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サバイバル

 その後、俺とシルヴィは、扉を閉じれば安全な基地となる遺跡へと戻り、一夜を明かした。

 結局、アイゼンが助けに来てくれることはなかった。


 翌朝。

 目が覚めると、隣でシルヴィがかわいい寝息を立てていた。


 獣人とはいえ、一八歳の美少女と一夜を共にした。

 朝起きて、隣にこんなかわいい子が何の警戒心も抱かずに寝ていてくれている……こんな日が来るとは思っていなかった。

 しかも、異世界で、半ば遭難しながら――。


 その寝顔をずっと見つめていると、シルヴィは目を覚ました。

 とはいえ、半分瞼が閉じたままで、俺の顔をじっと見つめていたが、いきなり目を大きく見開いて飛び起きた。


「……お、おはようございますっ、ショウさんっ! 私たち、遺跡で迷子になってたんですよね!?」


 なんかよく分からないが、現状の確認らしい。


「ああ、そうだよ……これからのこと、考えないといけないな……」


「……えっと、今、おはようございますって言っちゃいましたけど、今、もう朝なんでしたっけ?」


 遺跡の中は扉が閉まっている限り、太陽の光が差し込んでくることはない。

 ただ柱の上の、魔法による淡く白い光が灯っているだけだ。


「ああ、俺の時計によるとだけど……俺の世界と時間のずれはほとんどなかったはずだから、もう日は昇っていると思う……ただ、扉を開けるのは勇気がいるけど」


 昨日の狼が復讐のために群れで待ち受けているかもしれない。


「かもしれないですね……えっと、魔狼の姿になるのは大げさなので……念のため籠手、付けておきますね」


 どうやら、シルヴィは満月の夜でないと魔狼になれない、というわけではないらしい。

 三本爪を装着し、戦闘モードに入った彼女。俺も特殊警棒を持っている。


 シルヴィが意を決して、呪文を唱えた。

 ゆっくりと扉が開き、眩い朝日が差し込んできて、俺たちは一瞬目を背けた。

 そしてもう一度正面を見ると、岬の先端、そしてその先にどこまでも続く青い海が広がっていた。

 狼の姿はなかった……基本的に夜行性だろうし、昨日はひどい目に遭ったのだから、たぶんもう来ないだろう。


 さしあたって、水と食料を確保しなければならない。

 この日の朝食は、ケロリーメルトの残りひと箱を二人で分けた。

 飲料は水筒に入れてきた麦茶が残っていたのでそれで何とか凌いだが、もうほとんどなかった。


 しかし、そこは耳の良い獣人のシルヴィだ、俺を遺跡に残して単独で森林地帯に入り、一時間もしないうちにきれいな水が流れる小川を見つけて、預けた水筒にそれを汲んできてくれた。

 さらに、そこには魚がたくさん泳いでいたという。

 それなら食料になるのではないか、と思った俺は、一緒にそこまで行くことにした。


 森の中に入ると、やっぱりそこは異世界で、日本ではまず見られないような植物がたくさん生えている。

 数十メートルに及ぶ高さの大木もあるし、巨大なシダのようなものもある。

 俺の目には珍しいので、写真や動画を撮りまくりだ……そろそろバッテリーがやばい。


 予備の電池は持ってきているので少しは大丈夫なのだが、下手をすれば元の世界に数十日単位、あるいはそれ以上の期間、戻るかとができないかもしれないと思うと、非常に心もとなかった。


 日が昇るにつれて暑くなってきて、シルヴィは作業服の上半身を脱いで、シャツだけになった。

 その下は……少なくとも、上半身は何もつけていないようだ。


 まあ、昨日は月光の下とはいえ、全裸を見ているのだから今さらかもしれないが……意外と胸は大きいので、時々ドキリとさせられる。


 小川にはすぐにたどり着いた。

 確かに小さな魚が泳いでいるが、素手でそれを捕まえられるかというとちょっと厳しい。

 だが、三本爪の籠手を操るシルヴィは、沢の淵に立つと、驚くほどのスピードで魚を跳ね上げ、あっという間にヤマメに似た魚を六匹捕まえた。


 その様子があまりにカッコよかったので、スマホの動画に収めた。

 彼女も撮られていることを気にしているようではなく、


「後で見せてくださいねっ!」


 と、逆に喜んでいた。


 まあ、今撮った画像なら見せても構わないが、実は昨日の夜、撮影モードにして胸ポケットに入れていたスマホには、彼女が魔狼に変身する様子、黒い狼たちとのバトル、さらには全裸の少女に戻るまでが、ばっちり収められていたのだが……まあ、それは見せなければいいだけだろう。


 獲った魚は遺跡の近くまでもっていって、拾ってきた枯葉や小枝を集めて焚火をし、焼いて食べた。

 ちなみに、火を起こしたのは俺が持ち込んだライターで、これにもシルヴィはちょと驚いていた。


 やや薄味と感じたこちらの世界の料理を、おいしく食べる目的で食卓塩も持ち込んでいたのは幸いだった。

 シンプルな塩焼きの魚だが、俺もシルヴィも満足して食べることができた。


 水と食料を得られると知ったことで、生還の望みが高くなった。

 シルヴィの顔にも明るさが戻ってきた。


 俺としては、こんなかわいい女の子と仲良く一緒に居られるなら、しばらくはこのままでもいいのかな、と思ってしまっていた。

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