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始まりは魔法科高校から  作者: 眼鏡 純
5章:西の国

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31話 ぎこちない王女

こんにちは!作者です!エアル&スノウ編4話目です!

過去パートもまだまだ続きます!



──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。

 最上級な純白のロングドレスを着こなし、透き通る白色のロングヘアーに輝く赤色の瞳をもつ少女──『エアル・フィン・ダイヤモンド』は、護衛の騎士達より前に出て、立ち尽くす銀髪の少年──スノウ・シルバーに問いかけた。

 「私に何か御用ですか?」

冷たい視線をスノウに送りつつ尋ねるエアル。

「エアル様!下々の者に話しかけるなど…!」

エアルの隣にいるカソックを着用した60代前半の御付きの老人──ゴーマンが怒るが、エアルはキッと睨み付けて黙られせた。

「別に。落としたリンゴを拾っていただけだ。」

スノウは動じることなく答える。

「そうですか。現在手にリンゴを所持しているということは、目的は完遂していますね。何故、その場から動かないのです?」

「深い理由なんてねぇよ。俺でも知ってる顔が近付いてくると思っていただけだ。エアル王女だろ?」

「ご存知でしたか。貴方は……」

エアルがスノウに名前を問いかけた時、周囲の人々のざわめきの中から、銀野良という言葉をちらほらと聞き取った。

「ギンノラ…というのです?」

「ギンノラ?あーそれは周りの奴等が勝手に付けたあだ名みてぇなものだ。あんま好きじゃねぇけどな。俺の名前はスノウ・シルバーだ。よろしくな、()()()()()王女様。」

スノウが告げた言葉に、エアルはピクンと反応する。

「今の言葉、どういう意味──」

「エアル様!これ以上そのような下劣な者と会話するのは王族としての品格が下がります!」

エアルが訊こうとした時、ゴーマンが割って入り、護衛の騎士達も一斉に抜刀してスノウに刃先を向けた。

「おーおー、そっちの王女さんから話しかけてきたくせに、会話しただけで随分の言われようだな。」

スノウはやれやれとポーズをとった後、ギロッと狂犬の如く睨みつけた。その威圧感は熟練の騎士の背筋を凍らすほどであった。

「王族だって只の人間だろうが。」

スノウは捨て台詞を吐くと、スッと人混みの中に戻っていき、どさくさに紛れて泥棒を成功させた。

「追え!先程の子供を捕らえよ!」

ゴーマンが騎士達に命令を下すが、

「やめなさい。これ以上あの者に時間をかけるのは無駄だ。」

エアルが冷たい言葉で命令を上書きする。身分が全てのこの国で、王族からの命令に逆らえる筈もなく、ゴーマンも騎士達もエアルに頭を下げ、命令に従った。

(ぎこちない王女…だと…)

エアルは頭の中に引っかかりを残したまま、移動を再開した。




 その日の夜。

クイーンサイズの高級なベッド。部屋を照らす輝かしいシャンデリア。豪華なドレスが収納されているクローゼット。正しくお姫様が暮らしていそうなこの部屋は、エアルの自室である。

