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一緒にお風呂

 俺とシルヴィの二人であれだけ苦労しても帰る手段の手掛かりすら見つからなかったのに、アイゼンがいれば一瞬で屋敷まで戻れた……やっぱり本物の賢者なんだな、と思い至った。


 そこには、すでにメイドのミクが待っていた。

 そして俺とシルヴィが並んで帰ってきたのを見て、


「……お帰りなさい。シルヴィ、心配したよ……」


 と、あまり表情を変えずに声をかけたのだが、シルヴィはそのミクに抱きつき、


「ごめん、迷惑かけちゃった……ミクのそんなほっとした顔見たの、初めてかも……」


 と言いながら泣きじゃくっていた。


 ……あれで「そんなほっとした顔」なんだ……本当に表情の変化に乏しいんだな……。

 そしてそれを見極めるシルヴィも、ミクのこと大事に思っているんだな。同い年って言ってたし。


 ひとしきり泣いた後で、ソフィアが、


「お菓子しか食べていないのでは十分に空腹を満たせていないだろう」


 と、食堂に案内しようとしたのだが、ミクが、


「料理も用意しているけど、お風呂も沸かしている。どうする?」


 と尋ねたので、シルヴィは一瞬固まった。


 彼女の髪はボサボサになっており、白いシャツもシミが目立ち、顔にも汚れが付いている。

 いまさらながら酷い格好であることに気づき、さらにそれを俺に見られていたことに考えが及んだのか、一瞬俺を見て赤面した。


「そうだった……私、こんなに汚れてたんだ……恥ずかしい……」


「いや、俺だって似たようなもんだよ。あの環境で生き抜いたんだから、むしろ汚れていることを誇りに思うぐらいだ」


 そう、俺も相当汚れたままだった。


「じゃあ、先にお風呂に入って。私たちは食堂で待ってるから……ショウ様はどうされますか?」


 ミクにそう言われて、ちょっと引っかかるものがあった。


「ああ、えっと……その前に、『ショウ様』っていうのはちょっと仰々しい気がする。シルヴィももう、俺のことをそんな風には呼んでないし……歳も近いんだから、普通に名前だけ呼んでくれればいいよ」


「……はい……うん、じゃあ……ショウはどうする?」


 う……いきなりそうきたか。

 けど、ちょっと嬉しいかも。

 表情の変化は乏しいけど、ダークブラウンでショートカットの美少女だ。

 そんな彼女に呼び捨てにされると、親しい友達か妹のようでちょっとドキっとする。


「そうだな……俺も体を洗いたいから……」


「あ、そうですよね? じゃあ、ショウさん、先に入っちゃってください。私、順番待ってますから」


 シルヴィがニコニコしながら譲ってくれたが、その提案には乗れない。


「いや、それは違う。そこは女の子優先だ」


「でも……」


 そんなやり取りを見かねたのか、ミクが一言、


「……だったら、一緒に入ったら?」


 と爆弾発言を投げかけてきた。


 真っ赤になって固まるシルヴィ。

 俺も顔が熱くなっているのが分かる。

 その様子に、アイゼンは微笑んでおり、そしてソフィアは絶句している。


「……冗談のつもりだったんだけど……」


 ミクが相変わらずすまし顔で一言そうつぶやき、俺もソフィアも我に返った。


「そ、そうですよね! 向こうではいろいろありましたけど、さすがに他の人もいるのに一緒にお風呂なんて……」


「……いろいろ?」


 ソフィアが、少し睨むような眼で俺を見てきた。


「い、いや、まあ……そうだ! 俺は自分の家に戻ったら、すぐにシャワー……湯を浴びられるんだ! ほら、トゥエルへシルヴィと一緒に無事帰ったことの報告もしないといけないし。食べ物も向こうに十分ある。あと、何より自分の部屋でゆっくり休みたいんだ」


 ちょっと言い訳じみていたけど、本音の部分でもあった。


「そう……わかった。アイゼン様、それでよろしいですね?」


 ミクはアイゼンにそう確認した……うーん、彼女がどう考えているかは全く分からない。


「そうじゃな。ショウ殿は元の世界でしばらく休まれるがよかろう。トゥエル様もいることだし、心配はなかろう」


 アイゼンもそう言ってくれて、少し名残惜しいが、俺は元の世界に帰ることにした。


「疲れが取れたら、ぜひまだ来てくださいね!」


 シルヴィが明るく声をかけてくれたが、絶対に彼女の方が疲れているはずだった。


 こうして、俺はゲートをくぐり抜け、元の世界に帰ってきた。

 トゥエルには、シルヴィともども無事に帰ってきたことだけを伝え、フラフラになりながらシャワーを浴びて、トランクスとシャツだけを身に付けて、そのままベッドで深い眠りについたのだった。

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