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活躍の場がそろそろ到来する

『コンコン』


「入れ」


 扉を開けて執務室に入ると、お父様だけではなく、バロウズ叔父様もロラン叔父様もお偉方が部屋の真ん中の長椅子に座っていて全揃いだった。私が何かものすごくヤバいことをしちゃったのかしら。


「リーマ、昨日あのフクロウの棲み処のカレル森のことなんだが」お父様が早速話を進めた。


 あぁっ!王都の近くのあの森のことか〜よかった〜私は何もやらかしちゃってなくてよかった〜。


「最近人間がたくさん入っているとあのフクロウが言っていたみたいだから、今朝三人の騎士にあの森を調査してもらった。かなり広い森だから、何も見つからなかった」


「‥‥‥はい」


 お父様が本当に騎士にあの森を調査させたのね。フクロウちゃんのお家の話がこんなに大事になるとは思わなかった。


「しかし人がたくさんあの森に入っているっていう話はリーマの能力を考えると、フクロウがリーマに嘘をついたと思えないから、人間があの森のどこかにいるはずだと我々が考えている」


「‥‥‥はい」


「だからリーマにあの森にいる動物たちに人間がどこにいるのか聞いてもらいたいんだ」


「‥‥‥はい」


 もう「はい」としか答えられない。よくわからないけど、フクロウちゃんの家族のひょんなことから、何だか大変なことになってしまったようだ。もはや私が何かをやらかしてしまったほうがみんなの仕事がもっと楽になるんじゃないかと思えてくる。っていうか私は何を考えている?自分でもよく意味が分からないわね。


「ありがとう。本当は一般市民に頼むようなことじゃないが、リーマの力が必要だと思うからな。早速明日行ってもらいたいんだが。カイテルにも行ってもらうから安心するといいよ」


「‥‥‥はい」確かに知らない騎士よりカイテルさんもいるほうが安心する。


「ただ人が入っていくだけで特に危険なことがなければいいんだが。俺たちの杞憂で終わったら嬉しいよね〜。リーマちゃんごめんね〜。王都に来たばかりなのにこんな頼みをしちゃって」ロラン叔父様がもう分けなさそうに言った。


「昨日のフクロウは危険と感じるから他の森に逃げたいって言っていたよな?」バロウズ叔父様が聞いた。


「は、はい。人間が多くて武器も持っていて物騒だから、他の森に逃げた動物もいたと‥‥‥」


「武器も持っていたのか‥‥‥?確認なんだが、動物はリーマに嘘をついたとかそんなことはしないよね?」ロラン叔父様が聞いた。


「うーん、動物たちは嘘をつくようなことはしないと思いますが‥‥‥」人間じゃないもん。


「そうか‥‥‥じゃ明日よろしく頼む。王都にまだ慣れていないのに、できればこんなことを頼みたくなかったんだが‥‥‥」バロウズ叔父様が言った。


「い、いいえ。お父様と叔父様たちの力になれたら嬉しいです」


 なれなかったらごめんなさい。なれなかったら明日の私を怒らないでくださいね‥‥‥。


「ホワイトウルフも連れて行ってもいいからな」お父様が言った。


「はい!リオとリアも一緒なら心強いです」


「話は以上だ。カイテルが外で待っているんだろうから、もう出るといい」


「はい。失礼します」


 執務室を出るとカイテルさんが心配そうに待っていた。


「大丈夫だった?お父様はなんか話をしたのか?」


「明日カレル森の調査に騎士と一緒に行ってほしいと頼まれました。今日も行っていたみたいですが、特に何も見つからなかったみたいです。カイテルさんもリオもリアも一緒に行っていいと言ってくれましたよ」


 お父様の頼み事とカイテルさんも一緒に行くことを話したら、カイテルさんは眉間に皺を寄せる。


「それ、危ないんじゃないか?断ってもよかったのに。リーマに何かあったら大変だよ。俺、お父様に話そうか?」


 断る雰囲気じゃなかったんです‥‥‥。


「大丈夫ですよ。動物たちが困っているみたいですから、動物たちを助けたいです。それにカイテルさんもリオもリアも一緒に行きますから、私が一番安全だと思いますよ」


「俺は絶対リーマを守るから安心してね‥‥‥‥じゃ図書室に戻ろうか?」


 カイテルさんが私の頭を撫で、一緒に図書室に戻った。今度は夕食の時間まで一緒に図書室で過ごした。




 夕食の後、私はまたお父様に呼ばれ、お父様の執務室を再び訪れる。


 部屋に入るとお父様とお母様とお父様の側近のウィリアムズさんが話をしている。ロラン叔父様とバロウズ叔父様は夕食前に帰っていたから今はもういない。


 お父様、お母様とウイリアムズさんの歓談は和やかな雰囲気だから、恐らくさっきみたいに大変な話ではないかもしれない。


「お父様、お母様、お呼びですか?」


「リーマ、今日のお出かけはどうだった?ここに座って」お母様が上品に微笑み、自分の隣の席を軽く叩く。


「すごく楽しかったです。カイテルさんが食堂に連れて行ってくれて楽団にも連れて行ってくれました。初めて見たものばかりですごく感動したんです。王都の料理もすごく美味しいです」私は答えながら、お母様の隣に腰を下ろす。


