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一方通行

「取り返しのつかない? ……どうしてそう思うんだ?」


 彼女があまりにショックを受けているようだったので、慰めるようにそう口にした。


「だって、今、どこに飛ばされてきたのかわからないんですよ? 少なくとも私たちが出てきた遺跡は、単なる転送先でしかないみたいでしたし……」


「へっ? 転送先? ……こういうのって、たいてい行ったり来たりできるんじゃないのか?」


「そういうのもありますが、あの遺跡は『出口』でした。魔法陣を制御するための祭壇もありませんでしたし……今思えば、アイゼン様は、『古代の遺跡には、そういう一方通行の転移魔法陣もよくある』って言ってました。帰りは本人の魔法を使えばいいのですから……」


「……えっと、よくわからないけど、『行き』より『帰り』の魔法の方が簡単ってこと?」


「そうです……といっても、到底私に使いこなせるようなものではありませんけど……」


 シルヴィの、断定するような言い方に、ちょっと焦りを感じてしまう。


「いや、けど……今回の魔法陣だって、誰も、アイゼンさんでさえ発動できなかったんだよな? だったら、分からないことっていうのはあるんじゃないか? 探せば祭壇、出てくるかもしれないし」


「……そうですね! 戻って調べてみましょう!」


 シルヴィの顔が、若干明るくなった。

 そう、いくら何でも一方通行の空間移動装置なんてことはないはずだ。


 ……それから三時間ほど、俺とシルヴィは、遺跡の隅から隅まで念入りに調べた。

 白色LEDの光も、あちこちに当ててみた。

 しかし、なにやら古代の文字らしきものが書かれた壁面が見つかっただけで、祭壇は見つからなかったし、LEDの光への反応もなかった。


 とりあえず、腹が減ったので一旦外に出て食事を摂ることにした。

 この日は遺跡を探索するということで、気合を入れて? 菓子パンを数個買っていたのが幸いした。

 思ったよりずっと遺跡が近かったので、単なる荷物だったのではないかと思っていたが、幸か不幸かこういう状況になったので二人で食べることにした。


 いろんな味を楽しんでもらうために比較的小さな数種類のパンを揃えていたのだが、さらにそれを半分に割ってシルヴィと分ける。

 彼女が一番気に入ったのはメロンパン。サクサクの外側と、ふんわり、クリームの入った甘い内側の絶妙なバランスに、シュークリームの時以上においしいと言ってくれた。


 そんなシルヴィのほっぺたに付いていたクリームを人差し指で取ってあげると、彼女はペロっと、俺の人差し指を舐めた。

 ……うん、これはもうデートだな……。


 この時までは、まだ少し精神的に余裕があったし、たとえ遺跡経由で戻る手段がなかったとしても、アイゼンが魔法で迎えに来てくれるのではないか、という淡い期待があった。


 しかし……もう一度遺跡を隅から隅まで探しても、転移の魔法陣を発動させる仕掛けは一向に見つからなかった。

 また、夕方を過ぎ、日が沈んでも、アイゼンは迎えに来なかった。


 昼過ぎには出先から帰ってくると、あの大賢者は言っていた……そして俺たちが館の側の遺跡を探索することを知っていたはずだ。


 なのに、この時間になっても迎えに来ない……。

 そこから導き出せる結論は、アイゼンはこの地に、魔法でやってくる手段を持たない、ということだ。


 瞬間移動以外の方法……馬車や船で来てくれるかもしれないが……そうなると、いつになるかわからない。

 ひょっとしたら、このまま永遠に……。

 ようやく、午前中にシルヴィが口にした、「取り返しのつかないことになった」の意味が分かってきた。


 あたりが暗くなり始めた頃、俺もシルヴィも、遺跡の中で疲れ果てて、並んで座り込んでしまった。


「……ごめんなさい、本当にごめんなさい……全部、私のせいです……」


「……いや、俺が調子に乗って、遺跡を見てみたいなんて言ったせいだ……それで君に余計な仕事を増やしてしまった上に、こんなところまで連れてきてしまった……」


「……ショウさん、優しすぎます……」


 そう言って、彼女は俺の肩に頭を乗せてきた。

 俺にとっては、それが彼女に頼られるように思えて、少し嬉しかった。

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