーマンが燕尾服を身に纏うメイド長──ハーグに問いただす。
「申し訳ございません。私もエアル様の花火に見惚れてしまっていました。」
嘘である。ハーグは1秒たりともエアルから目を離していない。当然、スノウがエアルを抱きかかえて走り去るところも、姿が見えなくなるまで目で追っていた。
「くそっ…!肝心な時に使えん奴め…!」
ゴーマンが怒りと焦りから反射的な悪態をつく。
「ゴーマン様も御付き人ではございませんか。その肩書きはお飾りで?」
悪態を綺麗にカウンターするハーグ。ゴーマンも否定が出来ない為、苦虫を噛み潰したような顔をして、ハーグの前から去っていった。
(エアル様、どうか生き続けて下さい。それが私が願う一番のことです。そしてまた、お会いすることを楽しみにしております。)
ハーグは心の中でエアルを激励した後、スッとステージ裏から姿を消した。
順調に逃走中のスノウとエアルは、目的地である駅が目視で確認出来る所まで到着していた。
「はぁ…はぁ…はぁ…ちょっとタンマ……」
人一人抱きかかえたまま爆走したスノウは流石に息が上がっており、道角に身を潜めつつ、座り込んで休んでいる。
「もう、男の子なのに情けない。」
スノウの前でやれやれと呆れるエアル。何か言ってやりたいが、疲労からそんな元気も出ないスノウであった。
「さて、後は忍び込むだけなんだけど、やっぱ人はいるか。」
道角から駅の様子を伺うエアル。目視で確認出来るのは、数人の駅員と警備員であった。
「その前によ、そのドレスどうにかなんねぇのか?目立つし動きづらいだろ。」
息を整えたスノウが、エアルが現在着用している純白なドレスを指摘する。
「それは思ってた。うーん……じゃあこうしよ。」
エアルは魔法で光の短剣を生成すると、何の躊躇もなくドレスの裾を膝下くらいまで切り落とした。そして最後にチャイナ服のような太腿近くに縦に一筋切れ込みを入れた。
「これでちょっとは動きやすくなったかな。」
クルクルと回って動きやすさを確かめるエアル。
「おい、良かったのかドレス?絶対高いやつだろ?」
「これは私用にオーダーメイドされたドレス。つまりは私の物。自分の物をどーしようと勝手でしょ?」
エアルはニッと笑って気にしていないことをアピールした後、再度駅の様子を伺う。
「あれ?なんか皆どっかに行っちゃった。」
2人が会話していいる間に、駅員や警備員の姿が見えなくなっていた。
「なんか分からないがチャンスだ。今のうちに忍び込むぞ。」
スノウとエアルは忍び足で駅に向かい、改札口に到着した。奥に関係者の部屋があり、そこで警備員や駅員が酒を片手にトランプで賭け事をして盛り上がっている様子が見えた。
(ああいう大人にはなりたくねぇな。)
(同感。)
スノウとエアルは勤務中にサボる大人達に呆れつつ、そのまま駅内へと侵入した。
駅のホームまで到着したスノウとエアル。そこにはお目当ての貨物列車が停止している。幸運にも貨物列車付近には誰もいず、忍び込むには絶好のチャンスが到来していた。
「よし、乗り込むぞ。」
「うん。」
スノウとエアルが貨物列車に近付いく。
「やれやれ、駅員や警備員は何をやっているのやら。」
その時、何処からともなく声が聴こえてきた。スノウとエアルは足を止め、周囲を警戒する。すると貨物列車の上に漆黒の霧が発生し、中から黒色の外套を身に纏い、深くフードを被り、不気味な笑顔をした白い仮面を付けている男が現れた。
「誰だてめぇ?」
スノウは喧嘩腰で迎え撃とうとするが、隣のエアルの顔は青ざめていることに気が付いた。
「お、おい大丈夫か?」
スノウが心配すると、エアルは体を震わせながら答える。
「あの仮面…『スマイリーマスク』!ヨロパ直属の暗殺部隊!」
「暗殺…!?物騒なやつが出てきやがったな…!」
スノウが即座に戦闘態勢になるが、エアルがすぐに止めた。
「ダメだよスノウ!あいつはスマイリーマスクの隊長『ジェノ』!殺しのプロ中のプロよ!」
「じゃあよ、あのジェノって奴はこの場を素直に見逃してくれるほど甘い野郎なのか?」
「そ、それは…」
エアルが口籠っていると、ジェノと呼ばれた男が代わりに答える。
「見逃すわけないだろ。銀髪の君は誘拐犯としてこの場で殺す。エアル様は保護して城に連れ戻す。」
「ほら見ろ。何もしなくても殺されるんだ。だったら精々足掻いてやるよ。」
腹を括ったスノウがエアルより少し前に出て、拳を構えた。
「良い覚悟だ。私怨ないが仕事だ。死んでもらうぞ、銀髪の君。」
会話を終えたと同時に、ジェノは一瞬にしてスノウの眼前まで接近した。スノウが反応した時には、既にジェノは外套の内から取り出したダガーを取り出し、スノウの首を狙っていた。
ダガーの刃がスノウの首を切り裂く寸前、ジェノは何かを感じ取り、ピタリとダガーを止めた。
そしてスッとダガーを下ろすと、ジェノはスノウとエアルから距離をとった。
スノウとエアルはジェノの不可解な行動に困惑している。
「やはり、ゴーマン如きの老害からの命では殺しにも身が入らない。──それより、君達が逃げ切れた未来がどうなるか興味が湧いてきた。」
ジェノは魔法の力を使い、貨物列車の扉を開けた。
「さぁ行け。私の気が変わらない間に。」