「ねぇ『ハーグ』。少し訊いていい?」

高級ベッドに座るエアルが、身の回りの整頓をしている燕尾服を着た老女に問いかけた。

「どうなされましたか?」

70代前半とは思えぬほどピンと伸びた背筋に、茶色の髪と瞳をもち、ダイヤモンド城で最も長くお使えするメイド長ことハーグが応じる。

「ハーグは銀野良って呼ばれる人を知ってる?」

ゴーマンや騎士達への態度とは違い、フランクな口調で話しかけるところから、エアルの中でのハーグはかなり親しみのある存在なのだと伺える。

「銀野良……ああ、貧民街で有名な男の子ですね。確かエアル様と同い年ですよ。」

「あいつ、貧民だったのか。」

「その銀野良がどうかなさったのですか?」

「今日平民エリアのクリスマス装飾の進捗を見に行った時、私が行く先にそいつが立ってたの。」

「ああ。先程ゴーマン様が何やらご立腹でしたが、それが原因でしたか。」

ハーグがクローゼットの中の服を整頓しながらクスッと笑う。

「あのジジイの事なんて心底どうでもいい。──それより、その銀野良に言われた言葉が引っかかるの。」

「なんと言われたのですか?」

「……()()()()()王女様。」

「…成る程、左様でございますか。」

ハーグは作業する手を止め、エアルの方に振り向く。

沈黙が2人を包む。エアルは徐に立ち上がり、窓へと近付いていく。

「ねぇハーグ。」

外を眺めながら、エアルが話しかける。

「あいつに意味を訊きたい。手を貸して。」

「仰せのままに。」

ハーグは片膝をつき、頭を下げて忠義を示した。




 一方その頃。貧民街ボウビン。

「エアル王女と会話しただとー!?」

スノウが盗んできたパンを食べていたニクスが、衝撃的な事を告げられ、ひっくり返りそうなほどのリアクションをとる。

「何だよ。そんなに驚くことかよ?」

リンゴを齧るスノウ。

「バッ…!お前…!王族と会話なんて、下手すりゃ生涯一度もないことだぞ!」

「マジかよ。もしかして俺、一生分の運を使い果たした?」

「ああ。恐らくこれ以上の出来事はもう起きないだろうよ。てか、目を付けられるようなことしてねぇだろな?流石に王族相手には俺もどうすることも出来ねぇぞ。」

「それに関しては……」

スノウは自分は発した言葉を思い返し、

「大丈夫…だと思う。」

歯切れの悪い返答をした。

「お前…まさか喧嘩売るようなこと言ったのか?」

ニクスがズイッとスノウに顔を近づける。スノウは咄嗟に目を逸らした。

「このあんぽんたんがーー!!死ぬぞ!マジで死ぬぞお前!」

ニクスがスノウの両肩を掴んでぶんぶんと体を揺さ振る。

「だ、大丈夫だって!きっと!多分!恐らく!」


 スノウとニクスが騒いでいる時、1つの気高い影が貧民街ボウビンに現れた。

(ここが街?どう見てもガラクタの山だけど…)

ドレスではなく、高級ではあるがカジュアルな服装を着る気高い影は、近くを通った老人に声をかける。

「もし、そこのお爺さん。この辺りに銀野良って呼ばれている人っている?」

「銀野良じゃと?銀野良なら──」

老人が気高い影の正体を見た瞬間、顎が外れそうなくらい口を開けて唖然とした。

「お爺さん、場所はどこ?」

気高い影が再び老人に尋ねると、老人はハッと我に返ってスノウ達の家の方向を指差した。

「ありがと。」

軽く礼を言うと、気高い影は差された方向に歩き出していった。老人は呆然と去っていく気高い影の背中を眺めるのであった。


 一通り騒ぎ、食事も終えたスノウとニクス。寒さから凌ぐために焚き火を囲んでいる。

「あー寒。次はストーブとか盗んでこようかな。」

「盗んできてもここには電気が通ってねぇから意味ねぇぞ。あと、良い加減盗みも止めとけ。」

焚き火に薪を焼べるニクス。

「はぁ?盗んでこなきゃ俺らまともに飯も食えねぇだろ。」

「働いた金でちゃんと買えばいい。」

「働くだぁ?俺らに回される仕事なんて奴隷同然のものばっかりだろ。あんなのは仕事じゃねぇ。」

「だから言って犯罪行為を繰り返していると、いずれ痛い目に遭うぞ。」

「へーへー気をつけますよ。」

スノウとニクスがそんな会話をしていると、気高い影が近付いてきた。

「ご機嫌よう、銀野良さん。」

声をかけられ、反射的に視線を向けるスノウとニクス。次の瞬間、開いた口が塞がらなくなった。


そこにいたのは、透き通る白色のロングヘアーに輝く赤色の瞳をもつ少女──エアル・フィン・ダイヤモンドであった。


 「──!?」

まさか過ぎる来客に声が出ないスノウ。ニクスも同じ状況である。

「銀野良の…スノウ・シルバーでよかった?」

エアルが確認をとる。

「お、おう。」

スノウが頷く。

「オッケー、じゃあちょっと付き合ってくれる?」

エアルがちょいちょいと指を動かし、付いてくるように指示する。

(おいスノウ!ここは素直に従っとけ!その方が生存率が高い!)

ニクスがスノウの耳元で囁く。

(えっ!?俺殺されるの!?)

スノウも囁き返す。

(王族直々の命令だぞ!従わない方が殺される!)

(わ、分かった…)

