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やってしまった

(ああああああ……!) 


やってしまった。

思いきりやってしまった。


無事に情報屋から闇オークションの情報と招待状を受け取ったのが一昨日のこと。

運よく僕が王都に滞在しているうちに開催されると知り、ホッと安堵の息を吐く。


さすがは主人公。僕はこの世界に優遇されている。


しかも、情報屋は僕が滞在しているタウンハウスから会場までの馬車まで手配してくれていた。


闇オークションの開始時刻は夜の十一時で、約二時間で終了となる。

当日、僕はいつも通り夜の九時にフェリシアとともにベッドに入り、そのまま寝たフリをする。

そのうちクレイブも寝室を訪れ、僕の隣で寝息を立て始めた。


そう。僕たち三人はあれから川の字で寝るのが当たり前になっている。

もちろんクレイブとフェリシアの初夜は延期。

いや、永遠に延期のままにするつもりだ。


そのような状況のため、フェリシアとクレイブを起こさずにタウンハウスから抜け出さなければならない。

僕は目を閉じながら、今か今かと待ちわび……ふと目を覚ますと夜中の一時になっていた。


(………ん?)


もう一度時計を確認する。


(……寝過ごした!)


言い訳をするならば、中身は成人をとうに過ぎていても身体は紛れもなく子供なので、どうしても睡魔に勝てない仕様なのだ。


僕は内心慌てながらもそっとベッドを抜け出し、隠していた着替えを抱きしめ、そのまま寝室を出る。

そして、事前に頭の中でシミュレーションしていた通りのルートで屋敷から外へ出ると、情報屋が手配してくれた馬車を探す。


「おい、こっちだ」


小声で僕を呼ぶのはメレディスだった。


「お前、こんな時間まで何してたんだ!? てっきり屋敷から抜け出すのに失敗したのかと……。大丈夫だったのか?」


心配そうな表情(かお)になるメレディス。

意外と面倒見がいいタイプらしい。


「目が覚めたらこの時間だったんだよね」

「…………」


僕の答えを聞いたメレディスはげんなりとした表情に変わり「心配して損した」と呟く。


「それで? もうオークションは終盤だぞ?」

「だよね……」

「どうするつもりだ?」


会場に到着する頃には、オークションはすでに終わっているかもしれない。

それでも、どうしても諦めきれなかった僕は、会場に向かうようメレディスに頼むのだった。



「ここがオークション会場……」


いや、正確に言うとオークション会場だった(・・・)場所である。

すでにオークションに参加していた客は去り、建物の入り口は閉鎖されてしまっていた。


「はあ……」


溜息を吐いたあと、せっかくだからと辺りを探索するためにメレディスとともに歩き出す。


「お前……一体どうして闇オークションなんかに参加したかったんだ?」

「将来ここを訪れることになるだろうから、その下見」

「……意味がわからん」


まあ、今回は闇オークションに縁がなかったのだろう。


(それに下見だけのつもりだったし……)


なんとなく言い訳めいたことを考えて自分を慰めていると、ガシャンと物が倒れるような音が響いた。


「逃げたぞぉ!」


そして、男の怒鳴り声が辺りに響く。


(まさか……!?)


僕はとある可能性を頭に思い浮かべながら、急いで声がした方へ駆け出す。


角を曲がると会場となった建物の裏側に辿り着き、荷馬車が何台も停まっているのが見えた。

その瞬間、僕の視界に黒い何かが飛び込んでくる。


「うわっ!!」


そのまま正面からぶつかってしまった僕は、勢いに耐えきれず後ろに倒れ込んだ。


「アイセル! 大丈夫か!?」


後ろからメレディスの声がかかる。


僕はなんとか上体を起こすと、同じく目の前で何かがむくりと身体を起こした。


「獣人……?」


メレディスの呟く声につられ、僕も顔を上げて前を見つめる。


そこには肩まで伸びた黒髪に三角の獣耳を生やした子供の姿があった。


読んでいただきありがとうございます。

次回は明日の朝8時頃に投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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