表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/35

どうして僕が?①(Side.ジョシュア)

読んでいただきありがとうございます。

本日はちょっと短めです。

※初登場のジョシュア視点です。

僕……ジョシュア・メルソーナの婚約者だった聖女エレナは、周囲から枯れ葉聖女と呼ばれていた。


赤みがかった朽葉色の長い髪に焦げ茶色の瞳が枯れ葉を連想させるからだろう。

それに、顔立ちも素朴と言えば聞こえはいいが、実際は地味で冴えないだけ。

しかも、エレナは平民出身で、聖女であること以外に何の価値もない女だった。


(どうしてこんな女が僕の婚約者なんだ……)


初めての顔合わせから今まで、何度も何度も心の内で繰り返した言葉。

なぜなら、僕はメルソーナ王国の第二王子だからだ。


本来ならば、王子妃となる令嬢は高位貴族の中から選ばれるのが通例。

平民出身のエレナが選ばれたのは、彼女が類を見ない程の膨大な魔力を有しているから。


つまり、エレナの聖魔法は国の防壁に必要不可欠だと判断され、彼女を我が国に繋ぎ留めておく手段として、王家と縁を結ぶという方法がとられた。

そして、歳が近いから(・・・・・・)という理由だけで、王子の中から僕がエレナと婚約をするはめになってしまう。


(ああ……ヴィオラが婚約者であればよかったのに)


ヴィオラは元伯爵令嬢で、聖魔法に目覚めたことにより聖女として神殿に所属している。

豊かな黒髪に猫のように愛くるしい翠の瞳、エレナとは比べものにならない華やかな美しさ。


月に一度、エレナとの交流を義務付けられていた僕は、神殿に通ううちにヴィオラと知り合い、恋に落ちてしまった。

今では、エレナと交流するためだと見せかけ、足繁く神殿に通い、ヴィオラとの愛を深めている。


「昨日もまたエレナ様から役目を押し付けられてしまって」


そんなヴィオラが、エレナから防壁魔法を維持する役目を押し付けられているというのだ。

今や、我が国の防壁魔法を支えているのはヴィオラを中心とした他の聖女たちなのだと彼女の口から聞かされる。


「可哀想に……」


そのままヴィオラの柔らかな身体を抱きしめると、彼女も甘えるように僕の胸元に頬を寄せる。


(クソっ! エレナめ……)


僕のヴィオラに負担を強いて、聖女の役目を放棄するエレナ。

そんな彼女に憎しみが湧くと同時に、とある疑問が頭をよぎる。


(本当にエレナは国に必要なのか……?)


膨大な魔力量の持ち主なのだとしても、役目を放棄しているのだから、それは無いのと同じこと。

それに、エレナが役目を放棄した現在も防壁魔法が揺らぐことはない。

つまり、エレナの聖魔法がなくとも、我が国の防壁魔法は維持できるということだ。


そんなある日、思わぬ事件が起こる。


ギャザの森と我が国の領土を隔てる防壁魔法に綻びが生じ、魔物の侵入を許してしまったのだ。

この時、防壁魔法の役目を担当していたのはエレナ。

しかも、このような緊急事態の時に限って、国王である父と王太子である兄が外交のため国を離れており、現場は混乱を極めていく。


運がよかったのは、侵入した魔物が小型数匹だけだったこと。

おかげで死者を出すことなく魔物を討伐することができた。


僕はホッと胸をなで下ろすとともに、エレナに対する疑念が確信へと変わる。

エレナは魔力量が多いだけで、防壁魔法の遣い手としては未熟であるのだと……。


(やっぱりエレナはこの国には必要のない聖女なんだ)


だったら、エレナが僕の婚約者である必要もないだろう。

防壁魔法に綻びを生じさせたあげく魔物の侵入を許した責任と、日頃からの職務怠慢を理由に、僕はエレナとの婚約破棄と我が国からの追放を独断で言い渡す。


(これでヴィオラを僕の婚約者にすることができる……!)


全てがうまくいったのだと、この時の僕は信じて疑いもしていなかった。

ラストスパート突入!

次回は明日の朝8時に投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