「よかったわ。今日たくさんドレスを持って帰ってくると思っていたんだけれど、意外と荷物が少なかったわね。中央街で何かあったのかしら?」


「カイテルさんがドレスの店に連れて行ってくれましたが、買いませんでした」


「あら、どうして?気に入ったものがなかったの?」


「いいえ、ジョアンナお姉様から何着ももらいましたから、新しいものは買わなくても大丈夫なんです」


「そうなのね。でもちょっとぐらいカイテルに買わせてあげたほうがカイテルは幸せだと思うわよ」


「‥‥‥??カイテルさんはお金を使えば、幸せになる人ですか?そんな人が‥‥‥」本当にいるの?さすが貴族だわ。


「「ふっ」」お父様とウィリアムズさんが急に笑い出した。あれ?当たり?すごい〜。さすが貴族だ。


「違うわよ。そういう意味じゃないわ。リーマが幸せならカイテルも幸せだという意味よ」お母様が口を覆い、笑いを堪えながら話した。


「あぁ、それでしたら、私はカイテルさんにも皆さんにも出会って楽しくて幸せです」


「ふふっ、それはよかったわ。行きたいところや欲しいものがあれば、カイテルに言ってね」


「ありがとうございます。皆さんは私にとても優しいです」


「ずっとここに住んでね。ずっとカイテルと一緒にいて」お母様が微笑んで私の頭を優しく撫でる。


 私は中央街のカイテルさんの行動を思い出して顔が熱くなった。みんなに顔を見られたら恥ずかしいから、私は顔を俯き、「はい‥‥」と小さく答えた。


 リーマ、どうしてあなたがいきなり照れてるのよっ!


「リーマ、これ、保健省の採用試験の今までの問題集だ。ロランが探してくれたんだが、さっきずっと森の話をしていたから忘れていた。試験を頑張ってね」お父様が私に問題集を渡す。


「ありがとうございます!頑張ります!」


「もうこんな時間だから、休んでいいよ。お休み」お父様は言った。


「はい、皆さん、おやすみなさい。失礼します」


 まさか試験の過去の問題集があるとは思わなかった!私は薬の本と植物の本を全部読もうと思っていたんだけど、これがあれば試験の勉強はもっと楽になりそうだ。




*リーマが退室した後*

「さっきリーマお嬢様、急に顔を真っ赤にしましたね〜。今日のお出かけに何かあったでしょうかね〜。気になりますね〜ふふふっ」アーロンの右腕のウイリアムズがくすくす笑いながら、いつもののんびりした口調で言った。


「はは、意外と分かりやすい子だな。カイテルがちゃんと何かをしているみたいだな。あいつも成長したな」


「今日も王様と王妃様が早くリーマに会いたいとおっしゃっていましたわ。すごく楽しみにされていますから、明日連れて行きましょうか?」


「まだダメだ。いきなり王様と王妃様にあったらリーマはびっくりするだろう。もうちょっとあとにしよう」


「えぇ、そうですわね」


「カイテル様はとても幸せそうですね。あんなカイテル様、この数年見たことがありませんでした。屋敷の雰囲気もとても明るくなりましたね。これもリーマお嬢様の特別な力のおかげでしょうか?」


「そうかもな。リーマはずっとカイテルと一緒にいてくれたらいいんだが」


「カイテルに頑張ってもらわなければなりませんわね。でも私たちもカイテルを手助けをしないと‥‥。リーマは少し鈍感ですわね」


「ははは、だな。カイテルは大変なんだろうな」


「さっきの様子を見たら、少し、ではないような気がしますよ、旦那様、奥様」


「動物の感情はすぐ理解できるのに、カイテルの気持ちが全く分からないなんてな。あいつ、何だか可哀想だな」


「そんなことありませんよ。だってやっとリーマに出会ったんですから、むしろカイテルは運がよすぎて、幸せ者すぎるぐらいですわ」


「そう言われると‥‥‥確かにそうだ」アーロンが何度も頷く。


 三人はしばらくカイテルとリーマのことで雑談をしてまた仕事の話に戻した。


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