スノウは警戒したままエアルの元に近寄る。

「で、何処に行くんだ?」

スノウが問う。

「人気がない場所に連れてって。」

「俺が案内するのかよ。」

「当たり前でしょ。私がこの辺りの土地を知るわけないじゃん。」

「確かに。」

「じゃあ案内、よろ。」

スノウはエアルを連れて人がいない場所へと移動を開始した。




 ボウビンから出て少し歩いた場所には小さな川が流れている。その川辺でスノウとエアルは流れる水を眺めていた。

「こ、ここは冬の間は寒いからだ、誰も近付かねぇ。」

ガタガタと震えるスノウを見て、エアルはとある魔法をかけた。すると、一瞬にしてスノウは寒さを感じなくなった。

「あれ?寒くなくなった?」

「[ウオームライト]っていう魔法よ。私が今かけている魔法と同じで、暖かい光のバリアをあなたに纏わせたの。」

「成る程、だからお前そんな薄着でも平気な顔してたのか。もしかして昼間もこの魔法をかけていたのか?」

「当然でしょ。じゃなきゃドレス一枚で冬の外なんて歩けないわよ。」

「確かに。」

「それより、本題に入っていい?」

「あ…ああ。」

「『ぎこちない王女様』ってどういうこと?」

エアルのスノウの見詰める瞳が真剣なものとなる。スノウもこれは茶化せないと察し、正直に答えた。

「お前と会話している時、そこに()()()()()()ように感じたんだ。まるで王女をやらされているような雰囲気があった。」

「王女を、やらされている…」

エアルの心臓がドクンと脈打つ。

「なんと言うか…『自由』がない、そう直感で思っただけだ。」

「自由がない…か…」

エアルの心臓がまたドクンと脈打つ。

「………いや、すまねぇ。冷静に考えたら初対面の相手に言うことじゃねぇな。まして貧民の俺が王族のお前になんて…」

スノウが銀髪のワシャワシャと乱しながら謝ると、エアルがプッと吹き出し、アハハと笑い出した。

「あはははは!いいよいいよ謝らなくて!」

エアルは一頻り笑った後、スッキリした顔で夜空を見上げる。

「はぁ〜〜そっかぁ〜…初対面の人にバレるほどになっちゃったかぁ。」

クスクスと笑うエアルは、スノウからキョトンとした目で見られていることに気付く。

「あっ、ごめんごめん。こんなリアクションされてもビックリするよね。」

エアルは大きく深呼吸してテンションを落ち着かせると、明るい声で話し始める。

「私は物心ついた時から王族としての能力を得るべく、色んな事を教え込まれたの。でも、人並み以上なのは運動能力だけ。他の能力は平々凡々。周囲の大人達もそれには当然気付いていた。だけど誰もそれには触れない。理由は単純、私が王族だから。変に指摘して私の機嫌を損ねたら、最悪死刑命令とかされちゃうとでも思っているんでしょ。そんなことするわけないのにね。」

エアルがクスッと笑ってから続ける。

「私には王族としての能力はない。だけど王女であることからは逃げられない。だからせめて、振る舞いだけでも王女を演じるしかなかった。」

「それで、ぎこちない王女の誕生ってわけか。」

スノウの言葉にエアルが頷いた。

「だけど初対面のスノウに見抜かれちゃうほど、私の王女の演技はもう限界みたいだね。」

エアルはアハハと笑ってから、スノウに視線を向けた。

「ねぇスノウ。スノウは自分が今、自由だと思う?」

「何だよいきなり?」

「いいから、答えて。」

「……自由なわけねぇだろ。」

「じゃあスノウはどうなったら自分は自由だと感じると思う?」

「そうだなぁ…暑さや寒さを気にしなくていい家があって、いつでも美味い飯が食えて、綺麗な水の風呂に入れて、快適に寝れるベッドがあって…上げだしたらキリがねぇな。」

スノウが指を一本ずつ立てながら答えていく。

「あはは。その調子だと自由になるのも大変だね。──でもね、私から見たらスノウは十分に自由だと思うよ。」

「どういう意味だよ?」

「自分らしく生きてるように感じたから。そこに偽りも演技もない。それだけで十分……自由だよ。」

「はっ、何だよそれ。俺からしたら───」

ふと見せたエアルの哀愁纏う表情。言い返そうと考えていたスノウはその顔を見た瞬間、思わず口が止まってしまった。

「さて、そろそろ戻らないと色々ヤバいかな。──ありがとねスノウ。貴方と話せて良かった。次会う時があるか分からないけど、その時はよろしくね。」

エアルはニコッと微笑んだ後、背中を向けて去っていく。

スノウはもう二度と会うことはないだろうと思ったが、エアルの哀愁纏う表情が脳裏をよぎった瞬間、

「待てよ!」

考える前に呼び止めていた。エアルは立ち止まってスノウに振り返る。

「お前はこの先、自分に自由が来ると思うか?」

「それは……どうだろう…。そう考えたことはなかったなぁ。」

エアルがエヘヘと笑っていると、スノウが真剣な眼差しで告げる。

「自由がねぇなら、自由がある所に逃げねぇか?」

「……えっ!?」

まさかの提案にエアルは困惑する。

「ああそうだ。しかも家出程度の距離じゃねぇぞ。この国を…ザーパトウェストを出る!」

「ええっ!?」

想像以上に壮大な計画に、エアルは更に困惑するのであった。

本日はお読み下さり誠にありがとうございます!

少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価などをお願いします!


スノウが発したとんでもない計画。これは大事件待ったなしですね…。


それではまた明日、お会いしましょう!お楽しみに!


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