まるで人が変わったかような言動をするジェノに対し、逆に警戒心を高めるスノウとエアル。
「ほ、本当にいいのかよ?」
スノウが睨み付けながら尋ねる。
「死を望むならば叶えるぞ?」
ジェノはダガーの刃を少し見せる。
「い、いや助かった!サンキュー!」
スノウは礼を言うとエアルの手を取って貨物列車に走り出す。そしてジェノが開けた扉から中に入ると、閉じて鍵を閉めた。
2人が貨物列車に乗ったのを見送ったジェノは、駅のホームの出入り口に視線を向ける。
「70代の老婆が放っていい殺気ではないですよ、ハーグ殿。」
ジェノは影から姿を現したハーグに皮肉を言う。
「あの程度の殺気で怖気付くとは…まだまだですね、ジェノ。」
ハーグがクスッと笑って煽ると、ジェノは仮面の下でピクッと眉を動かし反応する。
「はは、やはり先輩からのお言葉は厳しいですね。」
「もう50年も前のことです。今は只のメイド長です。」
「それは大変失礼致しました。──では、そんなメイド長殿に提案です。私も貴女も、エアル様の捜索及び保護の命令を受けている筈です。しかし、共にエアル様を発見したがまんまと逃してしまった。この事実を馬鹿正直に報告しても、私にも貴女にも不利益にしかならない。故に、この駅での一連の出来事は全て起きなかった、ということにしませんか?」
「よろしいですよ。エアル様達に危害を加えないという私のお願いを守って下さったので。そちらの提案に乗りましょう。」
「お願い……ですか。あの殺気からは到底感じられませんでしたがね。──では、私はこれで。」
ジェノは漆黒の霧に包まれ、その場から姿を消した。ハーグもエアルの無事を願いつつ駅を後にした。
スノウ達の一連の出来事があったことなんて微塵も気が付いていない駅員と警備員達は酒を引っかけているため、全体的に上機嫌である。そんな状態で全員持ち場に戻り、ルーティーン化された点検を済ませると、貨物列車を発車させた。
貨物内の木箱の影で息を潜めていたスノウとエアルは、列車が動き出したことを確認すると、木箱の影から出て、逃亡成功を祝い、パチン!とハイタッチをした。そして一頻り喜び合った2人はその場に座る。
「ところでよ、この貨物列車は何処に行くんだ?」
スノウがエアルに訊く。
「う〜ん…詳しいことは分かんないけど、多分『メソンミドル』は経由すると思う。あの中央の国は他国同士の貿易の仲介をすることによって発展した国だから。」
「成る程。なら、俺等の自由はメソンミドルにあるってことだな。」
「うん、そうだと良いね。」
「でもよ、自由になるとはいえ、お尋ね者にはなっちまうんだよな?やっぱ変装とかした方がいいのか?」
「そうだね…スノウは恐らく大丈夫かもしれないけど、私は一国の王の娘だからなぁ〜…何かしらの変装というか変化は必要かも。」
エアルは自身の体を見て、どんな変装をしようか考える。そして1つ思い付き、即行動にでた。
「よし、これでいこう。」
光魔法でナイフを形成すると、なんの躊躇いもなく、ダイヤモンド如く透き通った白色のロングヘアーを頸くらいまで切り落とした。
「おまっ…!?またいきなり…」
スノウはエアルの大胆な行動にたじろぐ。
「大丈夫。全く後悔してから。元々ロングは鬱陶しくて嫌だったの。それに…私の覚悟を形にしたかったし。」
そう告げるエアルの顔は真剣そのものだった。エアルの真剣な横顔を見たスノウは立ち上がると、エアルの後ろに立つ。
「どうしたの?」
エアルが首を上に向けて訊く。
「その光のナイフ、鋏に変形できるか?」
スノウがエアルが持つ光のナイフを指差す。
「……?うん、出来るけど。」
「髪の毛、整えてやるよ。」
今のエアルの髪の毛は、ナイフでバッサリと切っただけのため、長さなどがバラバラで乱れている。
「えっ?そんなの出来るの?」
「これでもボウビンのチビ共には俺の散髪技術は好評でね。ほら、借しな。」
スノウが鋏を渡すように促す。エアルはナイフから鋏に形状を変えると、スノウに手渡した。受け取ったスノウは手慣れたようにエアルの髪の毛をカットして整えていく。そしてものの数分で、現在の高校生エアルと同じショートのヘアースタイルとなった。
「すご。完璧じゃん。」
手で触り、自身の髪が綺麗になっていることに感動するエアル。
「ま、ざっとこんなもんよ。」
スノウが腰に手をやってフフンと胸を張る。
「えへへ、ありがとうスノウ!」
エアルが満面の笑みで礼を言うと、スノウは顔を赤らめ、反射的に顔を背けた。
「ふわぁ〜…なんかいきなり眠くなってきた…」
張り詰めた緊張感から解放されたことにより、急激な眠気がエアルを襲う。スノウもエアルに釣られてか、同じく欠伸をする。
2人は眠気に負けてしまい、貨物内の隅に移動する。そしてエアル[ウオームライト]をかけから、より暖をとるために抱き合いながら眠りにつくのであった。
本日はお読み下さり誠にありがとうございます!
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一足先に小説内でクリスマスとなりました。クリスマスの文化があるということは、この小説の世界にもキリストの存在があるのでしょうか。
それではまた明日、お会いしましょう!お楽しみに!




