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転んでもただでは起きない

ディアナと出会ってからは目の前のハーレムチャンスに夢中になってしまっていた僕。

だが、彼女が留学すると聞いて、ようやく本来の目的を思い出す。


(危ない危ない……すっかり忘れてた)


僕が王都を訪れたのは闇オークションの下見をするためだったのに。


残念ながらディアナをダルサニア辺境伯領へ連れ帰ることは叶わなかったが、転んでもただで起きるつもりはない。

しかし、王都に滞在できるのはあと残り十日程。

いくら僕が主人公でも、自力で闇オークションに辿り着くには時間が足りない気がする。


そこで、ディアナからの謝礼として情報屋を紹介してもらうことを思いつく。


(本当は闇オークションに招待してほしかったけど……) 


ディアナが闇オークションと繋がりがあるかは不明……いや、おそらく可能性はほぼゼロ。

ならばディアナの父親経由でとも考えるが、それは直接的過ぎると断念し、情報屋の紹介ということで落ち着いたのだ。


テーブルを挟み、メレディスと向かい合う形でソファへ座る。


「それではご依頼内容をお伺いいたしましょう。ダルサニア辺境伯子息様」

「アイセルで構わないよ。それに堅苦しい喋り方も無しにして。胡散臭い」

「…………」


僕がぴしゃりと言い放つと、メレディスは笑顔のまま固まる。


メレディスはやけに丁寧な口調と態度だが、そこに僕に対する敬意は感じられない。

むしろ、世間知らずなお坊ちゃんを適当に言いくるめて追い返そうとしているように感じた。


「あー……それは悪かった。てっきり貴族の坊ちゃんのお遊びだと思ってな」


しばしの無言のあと、口調を崩したメレディスが首元のタイを緩める。

どうやらこちらが素のようだ。


「僕は真剣だよ。だからこそここへ来たんだ」

「わかった、わかった。それじゃあ、改めて依頼内容を聞かせてくれ」


僕はポケットから手の平サイズのリングケースを取り出し、それをテーブルに置くと、メレディスに開けるよう促す。


「こいつは……婚約指輪か? 既製品じゃなく特注品……ずいぶん希少な宝石も使われているじゃないか。で、この指輪がどうした?」

「母の形見なんだ」

「…………」

「ああ、母は死んだわけじゃない。僕が生まれてすぐに失踪してね。まあ、有名な話だから今さらだろうけど」


僕の母が実はイケメンと隣国に駆け落ちしていたという話はすでに広まっており、情報屋じゃなくとも聞いたことがあるはずだ。

   

「つまり、あんたの母親……失踪した前ダルサニア辺境伯夫人の正確な居場所を探ってほしいってわけか……」

「いや、王都で開催される闇オークションの開催日時と場所を調べてほしいんだ。できれば参加もしてみたい」

「は……?」

「聞こえなかった? 闇オークションだよ?」

「あ……ああ、そうか。闇オークションと母親に何か関係があるんだな? 借金でも作って、あの連中に捕まったから助けだそうと……」

「いや、僕の母は今も隣国で若い男とよろしくやっているみたいだよ?」

「え? だったらなんで母親の形見なんて……」

「これは依頼料のつもりだったんだけど」

「母親の形見を!?」


僕の母は、駆け落ちをする際に身の回りのアクセサリーやドレスなどを全て持ち逃げしている。

おそらく換金して逃亡資金に充てるため。


ただし、クレイブから贈られたこの婚約指輪だけは残されていた。


クレイブとの決別の意味を込めたのか、駆け落ち相手のイケメン使用人に操を立てたつもりなのかはわからない。

そして、この残された婚約指輪は、生まれてすぐに母を失った僕に『形見』として譲渡された。


「僕、自由に使えるお金が手元にないんだよね。だから形見(これ)なら高く売れそうだし、ちょうどいいから換金してもらおうかと思って」


もちろん、僕に割り当てられた予算はあるが、それらは現物支給がほとんどで、直接金貨を渡されるわけじゃない。


「母親の形見なのに……」

「ただの指輪でしょ?」

「…………」


なぜかメレディスが俯いてしまった。


「あれ? 依頼料には足りない?」

「いや、十分すぎるくらいだ。だが、何だって闇オークションのことなんて知りたがる?」

「事情を全て話さないと依頼は受けてもらえないの?」

「子供が行くような場所じゃないって言ってるんだ」

「依頼を遂行する自信がないからじゃなくって?」

「わざと煽るんじゃねぇよ」

「ふふっ」


僕が思わず吹き出すと、メレディスは深い溜息を吐く。


「諦める気はなさそうだな」

「そんな簡単な気持ちで依頼をしたわけじゃないって言ったでしょ?」


僕はひたむきにハーレムを作ろうと努力している。


「……わかったよ。ただし、何かあっても責任は取れねぇからな」


その辺りは主人公なのできっと大丈夫だろう。


こうして、僕は母の形見をサクッと手放し、闇オークションの情報を得ることに成功する。


(せっかく王都にまで来たんだから手ぶらで帰るわけにはいかないからね)


読んでいただきありがとうございます。

次回は明日の朝8時頃に投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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